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学校転移したら全員有能すぎて過酷な異世界に現代文明国家を築いてしまった……。  作者: ナガワ ヒイロ


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001 学校ごと転移してしまった



『いきなり空が光ったと思ったら、森の中に城が出現したんだ!!』



 ある日、イデル王国の国境を守る辺境守備隊に一人の農民が駆け込んできてそう言った。


 通報を受けた辺境守備隊の兵士は彼が昼間から酒でも飲んで悪い夢でも見たのだろう、そう思って一笑に伏したが、仕事は仕事。


 もし他国が侵入して城を作ったならば、相応の対処をせねばならない。


 辺境守備隊隊長マルシアは真偽を確かめるため、百名の兵士を率いて辺境の森へ向かった。



「ほ、本当にあった……」



 そこには高い壁に囲まれた、巨大な石造りの要塞のような建物がポツンと立っていた。


 その全てが巨大な石から削り出したかのような滑らかな石で作られており、まるで別の世界からやってきたかのような様相をしている。



「マ、マルシア隊長、まさか帝国の奴らが我が国を攻めるために城を造ったのでは……」


「いや、連中は残忍で用意周到だ。目撃者がいたら一人残らず殺すだろう。我々のもとへ通報が入ることもなかったはずだ」


「じゃあ、この城は一体?」


「分からん。全員、警戒を厳に。近づいてみるぞ」



 マルシアは茂みから出て、城を囲む外壁に近づいた――その時。


 彼女の足元に一本の矢が刺さる。


 敵襲かと思ったマルシアが腰に携えていた剣を咄嗟に抜いた。



「そ、それ以上近づくな!!」


「その矢を越えたら、今度は当てる!!」



 しかし、壁の上から声を上げた者たちを見て動きを止める。



(子供……?)



 イデル王国周辺では見ない黒髪黒目の、平べったい顔立ちをした少年たちだった。


 年齢は十五、六歳ほどだろうか。


 まるで貴族が着るようなキリッとした服を着ており、こちらに対する強い警戒心を抱いているようだった。



(いや、警戒しているというよりも、怯えているのか……?)



 マルシアは年端も行かぬ子供が相手で安堵しながらも、できるだけ刺激しないように足を止めてその場で問いかける。



「落ち着いてほしい!! 我々はイデル王国の辺境守備隊、私は隊長のマルシアという者だ!! 君たちは何者だ!!」


「オ、オレたちは天竜高校の弓道部で……」


「おい、生徒会長が来るまで何も話すな!! 情報は命だって言われてるだろ!!」


「あ、やべっ」



 その短い会話だけで、マルシアはいくつかの情報を得ることができた。


 彼らは烏合の衆ではなく、『テンリューコウコウ』の『キュードーブ』なる部隊に所属しており、『セイトカイチョウ』なる者の下で統率されている。


 整った身なりから賊にも思えず、マルシアは静かに『セイトカイチョウ』を待つことに。

 

 しばらくしてやってきたのは、少年たちと同じ衣装に身を包み、眼鏡をかけた鋭い目つきの少年だった。



「はじめまして。私は天竜高校の生徒会長、蘭丸らんまる恭介きょうすけという者です」


「イデル王国の辺境守備隊隊長、マルシアだ」


「マルシア殿。まずは謝罪をさせていただきたい」


「謝罪?」


「我々は意図して貴国の土地にこの建物を建てたわけではないのです」



 首を傾げるマルシア。


 意図して建てたわけではないのだとしたら、いったいなんだと言うのか。



「我々は今から一週間前、この世界に学校ごと転移してきました」


「学校ごと転移……?」



 マルシアはますます疑問を浮かべるのであった。






◇ ◆ ◇





 朝起きて家族に挨拶し、家を出て登校したら友人とお喋りして、授業を終えたら家に帰る。


 そんな退屈とも言えるくらい平和な日常は、突如として崩れ去った。



「え? なんか今、めっちゃ光らなかった?」


「今日雷注意報とか出てなかったよな?」


「いや、つーか外おかしくね。学校の周り森だらけじゃん」



 クラスメイトがざわめき始める。


 仲のいい男子の九十九つくもみやびもまた焦った様子で俺に声をかけてきた。



「お、おい、宇佐見うさみ、これやばくね? 前にお前から借りたラノベにあった異世界転移ってやつじゃね?」


「い、いやいや、まさか……ああいうのはファンタジーであって……」


「つか先生どこ行った? さっきまで教壇に立ってたよな?」

 

「あれ? ホントだ……消えた?」



 その時だった。


 グラウンドの方から悲鳴が聞こえてきて、何事かとクラスメイトが窓から外を見る。


 そこには体育の授業をしていた三年生がいて、校門をよじ登って入ってきた小柄な緑肌の人型生物に襲われているところだった。


 その光景を見たクラスメイトが悲鳴を上げる。



「ヤ、ヤベーって!! ゴブリンだ!!」


「ゴブリンって何!?」


「モンスターだよ!! 漫画とかゲームに出てくる魔物!! 人間を襲うんだよ!!」


「え、や、やだ、怖い……」



 少しずつ、加速度的に混乱が広がっていく。



「皆落ち着いて!! 今は冷静に――」


「こんな状況で冷静になれるかよ!!」


「意味分かんないんだけど!! 何がどうなってんのよ!!」



 学級委員の小鳥遊さんが慌ててクラスメイトを落ち着かせようとするも、パニックになりかけている彼らに言葉は届かない。


 普段のクラスメイトなら黒髪美人の小鳥遊さんの言うことなら無条件で従うのに……。


 このままだと取り返しがつかなくなる。



「み、皆、落ち着いて!! 静かにして!!」



 俺は声を張り上げた。


 普段から物静かに過ごしていたからこそ、クラスメイトたちはギョッとして俺の方を見る。


 うおぅ、ここまで注目されると怖いな……。


 俺は学級委員の小鳥遊さんに助けを求めると、彼女は頷いて指示を出した。



「取り敢えず、教室の扉と窓を施錠しましょう。安全が確保できるまで、騒がずにいるべきだと思うわ」


「お、おう、そ、そうだな!!」



 素早く混乱から復帰した男子が扉を施錠し、教室にあった掃除用具や竹刀を手に取る。


 もしゴブリンが校内に侵入してきても迎撃できる構えだ。



「おお!? 三年の先輩たちが反撃に出たぞ!!」



 九十九の言葉で落ち着きを取り戻したクラスメイトが再び窓の外を見る。

 数匹の人型生物改め、ゴブリンがちょうど女子生徒に飛びかかっているところだった。


 ゴブリンたちは女子生徒の体操着を破り捨て、地面に押さえつけて下卑た笑みを浮かべる。


 何をしようとしているのかは一目瞭然だった。


 しかし、そのゴブリンたちを女子生徒から引き剥がして鋭い蹴りを放つ者がいた。


 眼鏡をかけた引き締まった身体の生徒だ。



「おおお!! 流石は天竜高校の誇る文武両道の生徒会長、蘭丸らんまる恭介きょうすけ!! ゴブリンを一撃で戦闘不能にした!!」


「……急に楽しそうだな、九十九」


「おっと、放送部の血が騒いぢまったぜ。ん? おお!? ラグビー部部長の竜胆りんどう先輩とボディービル部部長の筋原すじはら先輩が生徒会長に加勢!! ゴブリンを一蹴していく!!」



 ラグビー部部長がゴブリンをタックルで吹き飛ばし、ボディービル部部長が取り押さえる。


 しばらくして蘭丸率いる三年生が十数人の見張りをグラウンドに残して校舎に入り、校内に放送が流れ始める。



『マイクテスト、マイクテスト……』



 それは入学式や始業式で何度も聞いた、蘭丸の声だった。



『全校生徒に告げる。生徒会長の蘭丸らんまる恭介きょうすけだ。単刀直入に言おう。我々は今、現実離れした非常事態に見舞われている』



 その声はいつも通り落ち着いていて、未だパニックから抜け出せずにいたクラスメイトも冷静に耳を傾けている。



『今から突拍子のないことを言うが、どうか現実として受け止めてもらいたい。――我々は、学校ごと異世界に転移してしまったらしい』





キャラ紹介

蘭丸恭介

学力   S+

身体能力 S+

思考力  S+

社交性  S-

総合力  SS


備考

天竜高校の生徒会長。容姿端麗で文武両道。モテモテ。



「生徒会長が有能すぎる」「モチベーションとやる気は同じ意味だろ」「続きが気になる」と思った方は感想、ブックマーク、ポイント評価、レビューをよろしくお願いします。

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