ガッコウ ショニチ 3
一人称を僕に変更、、、言い忘れてました!
「ふっ、眉1つ動かさないとは。流石、我が見込んだ男だけはある。そこで、風間大輔よ、貴様は我との契約を今すぐ履行し、我を一か月間生存させろ」
やせ形小柄な厨二病患者、蔵見はドヤ顔で言い放った。
「いや、まあネクラミーの話はなんとなく分かった。でも僕に具体的にどうしろと?要するにパンデミックってことだよね。そんな大規模な感染症の流行みたいなのから僕がどうこうしてなにかなるものじゃないでしょ」
「ふっ、おそらくではあるが我々はもう既に全員が感染してる。もう既に手遅れだ」
「お、おい、どういうことだよ」
蔵見の言葉に悟が動揺の声を上げる。
外が一段と騒がしくなっているようだが、そんなことはお構いなしに蔵見は話し出す。
「いろいろな情報を統合するに、死人に噛まれると高熱を出してすぐに絶命する、そして蘇ってゾンビのようになる。しかし、普通に死人に噛まれる以外の方法で死んだ者も普通に蘇っているようだ」
普通のゾンビ映画とかだと、ゾンビがゾンビを産むってのが普通だけど、ネクラミーが言っていることは、死人が蘇る世界が出来てしまったということを示唆している。
そして死人に噛まれると絶命する。
「要するに、僕らは既に死んだら蘇るような特殊な感染症に全員が感染していて、死人は口に毒物か何かを含んでいて、噛まれたら絶命する。こんなとこ?」
大輔は軽く蔵見に誘導された推論を並べた。
「ふっ、我も同じように考えていたぞ風間大輔よ。故に、この感染症は、死ななければどうということはない。人間という生き物は生き残るためなら何でも成せる動物だ。死人どもの噛みつきに対して何故絶命するのかはすぐに解明されるはずだ。それまで耐えれば、また普通の生活には戻れるだろう……我はこのアンデッドワールドも悪くはないと思うのだが……」
「クラミー、それって私たちが元の生活に戻れないみたいに聞こえるんだけど……」
奈々が外から聞こえる騒がしい叫び声を気にしながらも、恐る恐る蔵見に質問を投げかける。
「緑川奈々よ、いまだに現実が見えていないようだな。おそらくもう家には当分戻れないだろう。とりあえず風間大輔よ、こういう時は初動が重要だ、早く動けよ」
蔵見はのんきに手に持ったタブレットをポチポチと操作しながら言った。
ネクラミーは体育祭以来、僕に過剰に期待しすぎている節がある……
でも、僕だって死にたくはない。
とりあえず色々考えて動くべきだね。
「よし、とりあえず、奈々たちが教室を出たときは教室は無事だったんだよね?」
「う、うん。隣のクラスも普通だったと思う」
よし、それならとりあえずうちのクラスと隣のクラスを拠点に、安全を確保しながら安全圏を広げていくべきだ。
おそらくネクラミーの言葉が全て真実ならば3階は死人がたくさんいるだろう。
奈々が言っていた、うわごとを言いながら錯乱する生徒、というのがゾンビになった生徒のことだとしたら、確実に何も知らない他の生徒は油断する。
同級生がおかしくなった、とくらいにしか見ないだろう。
止めに入った人が噛まれて次の犠牲者を出す。
そうなると容易に爆発的にゾンビが広がっていくことが想像できる。
急がなくちゃ手遅れになる。
大輔は奈々の言葉を聞くと、すぐに思案を巡らせ、4階に向かう扉に向かうのではなく、屋上倉庫へと足を向けた。
「大輔、何するつもりだ?」
悟が大輔をすぐに追いかける。
そしてそれを追うように後の二人がその後を続く。
「とりあえず僕たちは丸腰だ。とりあえずなにか持って行った方がいい」
大輔はそう言いながら、屋上倉庫を勢いよく開けた。
埃っぽい空気が大輔の前で風に流されて空へと消えていく。
確か、この辺に。
「あった」
まさかこんな時に役に立つとはね。
まあ、まだ役には立ってないけど。
大輔は薄暗い物置のような倉庫に足を踏み入れ、慣れた手つきで何かを探し当てた。
「ダイちゃん、それは?」
「上にあげるタイプのシャッターを下ろす鉄の棒。正式な名前は知らないけど、シャッターがないここになんでかあるのは知ってた」
大輔はそのたくさんある鉄の棒を3人に1本ずつ手渡しした。
「護身用、持っておいて」
そして、自分も一本持つと、そこを素早く出て倉庫の扉を閉めた。
外では叫び声と騒ぎ声が絶えず屋上まで響いていた。
外が騒がしい。
でも、他の3人とも外に言及しないのは、動揺を防ぐためだ。
もう、この今置かれている状況がただ事ではないことを頭で理解したんだ。
これからクラスをまとめに行かなくちゃいけないのに僕らが動揺してたら元も子もない。
そのことを3人ともよくわかってる。
流石は僕の幼馴染と……厨二病。
「とりあえず、クラスをまとめる」
大輔は4人を引き連れて、扉に耳を当てて、すぐそこに誰もいないかを念入りに確認してから、屋上の扉を慎重に開いた。
「よし、ここは異常ないようだな」
悟が真剣な顔つきで先鋒を務める。
下の階からは、騒がしい声が絶え間なく響いていた。
慎重に、彼らは階段を下りていく。
「あー、そうそう、皆そうだよね、あーそうそう」
四人がゆっくりと、四階に下りると、すぐそこに一人の後姿の男子生徒がしゃがんでぶつぶつと独り言を言っていた。
奧にも何人か生徒はいるようだ。
この声は……水沢?
四人は静かにお互いを見やった。
四人と同じクラスの水沢だが、どう考えても雰囲気がおかしい。
その異常さに4人とも少しの間、その場から動かずに、同じ言葉を繰り返す同級生の後姿をずっと眺めていた。
「ねえ、水沢、おーい」
恐怖で硬直する3人をよそに静かな声で、意を決して大輔はしゃべりかけた。
すると、水沢はゆっくりと立ち上がり、大輔たちのほうを振り向いた。
ひっと奈々は悟の背中に身を寄せる。
「あー、そうそう、皆そうだよね。あー、そうそう、皆同じだ、良かった、良かった」
この時点で、四人は、蔵見が何を言っていたのか、本当の意味で理解することになった。
水沢は、両目を潰されていた。
誰かに殴られたような打撲痕が遠目で見てもわかった。
見るも無残な姿だった。
彼は振り返るや否や、ゾンビ映画のようなゆっくりした動きではなく、普通の歩く速度で、しかし少しぎこちなく、四人に近づいて来た。
「水沢……そんな……」
先鋒の悟が戦意を喪失してる……
僕がやるしかないか。
ごめん、水沢!
大輔は硬直する悟を大げさに押しのけて、鉄の棒を、うわごとを言いながら歩いてくるクラスメイトの水沢の顎に向けて突いた。
大輔は運動神経がいい方ではないが、おかしくなった水沢には十分な効果があった。
水沢は顎を上に突かれて、頭を後ろに、体勢を崩してしりもちをついた。
「ほら!いくよ!」
大輔は悟を軽く引っ張ると今度は自分が先頭になって軽く走りながら先に進み始める。
水沢がおかしくなっていた。
ということはうちのクラスにも危害が及んでいる可能性が高い……
高島さん……無事でいてくれ。
大輔はすぐそこの自分のクラスに向かって鉄の棒を片手に駆けて行った。




