第269話 ??ちゃん「これで9人っと……」
「お前らが金を持っていないのはわかった。そのくせ、散財したのもな」
「すみません……」
「何の言葉もありません……」
盛り上がっていた2人が落ち込む。
「それで? どうするんだ?」
「今後は気を付けようと思う」
できるんだろうか?
「イルヴァさん、安宿に泊まれます?」
ロザリアがイルヴァに聞く。
「大丈夫だ」
「ベッドもないですし、お風呂もないですよ? 下手をすると、他の冒険者と雑魚寝もありえます。もちろん、男性ですね」
そこまでの安宿に泊まらなくてもいいと思うが。
「無理、かな……」
イルヴァが早々に折れた。
まあ、無理っぽいな。
イルヴァは剣士だが、髪も肌も服装もちゃんと手入れをしているし、身なりがかなり綺麗なのだ。
育ちの良さが所作にも出ているし、とてもではないが、安宿に泊まれそうにない。
「ですよね? 私は密偵でしたし、貧乏だったのでどこでも寝られますが、イルヴァさんは無理でしょう」
ロザリアは本当に苦労してそうだ。
それでいて、メレル曰く、報われないのだからちょっと気の毒。
「じゃあ、どうする? いっそアクサ共和国の王都に帰るか?」
「それも1つの手だと思います。もう1つ方法があります」
俺はここに来る前からその1つが何なのかわかっていた。
というか、その話を聞きに来ているようなものだ。
「何だ?」
「ユウマさんに頭を下げてください。助けてって」
ほらね。
「そこまで迷惑をかけるか? 散々、世話になっただろ」
「私達だけでは実力以前の問題だから仕方がないじゃないですか。私はこっちの生まれじゃないですし、イルヴァさんは箱入りの貴族令嬢でしょ。はっきり言って、このままでは私達、騙されてどこぞの金持ちに買われちゃいますよ」
そうなってもお前らなら逃げられそうだけどな。
「え? 私達、そうなりそうか?」
イルヴァが俺達を見てきた。
「買われることはないが、上手くいくとは思えないな」
「厳しいな……」
「ギルド職員としてはパーティーメンバーを集めることを勧めるか、入れてもらえそうなパーティーを探しますね」
「人工知能による適切な回答をしましょう。ひと月も持たないです」
俺達は素直に答えた。
「そうか……今思えば、シーラとフェリシアが一緒に王都に戻ってそこで解散しようと言っていた意味がわかる」
「代わりに入ってくれる人間を一緒に探そうって言ってましたもんね」
シーラとフェリシアもこの2人が心配だったんだな。
「ハァ……イルヴァ、ロザリア、ウチのパーティーに入れとは言わないが、ウチのクランに入らないか? クランリーダーのレイラには俺が勧めてやる」
最初からこれを言うつもりだった。
「クランか」
「イルヴァさん、乗っかりましょうよ」
「君は乗り気だな……どういうクランかも聞いてないんだぞ」
「大丈夫ですって」
ロザリアが報われないのもちょっとわかるな。
こいつ、密偵のくせに楽観的すぎる気がする。
まあ、メレルがバカで要領の悪い子って言ってたしな……
「AIちゃん、クランのことを説明してやってくれ」
「わかりました。イルヴァさん、ロザリアさん、我々が所属するクランは『風の翼』という名前であり、セリアの町を中心に活動する20人弱の規模のクランになります」
AIちゃんが説明を始める。
「20人弱か……思ったより少ないんだな」
「自由をモットーにしているクランであり、去る者は追わず来る者は拒まずが基本になります。自由をモットーにしているだけあって、ノルマもなく、各自の自主性を重んじています。悪い言い方をすれば向上心のないクランですが、良い言い方をすれば自分のペースで活動できます。また、御二人にとってのメリットはクランリーダーであるレイラさんが女性ですのでかなり女性に優しいクランになります。安心安全ですね」
確かに女性には優しいな。
「良いように思えるな?」
「ツッコミどころがありますが、そうですね」
ツッコミどころはなかったぞ。
「他にも御二人にとってのメリットがあります。まずは寮があることですね。まだ3階に部屋は余ってますのでお金がなくて安宿に泊まるということはありません」
「それは良いな」
「ありがたいです」
さすがにこれは2人共、頷いた。
「基本的に穏やかな人達ばかりですし、料理を作れる人が多いのでお裾分けももらえます。ウチのマスターは完全にそれです」
作らせてもらえないだけだがな。
「今はトレッタにいるから寮にはいないが、クライブっていう料理人を目指している男がいるんだよ」
一応、補足説明しておく。
「ほう? 私は包丁すら握ったことがない」
「私は魔大陸の出身なもので……」
メレルがあれだったからロザリアもそうだろうな。
「そこもメリットになります。もし、ロザリアさんが魔族とバレてもどうにかなります。きっと区長もギルマスも何なら陛下も『こいつ、本当に見境がないんだな……』って思うだけですから」
こいつって誰だ?
「ふむふむ……実際はどうか知らんが、そう思ってくれるわけだな?」
「そういうことですね。最後のメリットですが、あなた方はもうリアーヌさんの転移を知っていますから隠すことはしません。イルヴァさんはアクサ共和国の王都に、ロザリアさんは魔大陸にいつでも帰ることも可能です。それくらいはリアーヌさんもしてくれるでしょう」
「まあ、それくらいならな」
AIちゃんがリアーヌの言葉に頷く。
「イルヴァさん、イルヴァさん、これはもうおんぶに抱っこで頼るしかないですよ」
「まあ、そう思えてくるな……しかし、頼りすぎるのもな……」
イルヴァはその辺りが気になるようだ。
「でしたらこう考えましょう。私のことを含めてですが、リアンでは散々お世話になりました。その恩を返すためにユウマさん達に協力しましょう。ユウマさん達はアクサ共和国の王都で活動をするって言ってましたし、王都なら案内とかギルドを紹介できるじゃないですか」
こいつ、本当に乗り気だな……
「それもそうだな……」
「私達にできることをしましょう。正直、私とイルヴァさんではどうしようもないです。ユウマさんは優秀なうえに優しい方なので大丈夫ですよ」
「わかった……ユウマ、すまないが頼っても良いだろうか?」
イルヴァが子犬の目で見てくる。
「ああ。たいしたことじゃないし、俺達もアクサ共和国の王都に着いたばかりだから案内が欲しい」
「それは任せてほしい。それに恩は必ず返すことを約束しよう」
『返さなくていいですよー。きっと幸せな人生が待ってますからー』
子ギツネ、黙ってろ。
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