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限りなく続く  作者: みこえ
本編
50/57

葉迫連1

 桃香と棚島が新婚旅行に行っている間、なぜか保坂が部屋に入り浸った。二人は一週間海外へ新婚旅行だ。その話をした途端、保坂は淋しいだろうからとここに来た。保坂は俺を大好き過ぎるだろう。


 二人とも料理はできないから、外食ばかりだが、こんな夜も楽しい。


「四月から移動になりそうなんだ。見事にあの煩い犬と引き継ぎをしないといけないらしい。四ヶ月終わったら解放されると思ったけど、三月にまた面倒を見ないとならない」

 ウイスキーが入ったグラスを傾けながら保坂は愚痴るように言う。今から憂鬱のようだ。


「なんか淋しくなるな。課長と的場さんと板垣じゃつまらないよ」

「もう一つ教えてやるよ。おまえ、課長に昇進だよ」

「……嘘」

「本当。今の課長は違う部署に移動になる。新しいプロジェクトが始まるらしいからな。新しいプロジェクトを課長かおまえかどちらかに任せるつもりだったらしい」

「俺じゃ頼りないって?」

「違うよ。的場も板垣もおまえになぜか懐いているからな。いい相談相手としてそこにとどまるべきだと判断された」

「もう、おまえは平社員じゃないんだな。こんな情報まで軽く手に入れられるなんてさ」

 保坂はフンと笑った。


「そりゃさ、聞かれたんだから。どうするのがベストかってね。はっきり言えば、おまえを俺の秘書にしてくれたら一番だと言ってやったけどね。見事に却下だ」

「なんだそれ」

「俺の相棒は婚約者になるらしい」

「親交を深めなさいってことか」

 なら、四月に婚約者殿を拝めるかもしれない。


「そう、お互い何も知らない同士だからな。だけどさ、四六時中一緒ってどうなのよ。慣れ合って刺激を無くしそうだね」

「なら、俺が刺激してやるよ。彼女を口説いてやろうか」

 俺が冗談で言うと、保坂は俺の脚を軽く蹴った。

「おまえ首になるぞ」

 ニヤニヤしながら言う保坂はまんざらでもないようで、実現しそうで怖かった。まあ、俺が保坂に敵うはずないのだから、いくら口説いても靡くどころか相手にもされないだろう。


「それにしても、俺だけ取り残されている感じだな。俺の周りはめまぐるしい程変化しているのに、全く成長していない」

「そんな事ないさ。やっと加賀山は解放されたんだからさ。これからなんだよ。何もかも。言い方が悪いけれどさ、足枷がなくなったと言う感じじゃないか?」

 別に桃香が足枷だと言いたいわけではないと思っている。ただ、俺がそうしたいと思っていた。きっと足枷は俺のそんな感情だったのだろう。そう、解放しなければならないんだ。


「この部屋からも解放されるしな。ちょっと羽目でも外そうかな」

 俺の言葉に保坂は盛大に笑った。俺はその姿を睨みつける。

「今までだって羽目は外していたじゃないか。女を侍らせてさ」

「侍らせていたのはおまえだろう?」

「いいように利用してきたのはおまえだ」


 こう言われると言い返す言葉はない。痛い話だ。確かに、感情もないのにあるように装って傷つけてきた。もう、そんな事はしたくはない。

「まあ、それも加賀山には必要だった事なんだろうな」

 保坂は氷をカランと鳴らしながら、じっと茶色の液体を見つめていた。本当にどんな格好も様になる男だ。

「俺も女とは手を切ったよ。彼女一人に絞る。それが誠意だからね。男としてやり通して見せるつもりだ」


 キュッと口を結んだ保坂は今まで見たことのないくらい格好良かった。保坂をこんな風に想わせる女性とはどんな人間なのだろう。ずっとこの時が来る事を知っていた保坂。その覚悟はいつからあったのだろうか。俺は解放され、保坂は束縛される。解放された俺がどのくらい保坂を助けてあげられるのだろうか。今まで助けてもらった分はきちんと返してあげたいし、後悔のない道へ導いてあげたいと思う。俺にそれができるのであれば。


連君始動。陸君は連君離れをしなければなりません。大丈夫かな?まあ、それはまた別の話なので……いやはや、存在しない話。


次回、まだまだ陸君は連君離れができません。


スパートかけますよ。そろそろ政志君に少しだけかき混ぜてもらいましょう。次回もお付き合いください。

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