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二人目

 〜時は少し遡る〜


 俺はレベルを上げるために魔物を殺していた。


 ……『暴食』のスキル、かなり使えるな。魔物から攻撃もほとんど無効化できるし死体も魔力に分解して蓄えられるから【雷撃】に使用した魔力は帳消しに出来るんだよなぁ。


 そんなことを考えながら片手間のように魔物を一箇所に集めて【雷撃】を放った。瞬間、地面が爆発し、なんの抵抗も無く魔物が吹き飛んだ。

 レベルが上がっているため、威力も上がり現在は【雷撃】をくらって生き残っている魔物はいなくなっているた。


『……ね、ねぇニールちゃん。ちょっとだけ実験してみても良いかな?』


『ん……?どんな実験をするんだ?』


『あ、あのね。もう魔力は十分に蓄えられたしさ、さっきのアンデッドとこの死体を合成してみたいんだ』


 ……は?さっきのってあのイメージを失敗した気持ち悪いアンデッドか?……そんなことして大丈夫かなぁ?いや、アンデッドに死体を合成するのは別に構わないんだけど、あいつに新しく死体を合わせるのが不安なんだよなぁ。


『……もしかしたら新しく死体を合わせれば形がと、整えられると思うんだ。ほ、ほら、成長したら見た目が変化するでしょ?』


『……そうだな、悪化するかも知れないけど戦力自体は強化されるし別に良いか。じゃああいつは俺が呼ぶからシルビアは死体を付け足すための術式を準備しておいてくれ』


『う、うん』


 俺は繋がりからあのアンデッドにここに来るように命令した。しばらく待っていると正面から謎の奇声をあげている血塗れのアンデッドが走ってきた。


 な、なんだあれ?あの血ってあいつの血なのか?それとも魔物の血なのか?ど、どちらにしろ血塗れのせいで不気味さが増してるな。声も変わっててもはやなにを発音してるのかも分からないんだが……。


『……おい、これ本当死体を追加して大丈夫なのか?』


『……だ、大丈夫だと思うよ?叡智で調べてみたけど過去にも事例があったし……その時はより醜悪な見た目になったらしいけど』


『駄目じゃねぇか。……一応死体を付け加える時には新しい外見をイメージしながらやってくれ』


『わ、分かったよ』


 ふぅ、まぁこれまでも不安なことはあったけど全て成功してきたし大丈夫だろ。今回に関してはたとえ失敗したとしても戦力自体は上がるんだし完全な失敗ではないからな。だからシルビアもこれを提案したんだろ。


 俺たちは今まで殺してきた魔物の死体を掻き集めてアンデッドの横に置いた。シルビアが術式を構築し始めてしばらくすると『アンデッド創造』を使った時と同じように、集まりくっつき始めた。唯一違う点は前回は体積が膨張していったが、今回は次第に縮んでいき清川や宮沢がアンデッドを作った時のように人型になった。

 変化が終わると銀髪赤目の美青年が立っていた。身長は大体前世の俺と同じくらいの170cmくらいだ。無表情で目も虚ろだが、悪い印象は無く以前の面影は全くなかった。


『……た、多分成功したよ。少なくとも外見はイメージ通りに変化できたよ。……ちょ、ちょっとだけ私たちの外見に引っ張られちゃったけど』


『……別に大丈夫だろ。むしろ、あの姿からよくここまで見た目を修正できたことに驚いてるんだが……。どんな魔法を使ったんだ?』


『え、えっとね。まずは『アンデッド創造』と闇魔法でしょ、次に『人化』を入れて後は『身体操作』も術式に組み込んだんだ。も、元々あの子も『身体操作』を持ってたから出来たんだ』


『……凄いな。どうやったらそんな術式を構築できるんだ?いや、俺も構築までは出来るんだけど発動させようとすると多分暴走すると思うんだが』


『あ、あのね、魔法の知識が沢山あることが主な原因だと思うの。よく分からないけど、

 術式関係の知識も入ってるんだと思うんだ』


『……そうか。じゃあその知識を俺に送れないか?』


『た、多分できると思うよ?でも記憶とかは闇魔法を使わないといけないから少しだけ精神干渉しちゃうかも……』


『大丈夫だ。シルビアがそんなことはしないと分かってるからな』


『に、ニールちゃん……。私これからも頑張るね』


『お、おう。急にどうした』


 その後、シルビアに闇魔法をかけてもらい知識を共有した。その際、新しく開発している魔法の知識も一緒に共有してもらった。


 ……こんな魔法まで作ってたのかよ。確かに強いと思うけどここまでやる必要あるかなぁ?……備えておく分には大丈夫か。


『で、こいつはどうするんだ?』


『えっと、一応眷属だし影に入れて連れていこうと思うんだ。ひ、人型だから地上にでても影から出せるでしょ?』


 ……そうだな、連れていくか。一旦ステータスを確認してから影に入れようかな。後は会話ができるかの確認だな。一応擬似的な感情は作ったけどできるかな?


 __________________


 種族:グール


 年齢:0


 レベル:9


 HP:3500/3500

 MP:2500/2500

 SP:0/0


 スキル:『気配感知LvMAX』『魔力回復速度LvMAX』『並列演算LvMAX』『魔力感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『身体強化魔法LvMAX』『自己再生LvMAX』『身体操作LvMAX』『アンデッド創造LvMAX』『捕食LvMAX』


 称号:『アンデッド』『ニヴルヘイムの龍の眷属』『人工生命体』


 __________________


 ……意外と高いんだな。スキルのレベルが既にMAXなのは多分最初に魂を使用せずに作ったからだろ。捕食のスキルを持ってるのは不思議だけど……。

 それじゃあ次は会話ができるか確かめてみるか。できなかったとしても感情の有無を確認できれば良いかな。


「……なぁ、お前って会話できるか?」


「……」


 俺が話しかけるとグールは無言で首を傾げた。


 ……俺の言っていることを理解できないのか?まぁ、首を傾げたということは感情自体はあるんだろうな。喋れるようには作ってあるから多分喋り方を知らないんだろ。清川が作ったアンデッドみたいに多分中身は赤ん坊と同じ感じなんだろうな。


「……とりあえず俺の影に入っておけ。また呼び出すからその時は出てきて良いからな」


「……」


 影に入るように命令するとこちらを見てこくり、と頷いた後俺の方に歩いてきて影に入った。


 よし、それじゃあ移動するか。レベルもMAXになったし、もうここでできることはないだろ。シルビアの実験も終わったしな。


 俺がやりたいことを終わらせてラプラスを連れて移動しようとすると背後から念話が届いた。


『おい、てめぇ何者だよ』


 突然念話が届いたことにも驚いたが、今まで周りにはなにも気配がなかったのに突然背後に気配が発生したため一瞬で戦闘態勢に入り振り向いた。

 そこには3mはありそうな程大きなドラゴンがいた。その見た目は俺とは違い鱗は黒で目は血のような赤。凶暴な牙と爪を隠そうともせずその出で立ちは自分には敵がいないとでも言うかのように堂々としていた。


『あ?んだその仮面は』


 ……こいつ。いつから居た?いやそもそもなんだこいつは。こんなでかい奴を俺が見逃す訳がないだろ。今まで遠くにいて何かしらの移動手段……例えば転移魔法で来たとしてもシルビアが魔法の発動を見逃さないだろ。……つまり、こいつは少なくとも俺よりも気配か魔法の隠蔽技術が上だと言うことだ。


『おい、何かしら答えろよ。人化のスキルを持ってるんだし話せるだろ?なぁ、世界神の眷属さんよぉ』


「なっ……」


 なんでそれを知ってるんだ?まさかこいつ『鑑定』のスキルをもってるのか?だとしてもそれを平然と受け入れるのは普通無理だろ。出来るとしたら勇者か邪魔の眷属ぐらいだろ……もしかして本当にそうなのか?でもヴェノムでもまだそんな強さはないぞ?


『に、ニールちゃん、早くステータスを見てみて。と、特に名前と称号の部分』


『……分かった。その間の警戒は頼む』


 __________________


 種族:ファフニール


 名前:リード(黒崎 拓真)


 年齢:1


 レベル:75


 HP:10200/10200

 MP:8300/8300

 SP:9500/9500


 スキル:『鑑定LvMAX』『気配感知LvMAX』『スタミナ回復速度LvMAX』『魔力回復速度LvMAX』『並列演算LvMAX』『思考加速LvMAX』『念話LvMAX』『千里眼LvMAX』『業火の息吹LvMAX』『魔力感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『身体強化魔法LvMAX』『火魔法LvMAX』『闇魔法LvMAX』『猛毒生成LvMAX』『猛毒耐性LvMAX』『熱耐性LvMAX』『自己再生LvMAX』『未来予測LvMAX』『人化LvMAX』『飛行LvMAX』『龍鱗LvMAX』『強欲LvMAX』


 称号:『邪神の眷属』『強欲の罪』『虐殺者』『宝の守護者』


 __________________


 ……は?なんだよこのステータス。ありえないだろ。世界神の眷属になって成長速度が異常になった俺でも、まだ10000にはなってないんだぞ?それなのになんでこいつはこんなにステータスが高いんだ?


『ニールちゃん。称号の『邪神の眷属』の部分を鑑定してみて。い、以前とは効果が変わってる』


 ……そうなのか?もう一度鑑定してみるか。その後は落ち着いてスキルのコピーをしよう。


『強欲』

 殺害した相手のステータスを一部奪い取ることができる。スキルでま能力値でも奪取可能。


『邪神の眷属』

 邪神の眷属。経験値と熟練度の獲得量が増加する。魂の格によって獲得する量が異なる。


『強欲の罪』

 全てを奪い取る者。スキルや能力値以外も奪取可能になる。殺害した相手から確率で全てを奪うことができる。ある程度力の差がないと成功しない。


『宝の守護者』

 宝を守る者。自身が宝を所持していて相手がそれを取ろうとしている時ステータスが一時的に上昇する。宝を奪われたらステータスが元に戻る。


 ……本当に七つの大罪系は強くないか?つまりこれは相手を殺せば殺すほど経験値とは別で強くなるんだろ?……やばいな。技量で勝てそうだけど今後はわからないな。でも『強欲』のスキルがあったとしてもこのステータスは異常だろ。


『そ、そうでもないよ。ここでずっと魔物を殺し続けていればこのステータスにはなると思うよ。わ、私達は技術とか他のことをしてたからレベル上げ自体は短いし』


『……確かにそうだな。それじゃあ今から戦うことになると思うがこれからコピーするスキルの解析を頼む。何か活用出来たりしないか調べてくれ』


『うん……』


《スキル『複製』の能力により、スキル『強欲』を獲得しました》


『おい、いつまで黙ってる気だよ。もしかしてビビってるのか?はっ、雑魚が』


 ……もしかしてこいつは馬鹿なのか?それとも自分の力に自惚れているのか?なぜわざわざ『人化』を使用せずにドラゴンの身体でいるんだ?それじゃあ自分から攻撃を当ててくださいと言ってるみたいなもんだろ。


「……雑魚はどっちだよ」


『……おい。今なんつった?俺が雑魚だと?訂正しろや』


 俺がボソッ、と思ったことを口に出すとリードは簡単に切れた。魔力が荒ぶり本来魔力が持たないはずの物理的な影響まで発生させていた。


「はっ、お前がが雑魚だって言ったんだよ邪神の眷属。今からお前をミンチにするけど後から泣きわめくなよ?」


『ッ……!てめぇは殺す!』


 俺が明らかな見え透いた煽りをするとリードはまたもや簡単に切れて、最短距離で技術も何もない攻撃を繰り出してきた。元々身体強化や思考加速などの戦闘準備をすませていた俺はなんの問題もなくそれを避けた。


「おいおい、そんな攻撃じゃあ俺は倒さないぞ?なぁ、雑魚に自分の攻撃を避けられて今どんな気持ちだ?」


『るせぇ!』


 俺が避け際に闇魔法で怒りを誘うようにした煽りは狙い通りに成功し、リードはより単純な攻撃を繰り出してきた。爪の攻撃が予想異常に早く俺は身体加速も発動させて躱した。

 少し距離を取り、現在のステータスで最高の状態にした。身体強化、思考加速、身体加速、水流操作ね血流加速し肌は真っ赤になっていた。そしてシルビアにも今まで頼んでいた魔法の開発を強欲の解析だけ残して術式の構築へ集中してもらいリードへの迎撃を手伝ってもらうことにした。


『あ?んだその肌。……おい、なんだよその魔法陣は……。まさか俺に当てるんじゃないだろうな?』


「もちろん当てるぞ?お前が言うには俺は雑魚なんだしまさか避けたりはしないだろうな」


『ちっ……。クソがぁ!』


 リードは自棄になったのかただ普通に走り接近してきた。

 俺は過剰に魔力を使用して用意していた20の魔法陣を発動させた。すると魔法陣から雷の矢が大量に発生し、その全てがリードへと向かって行った。


「【雷撃雨(サンダーレイン)】」


 リードは最初の1、2発を受けるとその威力の弱さに戸惑うような気配を見せた。


『初級魔法?てめぇ舐めてんのか!?』


「じゃあ食らってみろよ」


『はっ、こんなのいくら食らってもかすり傷一つつかねぇよ』


 リードはシルビアと俺の罠になんの疑いもなく引っかかり残りの魔法を全て対処せずに身体で受けきった。


「……【黒雲(ブラッククラウド)】」


 最近開発し、先程記憶を共有した魔法を発動させるとリードの頭上に黒い雲が発生しそれは次第に数を増やして集まり体積を増していった。


『こんな見え見えの魔法にあたると思う馬鹿がどこにいるんだよ、あぁ、おれの目の前にいたな』


「……そうか。それじゃあ躱してみろ。抵抗しないと死ぬぞ?」


『……ひっ。てめぇ本当になにもんなんだよ!』


 俺が少し殺意を見せるとリードは今までの威勢が嘘だったかのように弱気になった。俺と黒雲から距離を取り始め、俺が発動しようとしている魔法への対処てと集中し始めた。


「【雷撃】」


 俺が魔法を発動させた瞬間、黒雲から雷が発生しそれは地面に落ちることなく不自然に曲がりリードのいる方向へと進んでいった。

 最初はリードも全力で逃げていたが、逃げきれないと悟ったのか途中で止まり魔力で体を守った。

 だが、リードの抵抗虚しく魔法の雷が当たった瞬間リードの魔力が弾け体は雷で焼かれ煙をだして膝を地面についた。


『クソ…が……』


 その言葉を最後にリードは気を失いその大きな体は糸の切れた人形のように力なく地面に倒れた。俺は意識がないことを遠くから確認した後気を失ったリードへと近づいていった。





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