第268話 ??ちゃん「お前もなるんだよ」
「まだ数日だろ……」
「私もそう思いました。でも、よく考えたらイルヴァは貴族令嬢でロザリアは魔族です」
世間知らずの可能性が高いな……
「そういう役目はシーラとフェリシアのどっちかがやっていたのか……」
「そんな気もします。それでどうしましょう? ギルドの立場では仕事を回すか安い宿屋を紹介するくらいしかできません。このままいくと、借金でも負いそうな勢いです」
何してんだか……
「借金を負ったらどうなる?」
「普通だったら身ぐるみを剝がされ、どっかの娼館コースですかね? ただ、2人は実力があるので無理な仕事をしてでも地道に返していくか、イルヴァさんの実家に払わせるかでしょうね」
まあ、そんなところだろう。
「イルヴァは貴族令嬢だし、実家もそこそこ金を持っているからな」
「ええ。一応、私も部下に命じて気にはかけていたんですけど……」
リアーヌもギルドもよくやってくれている。
これ以上を求めるのはさすがに無理だ。
「リアーヌ、明日でもいいからその2人に会わせてくれないか?」
「はい……実は2人にはギルドで待機してもらっています。今からお会いになられますか?」
まだそんなに遅い時間ではないか……
「会おう。ギルドに連れていってくれ」
「わかりました。ユウマ様と子ギツネだけでよろしいでしょうか?」
うーむ……
「パメラ、悪いが、ついてきてくれないか?」
「私? それは構わないけど……私、面識ないわよ?」
「ちょっとギルド職員としての意見も聞きたくてな」
それに顔合わせは済ませておいた方が良いだろう。
多分、泣きついてくるし。
「わかった。じゃあ、私も行くわ」
パメラが頷いた。
「よし。悪いが、お前らは待機しておいてくれ」
そう言うと、皆も頷く。
「リアーヌ、頼む」
「わかりました。では、ギルドの私の部屋に飛びますので」
「ああ」
俺達がリアーヌに触れると、一瞬で視界が変わり、前にも来たリアーヌの部屋に飛んできた。
すると、ソファーに腰かける気まずそうな顔をしたイルヴァとロザリアと目が合う。
「やあ、ユウマ……」
「ご無沙汰しております……」
2人のテンションはかなり低い。
「何してんだか……」
呆れながらも2人の対面に腰かける。
両隣にはAIちゃんとパメラが腰かけ、リアーヌが俺達とイルヴァ達の斜めに腰かけた。
「すまん……それとだが、そちらの女性は?」
イルヴァがパメラを見る。
「セリアの町の冒険者ギルドの受付嬢をしているパメラだ」
「ああ。君の……」
「また美人の人です。前世でどれだけ徳を積んだんでしょうね」
いっぱい寄付したぞ。
「どうでもいいだろ」
「それもそうだね。はじめまして、私はイルヴァだ。ユウマから聞いていると思うが、アクサ共和国の冒険者だね」
「私はロザリアです……えーっと……」
ロザリアが俺をちらちらと見ている。
自分が魔族であることを知ってるかどうかだろう。
「先ほどユウマさんから紹介されたけど、セリアの冒険者ギルドのパメラよ。ロザリアさんのことは聞いています」
「あ、そっか……本当に彼女さんですよ」
「……彼女というより奥さんだろ」
ロザリアとイルヴァがこそこそと聞こえる声量で内緒話をする。
「それもどうでもいいだろ。それよりも路銀が尽きたって聞いたが?」
本題に入る。
「うん……なんでだろ?」
イルヴァがロザリアを見ながら首を傾げた。
「イルヴァさんがこの宿が良いって高級宿に泊まったからじゃないですか? 1泊金貨8枚って……」
高っ!
「ユウマ様、例の宿です……」
リアーヌが苦笑いを浮かべながら教えてくれる。
「俺達が区長の奢りで泊まったあそこか?」
パメラの親父さん。
「はい。個室なら1泊金貨8枚です」
高いなー。
俺達5部屋も借りたんだけど……
「それが原因なわけか? でも、数日だろ。それだけで金が尽きるとは思えない」
イルヴァとロザリアが王都に来たのは一昨日のはずだ。
「君があれが食べたい、これが飲みたいって言うからだろ」
今度はイルヴァがロザリアを責める。
「イルヴァさんだって乗り気だったじゃないですか。しまいには二次会とか言って、怪しい店に行くし」
「ボトルを3本も空けたのは君だ」
「もういい」
ダメだ、こいつら……
とんでもない金銭感覚をしているし、世間知らずにもほどがある。
「……とまあ、こんな感じです」
そりゃリアーヌも困り顔になるわ。
「なあ、お前らってこれまでどうしてたんだ?」
これまではそんなことなかったはずだ。
あったら学習しているはずだし。
「金の管理はシーラがやってた」
「店を探したりするのはフェリシアさんですね」
想像通りだ。
「ダメな方の2人が残ったわけか……」
俺の言葉に2人がしゅんとする。
「自分で買い物をするようなことはなかったから……」
「ずっと貧乏だったもので……」
両極端の2人だ。
「それにしても2日でそんなに散財するか? お前ら、ひと月くらいリアンにいたんだろ? たくさん稼いだだろうし、貯蓄はあるだろ」
俺達は10日もいなかったが、かなりの額を稼いだ。
こいつらだって同じかそれ以上は稼いでいただろう。
「リアンで稼いだ金はほとんどシーラとフェリシアに渡した」
「結婚祝いです」
ほとんど渡したのか……
「ユウマさん、引退する冒険者に仲間が退職金代わりにお金を出すのはよくあることよ」
パメラが教えてくれる。
「そういうもんか?」
「ええ。ましてや結婚するっていう理由だったらなおさらね。昔からそういう風習がある。死んだり、ケガしたり、他にも挫折による引退じゃない場合は基本的にお祝い事だから」
無事に次の人生を歩めることへの祝いか。
そして、自分もそういう風に引退したいという思いからだな。
「なるほどな……それなら仕方がないか」
冒険者だけじゃなく、ずっと陰陽師をやってたから気持ちはわかる。
「ユウマは知らなかったのかい?」
イルヴァが首を傾げる。
「イルヴァさん、ユウマさんのお仲間は引退しても自分の奥さんになるだけです。祝いも何もないです」
「あ、強制引退……」
なんかイルヴァの顔が赤くなった。
どうやらロザリアから聞いたようだ。
聞かなくていいのに。
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