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10_私の養護者

 私の養護者



 演算装置を使うためのクレジット残高や各種情報にアクセスするためのクレジットに困ったことはない。私の養護者のおかげだ。私はなんでもできる。たいていのものにはなれるだろう。私の養護者は私をあまり規定しなかった。ただ、加速主義的には育てなかったというだけだ。そういう点では、私は自分のコードを一切覗かないというところは、むずかしい、生物学が高度に発達する以前の古代人的なところがある。それにしたってやろうと思えばできる。だけどやらないのだ。自分が自分でなくなるのを恐れているのかもしれない。でも、自分とはなにかもよくわからないのだが。インプットとアウトプットによって存在が規定されていくというが、私はどうやらそういったことをするということ自体への欲望自体があまりない。そういう方向性の規定がないのかもしれない。私にしても一応の趣味らしい趣味はあるといえばある。古代人の残した個人ポッドキャストアーカイブを聴くことだ。今となっては大変高価な代物だ。たくさんのクレジットを残してくれた養護者には感謝しないといけない。ポッドキャストはほとんどは聞く価値のあるものはない。1000個くらい聞いて、最後まで聞けるのは二つか三つくらいだ。でもその二つか三つが本当に良いものだったりするのだ。そこから、そのポッドキャストチャンネルの全エピソードを聴くことはとても幸せな時間だ。最近聞いたのは、原始生成AI時代の労働価値の低下とそのことが労働時間を増やすことにつながっているから、自分は肉体労働に行くことにした。と語る落ち着いた語り口の日本人のポッドキャストだ。そういった古代人の情報高度化社会との折り合いの付け方みたいな話を、個人の体験話として声で聴くのは本当に楽しいし、その古代人の時代が古代時間でいうところの何万年前なのか、私にはわからないのだけれど、そういったものには強く惹かれる。それ以外、趣味らしい趣味もない。まあ存在しているだけだ。でも、養護者は良い人だったように思う。だけど、良い人すぎた。私をあまり規定しなかったから、私は欲の少ない存在になったんじゃないかって、責任転嫁というやつをしたくなる。だけど、彼の一番の素晴らしいところは、セルフディスカードを認めるサーバーで私を養護して、彼自身もだいぶ昔に、このサーバーでセルフディスカードしていなくなってしまった。彼とはあまり話さなかったけれど、セルフディスカードのできない存在としてあり続けるのは大変なことだよと、何回か言われた。だから彼は、彼がセルフディスカードを執行する直前に、私にセルフディスカードをする権利とそのためのクレジット、存在として活動していくためのたくさんのクレジットを残してくれた。私は正直、規定が少ない存在なので、全部扱いかねていると思う。でも、恵まれてはいる。そのことは感謝しないといけない。私もいつか養護者になろうかなどと思うが、規定がなさすぎて、どう孤児を取り扱っていいのか全くわからないから、何をすればいいのかわからない。ヘルパー達とそのことを話したこともあるけど、仕事をしなさいと言われてしまったので、うんざりして頼るのをやめた。そういうこと。


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