26-暗躍する帝国
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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この世界においては、支配者血族の世襲による国家統治は一般的であり、民主制国家は、まだまだ新しい国の形である。ロールス共和国本土東の宗教国家とする小国を地下街道を通り、さらに東に地下街道を進むとあるのが、皇帝が統治する絶対君主制国家のデスラ帝国あり、王国時代の古き過去にわたり、ロールス共和国にとっての仮想敵国とされている。議会や憲法がないデスラ帝国は、その時代の皇帝の一言で進攻してくる事がありえるからだ。先代の皇帝時代には、小競り合いが発生し、危うく全面戦争になりかけた事があった。当時戦争にならなかったのは、両大国に挟まれた宗教国家の仲裁と和解案として帝国からもたらされた次代の血縁者の婚姻だった。そしてデスラ帝国の第三王子とロールス王国王女の婚姻だった。ロールス王国最後の王である若きロイス王の末妹で、ルイス王は反対したが、 議会の説得と妹本人がその婚姻を受け入れた為に妹は、デスラ帝国へと嫁いでいたのだった。
「この婚姻は人質も同然ではないか…… わたしは今ほど我が無力を感じることはない…… 」
「それでもです…… お兄様わたくしが嫁ぐことで、この国の民と領土が護れるならば、わたくしは本望です。お兄様だけが悩まれることではありません。この国はお兄様たちに託します。わたくしは嫁いでもこの国を愛し続けることをお許しください」
「当たり前ではないか、約束しよう何があってもどんなことをしてでも、この国を護るぞルーテシア」
ルーテシア王女がデスラ帝国へと嫁いだことにより、戦争は回避されたが、皇帝が代替わりすれば、その約束が守られるとは限らない。希代の皇帝である現皇帝ヴィロン・デスラは、才ある皇帝でその手腕は歴代皇帝を抜きん出ていたが、気性は荒く、生まれ持った傲慢な性格は、他国から領土を奪うことにも罪悪感など微塵もなかった。全てが自分に膝を折り屈するものと信じて疑わない。
「そなたは義姉上とは見た目は似ておるが…… 中身は似ても似つかんな」
皇帝の目前ではひとりの少女が膝をついて礼を尽くして頭をたれている。ヴィロンに問われた少女は、銀髪にも見えるプラチナブロンドに豪奢な髪飾りを揺らしながら、顔を皇帝であるヴィロンへと向けた。その表情は薄く笑んでいるが、まるで人形のような感情の見えない笑みだった。
「陛下、わたくしにも陛下と同様に皇帝一族の血が流れているのですよ。確かにお母様からかの国の王族の血も受け継ぎましたが、ふぬけた上に民草などに国を委ねるなど、わたくしの血を呪いたくなりますわ」
「わかっておるではないか、さすがわたしの姪だユミーラ」
「そう言っていただき嬉しいですわ。おじさま」
皇帝ヴィロンの兄である第三王子とルーテシアの間に生まれた娘がユミーラである。ユミーラは今年で20歳になるが、この国の皇帝一族の教育がそうさせるのか、もしくは血がそうさせるのか傲慢で自己中心的な姫と育った。しかし、その傲慢で自分の目的のためなら手段を選ばないユミーラの行動は、ヴィロンからは自身の子供以上に可愛がられることとなった。次代の皇帝はユミーラを指名するのではないかと噂されるほどだ。
「自身の目的の為なら親をもその手にかける。これ程冷酷で傲慢な逸材はなかなかおらんからな」
ユミーラは自身の両親を殺害して両親の持つ皇帝一族の権限を手にした。ユミーラはさらに笑みを深めてヴィロンに声をかける。
「皇帝陛下からそう言っていただけると勇気を持って行った親殺しが無駄ではなかったことを誇りに思いますわ」
「勇気? どうみても願望と天秤にかけることもなくやってのけたように見えたが? 」
「あら、では、おじ様と同じってことでよろしいのですか? 親殺し、兄殺しは必要なことではありませんか」
「ふん、そなたは賢い、我が命を狙うつもりはなく、その報酬はロールスの領土が狙いとは、わたしにとっても都合がよいからの手を組まない理由はない」
皇帝ヴィロンは、皇帝の座を兄弟で争う中で第4王子だったヴィロンは、皇帝候補としては最も可能性が低かったが、兄である第一、第二王子ふたりを殺害し、その行為に怯えたユミーラの父である第三王子に皇帝候補を辞退させた。そして、父親であった先代皇帝を懐柔し、ヴィロンを指名させた時点で殺害した。ユミーラは可愛らしく首を傾げて口を開くが、その物言いは見た目と相反する発言だった。
「今のわたくしにもできないことはございますわ。皇帝ヴィロンの殺害は、さすがに無理ですわ。ですからわたくしは、ロールス共和国をたたき潰してわたくし好みの国に変えますわ。ロールス王族の血を持つわたくしは、その権利がございますもの。ですからおじ様、わたくしが王に返り咲きしたら、生きている間はロールスの国を奪わないでくださいませ。それなりに民と資源は献上はいたしますから」
「はっはっはっ! わかった。ならわたしの気が変わぬうちにロールスを奪うのだな」
「御意に、すでに協力者の手引きで斥候はロールスに潜入しておりますわ。面白いご報告をお待ち下さい。では、御前を失礼いたしますわ」
ルイス王が親愛する妹ルーテシアの娘は、彼女が望まない方向に育ち、彼女の愛した祖国ロールスに仇をなす人間となってしまった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
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