第265話 なんでそんなに好きなんだろう?
「とにかく、宿屋に行こう。リアーヌは午後から仕事だからね」
「そうですね。では、参りましょう」
俺達は中央に向かって歩いていく。
やはり町並みは綺麗だし、暑くもなく、寒くもないちょうどいい気温だ。
それに水路の水の流れが心地良く感じる。
一人歩きしている女性の姿も見えるし、先程のレベッカのように外で読書を楽しめるぐらいなのだから治安は相当良いのだろう。
「良い町だな」
「女性が強い町でしたね。安心して暮らせるんでしょうね」
「良いことじゃないか」
女子供の笑顔が目立つ町は良い町なのだ。
「…………そういえば、女性が強いってどういう意味かな? 一言に強いって言っても色んな意味があると思うけど」
アリスが聞いてくる。
「物理的な意味ではないだろうな。権力か性格か、それとも別の意味かもな」
前世でも特殊な職種じゃない限り、基本的には男性優位なことが多かった。
まあ、どっかの蛇みたいな奴もいたが。
「…………ユウマ、大丈夫かな?」
「どうだろ……」
アリスとナタリアが顔を見合わせる。
「ユウマ、すぐに捕まえちゃうからな……」
「明らかに女の敵だからトラブルでも起きないかしら?」
リリーが苦笑いを浮かべ、アニーが呆れたように首を傾げた。
「どう思う?」
「なんとも……」
リアーヌとパメラも顔を見合わせ、首を傾げる。
「大丈夫ですよ。ウチのマスターはプロフェッショナルなんです。それに女性の敵ではありません。必ず、味方になります」
AIちゃんがうんうんと頷く。
「言い方に違うニュアンスが含まれていると思うが、AIちゃんの言うとおりだ。俺は人生で女性や子供とトラブルになったことがない」
俺は女性や子供には優しいんだ。
あ、最初から敵対しているのは違うぞ。
ウチも名家だったから敵対する家はあったし、ライバルの陰陽師だっていた。
「言い切ったね」
「…………さすがはユウマ」
「なんかかっこいいね!」
「こいつ、絶対に前世からユニークスキルを持ってたでしょ」
「この人は持ってると思う……」
「ユウマ様、かっこいいからなぁ……」
皆、納得したようだ。
「さて、中央の広場に着いたぞ」
広場はかなり広く、木なども生えており、自然豊かだ。
木陰に腰を下ろしている人達もおり、やすらぎの場って感じがする。
「【白木の宿】は左でしたね」
当然のように俺とレベッカの会話を聞いていたAIちゃんが左の方に見える通りを指差したのでそちらの方に歩いていく。
そして、通りに入り、少し進むと、【白木の宿】という看板が掛けられた宿屋を見つけたので中に入った。
「いらっしゃーい」
宿屋の受付にはおっとりした感じの若い女性がおり、すぐに声をかけてくる。
「また、マスターの好きそうな女性だなぁ……」
前から思ってたが、俺が好きそうな女性って全部じゃないか?
「安心しろ」
「あ、既婚者でしたか……」
どう見てもそうだろ。
「泊まりたいんだが、部屋は空いているだろうか?」
受付に向かい、おっとりとした感じの女性に聞く。
「えーっと、全員ですかね? 大部屋にしますか? それとも分けられます?」
「大部屋でいい」
「でしたら空いてますね。1泊金貨2枚になります。食事は別途です」
リアンよりは安いな。
まあ、あそこは物価が高かったからな。
「とりあえず、5泊で頼む」
そう言うと、AIちゃんが金貨10枚をカウンターに置いた。
「では、こちらが鍵になります。お部屋は一番奥の部屋になりますので」
「わかった」
鍵を受け取ると、受付横の通路に入り、奥に向かう。
「既婚者はあっさりですね?」
AIちゃんが聞いてくる。
「お前が思うようにもし、俺がそういう人間だったとしても既婚者をどうこうしようとは思わん。俺は人々の笑顔のために戦い、守ってきたんだよ」
というか、トラブルはごめんだ。
「ご立派です。さすがは如月の当主様ですね」
「そういう風に教育を受けてきたからな」
「……お父様は『俺の子か?』っておっしゃっていましたし、お母様は『こいつ、バカじゃないか?』っておっしゃっていましたね」
記憶にはないが、言ってそうだな。
「弟と妹は?」
「『兄上は子供の頃からなぁ……』、『恥ずかしいから私の子供より若い子を娶らないで欲しい』ですね」
多分、周りだけじゃなく、親戚の連中も陰口ばっかりだったろうな。
俺でもそう思うし。
「妹の方は至極真っ当な意見だな」
何しろ、自分の子供より若いってことだからな。
「まあ、全員、苦笑いですよ。一族だけじゃなく、王様も王妃様もですからね」
ライズ王国の王様もだわ。
「仕方がないことだ」
「ええ。仕方がないです。お、この部屋ですね」
一番奥の部屋の前に着いたので鍵を開け、中に入る。
部屋はかなり広く、ベッドも10以上あった。
「完全に団体さん用だな」
パーティーではなく、クランでも泊まれると思う。
「遠征先として人気のようですし、大人数でも対応しているんでしょう。これで金貨2枚なら安いですね」
確かに安いな。
食事は家で食べるし、十分だろう。
「さて、今日はここまでにして、リアーヌが仕事だから帰るか」
「そうですね。明日にしましょう」
「リアーヌ、頼む」
「はい。では、私に触れてください」
リアーヌが頷くと、全員がリアーヌに群がる。
そして、リアーヌに触れると、あっという間に視界が宿屋から俺の部屋に変わった。
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