18 ボーク、地図を買う。
無限回廊の中庭街には今日も様々な魂人が行き交っている。
皆、目的の場所があるのか?門の近くでボーとしている魂は僕ぐらいだった。
僕は1の鐘の後、空振りになった職業紹介所から出てマップ売りエルフを待っている。
あれから時間が過ぎているがエルフは現れない。相手が時間にルーズな性格なのか日本人感覚でいたら駄目なのか、やることがないから暇で待っている時間が長い。
回りを観察する。やっぱりだ、この短い間にも視線を何回か感じた。通行人と目が合うと逃げていく者と、近寄ってこないが僕を見て何か呟いてる者の2パターンに別れていた。距離があるために内容は聞き取れず不思議に思う。
あれって何なんだろう?誰かと人違いされてるとかなのかな。だって僕には心当たりがないし。
しばらくすると、昨日のマップ売りの男エルフが来た。やっぱり、優雅に街中を歩き音をたてずにゆっくりとした動作でテーブルと椅子を道の真ん中に設置している。
整った顔、サラサラの長い髪が美しいと思う。椅子に座りお茶の準備を始めたので慌てて近寄る。
「あの、すみません」
僕が話しかける。
「ああ、昨日のお嬢さんか。それで地図を買いに?簡単な地図と細かい詳細の地図だけどどうする」
どっちを買うかは決めていなかった。
「簡単な地図には飲食店の場所は書いてありますか?」
僕が今必要なのは料理スキルをとって働かせてもらえる場所だ。それに少しでも魂ポイントを消費したくない。独り暮らしはしたことがないけど、カレーぐらいなら野菜を切ったりできるしスキルがあれば何とかなるのでは?僕は甘い考えで質問した。
「ああ、飲食店、宿屋、銀行、時の鐘の塔とか主要建築物は書いてある。それ以外は自分で確認して地図に書き込むかたちの地図になる」
「では、その簡単な地図をください」
「2魂Pになるよ」
僕はそれに対し返事をしようとした。
「高い!2魂Pない、本当に簡単な地図、1魂Pでも高い!」
突然、門の方から来た魂人が会話に入り込む。
ちっ!
男エルフが舌打ちをした。
彼の整った顔が一瞬歪む。
現れたのは、ふわふわした淡いワンピースタイプの服を着た、オレンジががった金髪で少し癖のある腰までの髪、髪の中に数本髪より長いクラゲのような触手が垂れさがってフヨフヨしている女型の魂人だった。
彼女は太陽の様なデザインの髪飾りを頭に煌めかせ僕たちの間に割ってはいった。
「しょうがない、1魂Pにまけるよ」
男エルフはスキルで地図を出して僕に渡す。僕も手に魂ポイントを念じて1魂Pのコインを出して渡す。
すると彼女が僕の方を向いて言った。
「ホウロウ、嬉しい?」
「ホウロウ?ホウロウ…放浪、うわっ、無限回廊の放浪者かっ!!何処かで見たことあるなと思っていたら、何で放浪が無限回廊じゃなくて中庭街にいるんだ???不味いぞ…」
男エルフは今日の仕事はいいのか、優雅なエルフが嘘のように慌ててテーブルと椅子を回収しバタバタと何処かへ行ってしまった。
何だろう?何か用事でも思い出したのかな?!
「ホウロウ、私ポポナ・フルール、ホウロウに昔助けてもらった。ホウロウ、恩人」
「僕、ホウロウさんっていう人じゃないです、たぶん。それに僕、魂の記憶スキルなしなんで前のこと覚えてないので、あなたの事も会ったことないし、わからない」
僕は記憶なしだということを伝えた。誰かと勘違いしていたら困る。でも彼女は透き通るような青い目でニコニコしながら笑う。
「大丈夫ポポナ、ホウロウ間違えない。恩人助ける、それに壱の門近くで会った」
僕の頭には?マークが並ぶ。
壱の門とは無限回廊の最初の門のこと、そこで会った魂はレイブンと狼と兎(タンポポみたいな花)。
狼の人型は小さな男だった。それでは兎は…。
僕はジーと彼女の姿を見る。オレンジがかった金髪はタンポポの色合いとかぶる。
(たんぽぽちゃん)
僕は確信が持てないので思わず念話を使う。すると彼女は正解とばかりに微笑んだ。
「ホウロウ、困ってる助ける」
僕は考えた。
(彼女がタンポポちゃんで角の生えた兎なら、僕って彼女から魂のポイントを奪っちゃった嫌なやつなんじゃないかな…それで実は復讐するために僕をつけていた。ということはないかな?)
「ポポナ、ホウロウに沢山沢山、コインもらった、凄くいっぱい。門で渡したポイント足りない、恩返しできない!!」
「あれ?僕、考えてること念話しちゃった」
タンポポちゃんは僕を恨んでいないと、そして、前の僕に凄く恩を感じているのかな?魂間違いじゃなければ…だけど。
「ホウロウ、街、何処行く?ポポナ一緒ついてく」
僕は特に断る理由もない。1人より2人の方が安心するから、それに同意し僕とタンポポちゃんは一緒に街中へ。そして門の入口付近には誰もいなくなった。
中庭街の街並みを地図を片手に二人で歩く。
歩いているとエルフが多いが同じエルフでも見た目が違うということに気がついた。
耳の大きさ、肌の色合い、髪の質感、服装など身にまとう雰囲気が各々違う。
「タンポポちゃん、同じ種族だと思うのに違う種族みたいに大部分の見た目が違う魂人が多いね」
僕は疑問を素直に口にする。
「世界違うエルフ、環境違う、進化も違う」
なるほど、それはドワーフや獣人にも適応されるのか同じ種族でも同じだけど同じじゃない。
地球でだって地域差で見た目や能力、言語が違うのだから異世界規模なら違って当然だ。
僕は納得した。
それから僕たちは地図に書かれている食の通りに向かう。中庭街は中央から門に向かい幾つも通りが延びていて宿屋通り、酒場通り、市場通りなどに、ほぼ別れている。
とりあえず近い場所から料理人の求人がないか店に聞いて回った。
「ここも求人が無かった…」
僕はガックリと頭をたれる。
考えが甘かった。
僕と同じ事を考えて行動している人がいないわけがない。
「ホウロウ?困ってる」
「スキルを取って料理人になろうと思ったけど、既に料理人は足りてるって、しかも取得したばかりのスキルだと熟練度が低いから料理の種類が少ないので、そういうのは間に合ってるらしいよ」
僕たちは入ったスイーツ店で試しに注文して二人で席についている。
運ばれてきたのは宝石のようにキラキラした美しいパフェと果物が多く美味しそうなプリンアラモード。僕はそのプリンをスプーンですくいあげ口にする。
「美味しい~!!」
「このプリンアラモード、生前食べた物より美味しいっ!見た目を楽しませるだけじゃないんだ、見たこともないフルーツの酸味が甘いクリームとプリンとまっちして全く飽きない」
僕が上機嫌でプリンをスプーンですくうとタンポポちゃんは、そんな僕を見て嬉しそうにパフェを食べ始めた。
「ホウロウ、美味しい、嬉しい?」
「ポイントを稼がないといけないのに仕事が見つからない、でも甘味は最高だね。魂人が大切な魂Pを消費して飲食する気持ちがわかったよ」
僕はここでプリンアラモードに1魂P消費した。
「ホウロウ、ポイント欲しい?ポポナ良い考えある、狩りする」
「僕、他の魂と戦ってポイントを刈り取る自信がないんだ」
一緒に行動してくれている彼女に情けないが正直な気持ちを話した。
「大丈夫!安心、安全、狩り出来る、狩り場知ってる」
タンポポちゃんが僕を励ましながらキャッチセールスのような言葉で狩りを提案をしてくれ、その話に僕はのることにする。
僕達は彼女のオススメの店に行き必要な道具を買い、この中庭街を出る為に入ったのとは別の門に向かっている。
「本当にこんな道具で狩りが出来るのかな…」
僕は不安になりながらも、タンポポちゃんと門を後にした。




