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【四章終了】月の触手は健全に遊びたい 〜魂の姿がアバターに表れるVRゲーム──え、私の魂って触手の化け物なの?〜  作者: にゃー
第四章 月光を讃える華

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月下に集え


〈しかしそうなるとアレかぁ……『ナーナ』もいよいよ、信仰対象公認のカルト隠れ里かぁ……〉


 さてさて。

 しばらく私のステータスで盛り上がっていた視聴者さんたちも、少しすればまた自ずと、話題を『ナーナ』へと戻してくれた。

 

〈もはや隠れてないんだよな、一ミリも〉

〈(それってべつに今までと変わらないんじゃ……)〉

〈“実質”と“正式に”の違いはデカい〉

〈祝『月光讃華』公式ファンクラブ化〉

〈神と民の心が今、一つに──!〉

〈触手の化け物の支配下にある町っていよいよヤバい気がしますけどもね〉

〈そんなヤバい町に手ぇ出したらどうなるか分かっとるやろな? って話かこれ〉


「言いかたは気になるけどまあ、うん、そんな感じ」


 コメントたちの好き勝手な物言いも今日は止めない。今回ばっかりは、怖がられるのもむしろ好都合だ。これはいわば他プレイヤーたちに圧をかける行為、私の悪名的なのが活きるのならそれでよし。

 こういう圧力が足りなかったせいで、あの四人は一度ならず『ナーナ』にちょっかいをかけてきたわけなのだから。


「あ、そうそう。一応その、町の自主性を重んじたいという気持ちはあるというか……ずっとあったからこそ、今までこの手段を取らずにいたといいますか……なので『ナーナ』と契約を結ぶうえで、私が町の活動そのものにはなんら口を出さないという文言を入れました」


 町の私物化的なのは避けますよ〜というアピールもしておく。

 いやこんな手段に出てる時点でアレだけど……しかしこれもまた、明言しておくことは大事だ。この流れで告げたいもう一つの話にも影響しますからね。


「名目上は統治者ですけども……ほらあれ、君臨すれども統治せず? ってやつ。あれでいきます。私のことは『ナーナ』と『ノクト』絶対守護るウーマンだと思っていただいて」


〈よっ!!!! 名君!!!!!!〉


〈イカミナちゃんさぁ……〉

〈カスみたいな合の手やめてね〉

〈一気にダメそうな雰囲気出てきたけど大丈夫そ?〉

〈まぁーーーー実際、統治者というか守護神的な立ち位置と考えれば、うん……〉

〈守護(邪)神〉


「てわけで『ナーナ』は私の町ですよと、一応そういうことになりましたよと……いう流れからもう一つ」


〈お?〉

〈まだありますよと〉


 これも町のみなさんから同意を得たうえでの話ですよ〜と前置きをしてから。

 もう一つの、町を守るための手を繰り出す。


「一緒に活動してくれるプレイヤーさんも、募集したいなぁと思っております」


〈おっと〉

〈まじか〉

〈触手クラン設立っすか〉

〈ついに、というべきか……〉


「ああいや、そこまできっちりしたやつではなくって。まあ、なにかしらの組織に入りたいなら『月光讃華』はメンバー募集中だと思うけど」


〈町に住みルミナちゃんへの信心を示せば今日からあんたも『月光讃華』よ!!!!〉


〈結構です〉

〈大丈夫です〉

〈遠慮しときます〉

〈上司が仮面の司教とかコレとかなのはちょっと……〉


 イカちゃん、勧誘が下手。


「ぇあー……なんといいますか、『ナーナ』は今後も『汚濁』との戦いに備えていくつもりではあって。いや、実際襲ってくるかはべつとしてね? ともかく、対『汚濁』・対共生体の知見はそこそこあるつもりなので……」


〈あー、対『汚濁』コミュニティ的な〉

〈たしかに今回の件で需要は高まっていそうですね〉

〈少なくとも、触手が東で一番派手に『汚濁』とやり合ってるのは間違いないしな〉


「そうそう。『汚濁』から自分の身を守りたい、もしくは守りたいNPCがいる、あるいはもっと単純に『汚濁』関連の攻略に興味がある、とか……そういう人たちと緩く連帯できたらなーと」


〈まあ東の強いプレイヤーが集まりがちではあるよな、『ナーナ』〉

〈実際、今回の騒動も居合わせたプレイヤーの功績も大きいっぽい〉

〈プ鱗隊長とかお嬢様ザウルスとか〉

〈普段『ナーナ』に常駐してるくせに肝心なときにいなかった天使がいるってマジ?〉


〈ぎぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいッッッ!!!!!!〉


「こらこらイカちゃんいじめないの。イカちゃんは存在自体が偉いんだから」


〈甘やかしすぎ定期〉

〈推しからここまで甘やかされてたらそらこんなバケモンにもなりますわな〉

〈もっと甘やかせば良いと思うっす〉

〈カプ厨はちょっと静かにしててね〉


「はいはい話戻しますよー? コメントで言ってくれた通り、プレイヤーさんの助力もすごくありがたくって。まあ、それに味を占めてといいますか」


〈占めるな占めるな〉

〈正直すぎる〉


「いやだってほんとに助かったし」


 私がいくら強かろうとも、一人じゃ物理的にどうしようもない場面がある。『月光讃華』の面々はまだ成長途上、彼らがもっと強くなる糧にもなり得るという意味で、戦力は多いに越したことはない。

 私の力に頼り切りにはならずに町を守るという点では、外から人を呼び込み勢力を強めることもその手段の一つなのだと、なによりも町のみなさんたち自身が理解している様子だった。

 いや、半分くらいはなんかこう、純粋に信仰を広めたがってる感じでしたけれども。


 なんにせよ私としても、町と森を守るためなら利用できるものはガンガン利用していく所存。

 

 それにちょうどタイミングよく、『ナーナ』で前々から計画されていた来訪者用の大型宿が完成間近だし。なんならプロミナさんのマイハウスもそれに前後して入居できそうで、『ナーナ』在住プレイヤーのモデルケースになってくれないかなと。私とかガーベラは家いらないからね……


〈んーいやしかし触手の化け物に近づくのはなぁ……〉

〈シンプルにそのリスクがデカい〉

〈触手の化け物を見るとき、触手の化け物もまたこちらを見ているのだ〉

〈力が欲しいか──〉

〈──いらない〉

〈まあそう言わずに──〉 

〈あのね、やっぱ怖いよあのアバターで動き回ってるような存在は〉

〈今しがた実数値の暴力をチラつかされた直後なんすよこっちは〉


「ぅぐ……ま、まあね? さっきは意図的にビビらせたところもあるからね…………」


 なのではい、そういう反応は織り込み済みです。化け物として恐れられることだって利用するって決めたばっかりだし。へこんでなんかないやい。

 それに実際のところ、なんのかんのと言って『ナーナ』を訪れ、居つき、共に戦ってくれたプレイヤーさんたちがいるのも事実。私の言葉じゃダメでも、そんな彼ら彼女らの言葉ならば。


「……と、いうわけで、こんなものをご用意いたしました。はい再生っと」


 まだ増え続けている視聴者さんたちに向けて、私はさっきのとはべつのクリップを見せた。

 『ナーナ』の大きな広場、巨大な触手像を背景にまず映ったのはプ鱗隊長。


「──これまでも発信してきたが、月の触手からは学べるものが多い。異種族アバターであれば特に。『ナーナ』も良い町だ。来て損はないだろう」


 んでお隣、軽鎧のお姉さん。


「ぁ、ああの、ぇっと……い、い、良いところです、よ? ここは……」


 さらにお隣、プ鱗隊長の部下の男性お二人。


「おれら今回の件で町の人達にめっちゃ感謝されたんすよ」


「英雄扱いはさすがに気分良いよな」


「っす」


 さらにさらにお隣、お嬢様ザウルスさん。

 手には触手の置き物。横には静かに佇むメイドさん。


「最初にいただいた時はいや造形やべぇ過ぎるでしょ……と思ったものですが。この町でしか手に入らないという意味では間違いなくレアアイテムですわ! レアアイテム! 欲しいですわよねレアアイテム! しかもなんとこれ、今回町を救ったわたくしたちに贈られた特別仕様でして! ここに触れるとほらっ、光る! 鳴る──」


 レアアイテム自慢が始まってしまった彼女を、メイドさんがわきに押しのけていく。

 代わってドアップで映るのは、腕組みドヤ顔プロミナさん。


「絶対神たるルミナちゃんに毎日会えるっていうんだから、町に来ない理由がないでしょ!! ま、来たとてルミナちゃんにはあたしがいるんだけどねェ!!!」


 そして最後は引きのアングル、今回戦ってくれたプレイヤーさん全員を画角に収めまして。

 はい、せーのっ。


 

「「「「「『ナーナ』の町、サイコー!!!」」」」」



「……っという感じでね? 滞在中のプレイヤーのみなさんもすごく楽しそうでしたね?」


 どうだ。実際に体験した人たちの声ならば、魅力を感じずにはいられまい。


〈……………………いや、あの〉

〈なにこの……なに?〉

〈低予算観光誘致動画?〉

〈ほんのり怪しい宗教勧誘?〉

〈大ヒット上映中!!!〉

〈もうちょっとなんとかならんかったんか〉

〈軽鎧ネキずっと怯えてましたけども……〉

〈プ鱗隊長の“真面目な人が変な宗教にハマってちょっとずつおかしくなっていってる”感がすごい〉

〈(何かに怯えながら引きつった笑顔を浮かべる女性)〉

〈(ガンギマった目で邪神像を見せつけてくるお嬢様)〉

〈(いかにもなローブ着て神がどうのと言い出す信者)〉

〈がっつり怪しい宗教勧誘??〉

〈いくら積んだの?〉

〈洗脳したんじゃね、全員〉


「あれ、なんかウケが悪い……どうして?」


 あと前も言った気がするけど私は洗脳とかしないから。こんなにクリーンな触手に対して失礼極まりないですよまったく。


〈逆になんでこれでいけると思ったんだよ〉

〈公式PVって上手く作られてんだなって〉

〈プロのお仕事と比べるのはあまりにも失礼。プロに対して〉

〈ノソラって一応、配信者だったよな……?〉

〈あー、なんか……基本的にノソラってセンスないんだよなってのを思い出させてくれた〉

〈いやでもたしかに、このメンツに一枚噛めるってのは魅力っちゃ魅力か……?〉

〈落ち着け〉

〈しかしちょっとだけ、さきっちょだけならばあるいは……?〉

〈正気に戻れ〉

〈そのさきっちょだけ突っ込まれたプロミナがどうなったか忘れたのか〉

〈気づいたほうがいい。貴公、もう狂っているぞ〉


 ……。


 …………賛寄りの賛否両論、といったところかな?

 うん、たぶんそう。きっとそう。触手には目がないからよく分からないです。


「と、とにかくそういうわけだから、『ナーナ』は仲良くしてくれるプレイヤーさん募集中って感じで。みんなで『汚濁』をバチボコにしばき倒そう!」


〈こわいよ〉

〈ま、まあ強者の庇護下に入れるのはデカいから……〉

〈そもそも山岳を越えられる時点で強者側なんすよね〉

〈それはそう〉

〈商人同行ルートの開拓が急がれる〉

〈せんでいいせんでいい〉

〈商人さんも久しぶりに訪れたら町が変な触手に支配されててビビるやろな……〉


「……あーもうっ、好き勝手言いよってからに! いいもんっ、理解る人には理解るんだよ『ナーナ』の素晴らしさが! はいじゃあもうルミナとしての話は終わり! ここからはいつも通りの明 ノソラチャンネルに戻りますよーっと! 」


〈不貞腐れてて草〉

〈いや町っていうか今のクリップ……いや町もヤバいか……〉


「今日の話題はなんといってもあれよね、昨夜発表されたあの神ゲー『スネイルシミュレーター』の正当後継作、『スネイルシミュレーターV. Ⅱヴァリアブル・ヴァリアント』についてだよね」

 

〈うわぁっ急にあり得ない方向に舵切りやがった!!〉

〈流石にバタついてて情報見逃してるだろうと思ってたのに……!〉

〈悪いこと言わんから『ウミウシ☆ラプソディー』の話にしとこう! な!?〉


「開発さん曰く“『スネイルシミュレーターV. Ⅱヴァリアブル・ヴァリアント』では、さらに多くの逃げ惑う民衆が追加”とのことで──」

 

〈くそっ、ものすごい勢いで同接が減っていってる!!!〉

〈視聴者数の減少、止まりません!!〉

〈先日、ノソラさんに触発されてその『スネイルシミュレーター』を試してみたのですが〉

〈なにやってんだ『レギオン』の人ォ!?〉

〈開始35分ほどでメンタルアラートが鳴りました〉

〈そりゃそうだろ『レギオン』の人ォ!!〉



 聞きたい話は聞けた……ってことなんだろう、ルミナとして集めた視聴者さんはノソラとして話し始めた途端にさーっと散っていってしまった。ちょいと悲しいけどまあしょうがない。

 

 でもね、でもですよ? チャンネル登録者さんの数は、日々ちょっとずつ増えていってるんですよ。ぐへへ……



 

 ◆ ◆ ◆




 んで、その日の夜。

 もう準備も終えた開店直前の『結わえ草』で、私、ネネカさん、ガーベラ、プロミナさんの四人で少しばかり雑談中。


 昨日まではやっぱりいろいろバタバタしていて……いや今もまだちょっと慌ただしいというか、町全体が浮足立った雰囲気ではあるんだけども。ともかく、今日からまた『結わえ草』にネネカさんの姿が戻る。店長不在のあいだ頑張ってくれたってことで、ラナちゃんフロウさんは本日お休みです。


「──あ、あたしだって秘匿を暴けさえすればぁ……!!」


「それが能動的にできたらいよいよ無法だと思うわよ〜?」


 会計台の前に立つネネカさんの隣で、私用の椅子というかなんかもう台座みたいなやつに乗ってうねりうねり。

 台を挟んだ向こう側では、またガーベラの発言を煽りと受け取ったプロミナさんが、黒い霞にギャーギャーと噛みついている。例によって視線は微妙にずれたまま。


「ふふ……」


 そんな二人のやり取りに微笑みつつ、ネネカさんはこっそりと、机の下で私の触手()を握ってきていた。ドギマギとする気持ちもありつつ、しかし当然嬉しさが勝り、ぴたりと触手を寄り添わせる。

 

 ……ネネカさんは、自らと町と森を守る力を身に着けつつある。

 

 『触装闘術』を用いての実戦は今回が初めてで、その相手が共生体プレイヤーなんて前例のないやつで。なのに彼女は一歩も引かず、相手を戦闘不能にまで追い込んでみせた。

 戦う場面を直接見てはいなかったけれども、触手を纏ってその場に佇むネネカさんの姿は、その強い眼差しは、まるで銀色の花のように美しかった。その花が自ずから力強く咲くこと、それ自体を妨げたくはない。


 が、しかし。それはそれとして。

 私の中から、心配で守りたいという気持ちが消えることもない。


 NPCは死んだとてバックアップが必ず残る。それを元に復元すること自体はもちろん可能だろう。

 しかしだからといって死んでもいいとは思わないし、ゲーム的に言うならば、現状、イデアでNPCの蘇生手段はまだ見つかっていない。たぶん、ないわけじゃないとは思うけども……


「ねえ触手さん。ルミナさん」


 ふと、仮面を被らない、司教ではないネネカさんの声が、私の体表を優しくくすぐる。

 まるで私の葛藤を感じ取ったかのように、安心させるかのように。


「わたしね? また少し、近づけた気がするの。強くて綺麗で、わたしの、その…………」


 ほんのりと赤らんだ頬が、ほんのわずかだけ近づいてくる。

 そしてぽそりと、ひときわ小さく。


 

「──大好きな、あなたに」


 

 こ゜っ。


というわけで四章完結となります。

次章ですが、カクヨム様の百合コン用別作品を間に合わせるべく注力したいので、しばらく間が空いてしまうと思います。下手すると1ヶ月後とかになってしまうかもしれません、申し訳ない……

いつも拙作を読んでいただきありがとうございます!次章もまた読みに来ていただけると嬉しいです!!

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― 新着の感想 ―
銀色様のお話に魅入ってしまって、 一気読みしてしまいました...! 銀色様も様子のおかしい仲間たちも、 みんな素敵で大好きです! 続きを楽しみにお待ちしておりますです(o´艸`)
このチャンネルの住人が定期的にスレでイカれ投稿してるのは分かってるんだぜ!! 同志たちよ!!触手のもとへ集え!!
綺麗な百合の花が咲いてるな〜 あれ?近づいて見ると何だか色が銀色だし、妙にウネウネと動いてるんだが?
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