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【四章終了】月の触手は健全に遊びたい 〜魂の姿がアバターに表れるVRゲーム──え、私の魂って触手の化け物なの?〜  作者: にゃー
第四章 月光を讃える華

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表明


「──はいーどうもどうもどうもー。今日も今日とて(あけ) ノソラですよー。お世話になっておりますー」


〈どもどもどもどもども〜〉

〈ょもょ〜〉

〈もとて〜〉

〈大変お世話になっておりますぅ〜〉

〈いまだに挨拶が統一されてないのなに??〉


 第二次チキン騒動終結から数日、月も変わる直前の日の午後。

 私こと明 ノソラのライブ配信は封印城攻略以来一ヶ月ぶりくらいに、同時接続者数が激増していた。


 今回の出来事についてはイデアプレイヤー間でもいろんな意味で話題、かつ公式PV化の目は薄い。そんな中SNS上で「ちょっと話します〜」なんて言えば、そりゃ人も集まってこようというものよ。相変わらずチャンネル登録者さんの数との乖離はすごいけども。なものでコメントの流れはわりといつも通り。


「ぇあー……今日はお知らせした通り、この前イデアであった出来事に関して少しお話したいと思います。ルミナとして」


〈ルミナとして──〉

〈触手の化け物として、ってことかぁ……〉

〈それ聞いて大丈夫なやつ? 洗脳とかされない?〉


〈ノソラちゃんにしてルミナちゃんなる者のありがたいお言葉を傾聴しなさい!!!!!〉


〈おはイカロス〉

〈おはプロミナ〉

〈おはイカミナ〉

〈混ざってる混ざってる〉

〈まあ例の騒動、聞く限り気分のいい出来事じゃなかったっすね〉

〈さすがにお気持ちを表明する権利くらいはあろうて〉 


「イカちゃんいつもありがとねぇ〜…………あ、先に言っとくと、べつに例の四人を非難するだとかバチボコにぶっ叩くとかではないので。そういうの期待してた人はごめんなさいね」


〈っす〉

〈うす〉

〈もはや語る価値もない、と〉


「そゆことそゆこと」


 あいつら個々人についてはもう終わったことで、話題に出す気もない。クリスレーナさん曰く、ミネー以外はここ数日ログインすらしてないらしいし。BANされたとかではなく、イデアに訪れる気力を失ってしまった。あの住み良い世界で愚かなことをした、ある意味で最大の報いだろう。


 少しだけ視聴者さんが減ったのを横目に見つつ、私はさっさと本題に入った。


「今回の件で、プレイヤーもモンスターと似た挙動で他プレイヤーやNPCを攻撃できることが判明したわけですけども……ぇあー、私としてはお世話になってる『ナーナ』や『ノクト』がいたずらに襲われるのはね、正直我慢ならんわけですよ」


〈まあそうね〉

〈気持ちは分かる〉

〈ネネカさんもおるしな〉

〈ただなぁ……仕様として認められてるわけだからなぁ……〉

〈しかも『汚濁』とがっつり敵対してるわけで〉


「そう。私が町に迷惑かけないでくださーい森を襲わないでくださーいなんて言ったとてね、なんの強制力もない。ゲームの仕様上認められている限り、他プレイヤーの行動を制限する権利は私にはない」


〈まあそうね〉

〈そもそも、こういっちゃなんだが『ナーナ』ってべつにルミナの物じゃないしな〉

〈『ナーナ』と仲良くするも迷惑かけるも、ぶっちゃけプレイヤーの自由ではある〉

〈まあそうね〉

〈いやルミナの気持ちはマジで分かるのだが……〉

〈まあそうね〉

〈まあそうねBOTおりゅ〉


 常連のリスナーさんたちは変に忖度せず意見を言ってくれる。まさしく私が、前々から『ナーナ』にいる上で気をつけていたこと。町の皆さんがどれだけ私を慕ってくれたとしても、私はあくまでいちプレイヤーに過ぎない。町にも、ほかのプレイヤーにも、なにかを強制する権利はない。


「…………ので」


〈ので〉

〈ので?〉

〈ので〜??〉



「『ナーナ』から正式に、町の統治権をいただきました」



 なるべくそのぉー、偉そうに聞こえないように言ってみたけれども……ああうん、コメントが一瞬静かになった。んで、ええはい、そうね。


〈ぉ、ぉあぁ……〉

〈そーーーーー……いう、感じね。はい〉

〈『ナーナ』はルミナの物ではない→ルミナの物になりました〉

〈即落ち二コマかな?〉

〈え、なにどゆこと??〉


 はいはいはい、まずは最初にモノを見せましょうねと、いうわけで。


「はいこれ証拠のクリップ映像ね」


 動画再生しますは、『ナーナ』町長のおじさまと私が、ネネカさんとガーベラの二重通訳を挟んでやり取りしている様子。

 行政上の機能やトップは変わらないこと、ただ私が『ナーナ』の統治者・所有者となること、町の有りように関して私はなんらの干渉をしないこと、それらが私と『ナーナ』双方合意の上で結ばれること、ここで言う『ナーナ』とは自己決定能力を持つ町民全ての総意を指すこと、などなどが読み上げられていく。


 最後に改めて両者合意の旨を、町長さんは頷いて、私はマルのポーズで示し。書面に刻まれた魔術的な契約が成立。そんな時間にすれば数分足らずの映像が、『ナーナ』の立ち位置を大きく変える。


〈おぉーマジで契約しとる〉

〈町長嬉しそうで草〉

〈町民全ての総意ってたぶん比喩でもフカシでもないんだろうな……〉

〈まああの町だからな……〉

〈住民小躍りしとるやろこれ〉

〈最早なんかの記念日になってもおかしくない〉


 コメントも盛り上がり、なんなら視聴者さんの数もなんかもりっと増えた。おそらく誰かしらSNS上で拡散してくれたのだろう。


〈よく分からんのだが、統治権もらったからってなにか変わるんか? 結局ほかのプレイヤーが勝手に暴れたら意味なくね?〉


 っとと、ごもっともな質問。

 おそらくこういうゲームをあんまりやったことがないのだろうコメントを拾って、答えていく。

 

「高位人工知能搭載のNPCが町をプレイヤーに委ねられるってことはつまり……ぇあー、なんだ……ゲームの仕様上、町もプレイヤーの所有物になり得るというわけでして」


〈ゲームの仕様上、ね〉

〈ゲームの仕様上ならしゃーないっすね〉

〈か〜っ、ゲームの仕様上だからなぁ〜っ、かぁ〜〜〜っ〉


 そう、そこがすごく大事だ。

 

 この手のゲームで、ぇあー……例えばそう、大きなクランが拠点にしてる町が実質的にそのクランの統治下に置かれる、みたいなことはたまにある。

 しかし今回のように、NPCと協議し彼らの合意の上でそれが認められるというのは、イデアレベルの高位人工知能NPCが住む世界ではまた一段階意味合いが異なってくる。彼らにそれを認める機能が備わっているということはつまり、その承認でもって、運営公認の統治者になれるということにほかならない。


〈ざっくりいうと、『ナーナ』っていうクソデカいアイテムがルミナの物になったと思っていい〉

〈それに危害を加えるということは、ルミナさんに直接危害を加えるのと同義ですね〉

〈あー、なるほど……?〉


「もちろん共生体化はそれが──“他プレイヤーを攻撃できる”ってのが特徴なのは間違いないけど。今後()に対してそれやってきたら、マジで全力でバチボコにしばき倒すからね」


 いや今までもマジで全力でバチボコにしばき倒してはおりましたけれども。

 今後は「やるならそのくらいの覚悟で来いよ?」と声高に宣言することができる。あの四人が最初にしたような町への嫌がらせレベルの行為でも、直で私への攻撃として扱える。言い訳の余地もなく。ゆえに徹底的な報復ができる。

 少なくとも、抑止力は高まったはずだ。


「一応言っておくけど、『月光』の実数値たぶんそろそろ250くらいになってるからね? 顕界度Ⅰで」


 さらに、言いながら私は現在のルミナのステータスの一部を直接表示した。ノソラとしての指先でそれを指しながら、意図的にマウンティングしていく。


 

[月の触手 戴冠者:『ノクトの森』の主 夜の町『ナーナ』の主 ルミナ]

 身体素養:165

 技量素養:179

 『月光』:顕界度Ⅰ(秘匿状態)

 


 イカちゃんが看破魔術で暴いた1ヶ月半前の時点で『月光』は190以上あった。あのあとも左腕と戦ったりしてステは育ち続けてる。ほかの数値の伸び具合から考えても、250は実際にあり得るラインだ。


「そのうえで、亡霊のお陰で顕界度Ⅱは毎日使えるし……もう気付いてる人もいるかもしれないけど、今の私には能動的に顕界度をⅢに上げる手段もある」


 残念ながら、開示状態への移行はできないっぽいけども。

 まあ今この場での脅しとしては、顕界度Ⅲってだけで十分だろう。


〈あー、亡霊のバフとネネカさんのやつでね……〉

〈あれ重ねがけありなのかよ〉

〈顕界度って一段階上がるごとに『月光』実数値倍々でしたよね……?〉

〈顕界度Ⅲ、実数値1000超えも近いってこと……?〉

〈ひぇ〉

〈あの……上位層が200超えでキャッキャしてる中、一人だけ次の桁に行くのやめてもらっていいっすか〉

〈流石にズルだろ…………いやごめん、やっぱ怖いが勝るわ〉

〈クソデカ実数値をクソヤバアバターとクソヤバ挙動で振り回してくる化け物〉

〈え、これに喧嘩売ったのあの鳥たち……?〉


 なんとでも言いたまえ。

 町と森に良くしてくれる人とは、私も仲良くしたいと思ってるし。逆に──


「──町と森に仇なす存在は……汚濁だろうがNPCだろうがプレイヤーだろうが徹底的にやる。ステ見せたのはそういうことだから」


 さっきとは逆。強気に、偉そうに、出来うる限りのマジトーンで言う。

 痛かろうと寒かろうと、こうして表明することが大事だ。これで一人でもビビって、『ナーナ』にちょっかいかけようだなんて馬鹿が減ってくれるのなら。


 皆が恐れ慄く触手の化け物に、私はなろう。


 次回で四章完結となります。

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― 新着の感想 ―
私のモノ宣言! ゲームの仕様と言う事だけど プレイヤーが国の王にもなりうることを示したわけで 汚濁vsプレイヤーのゲームじゃなくて NPCも巻き込んだ国取り合戦も可能ってことか 触手の野望w〜返り討ち…
小枝を踏み折れば骨を折ってあがないとする(迫真) 実質支配じゃなくて実際支配だから町と森のどこに何やっても確実に触手にコールが行って報復が行われるんだよね怖くない?
まあ既に一部の人からは恐れ戦かれている不健全な触手の化け物なのですが……(笑)
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