蘇生
『ニールちゃんは僕になんの用があるんだい?』
『……分かってるだろ。清川と宮沢の魂を渡してくれ』
『……そんな頼み方だと僕も渡したくなくなるなぁ』
こいつ……。上機嫌だと思ったら普通にいつも通りじゃねえか。体感時間が長いから問題はないが、あまり時間を掛けたくないな。
……もう邪神とかどうでもいいかも。うん、よく考えたら俺がやらなくても他のクラスメイト達がやってくれるだろ。もう倒さなくてもいいかな……。
『リュ、リュウキ君?大丈夫?なんか鬱になってない?私に出来ることがあれば言ってよ』
『そうだよニールちゃん。謝るから気を取り直してくれよ』
ふぅ。上手くいったな……。わざわざ心を閉ざしてまで演技した甲斐があったな。……ん?あれ、なんか今変なのが混ざってなかったか?
『おい、シルビア。お前もしかしてこの状態で話せるのか?』
『……ど、どういう意味?私なら普通に話せるけどどうしたの?』
……ふむ、今まで部外者の介入を許さないとでも言うように周りの動きを止めていたのに、ここでシルビアを介入させるのか。……こいつも俺だから関係ないということか?
『ん?僕は特にそんな意図は無かったよ。君と長い時間喋りたいから感覚を延ばしてるけど君の眷属や友達を招くことも可能だよ?ラプラス君とかさ』
『そうか。それじゃあ機会があればお願いする』
『うん。分かったよ』
よし、言質は取ったな。保険はいくつあっても足りないし取れる時に取っておかないとな。……話しが逸れたので戻すか。
『それでもう一度言うが、清川達の魂を渡してくれ』
『分かってるよ。その前に僕から君に話したいことがあるんだけどいいかい?』
話したいことか……。以前愚痴られた時はかなり長かったのにこちらから切断出来なくて大変だったが、新たな情報も獲得できたからな……。
今回はシルビアもいるし長くなりそうなら押し付ければ大丈夫か。
『リュウキ君……。隠してないから全部私に聞こえてるよ』
ちっ。忘れてた。これじゃあ擦り付けられないじゃないか……。いや、待てよ?こいつも逃げられないんだから標的を変えるだけでもいいのか。なんだ別に知られても関係無かったな。
『それで俺に話したいことがあるなら話してくれ。……なるべく簡潔にな』
『大丈夫だよ。今回はそこまで長々と語らないからさ。それで話したいことは今回の進化での君の変化のことだよ』
俺……?眷属達じゃなく俺の変化が何か問題でもあるのか?
『いや、今回の進化で君の魂の格が僕の予想よりも高くなってしまったんだよ。僕的には助かるけど、君はあまりそういうのを好まないと思ったからね……。一応報告しておきたかったのさ』
だから最初、上機嫌だったのか。魂の格が上がったのか……。確かにあまり俺にとってよろしい事態ではないな。
『……なんで?私たちはじゃ、邪神を倒するだから強くなれるならいい事じゃないの?』
『そうだな、デメリットはない。というかむしろメリット以外を探す方が難しいと思う。だけどお前も俺と同じ記憶を持つなら分かるだろ?見た目化け物の連中から俺、化け物って言われたんだぞ?これ以上加速したら次は何を言われるか分からないんだけど……』
俺が弱気になって愚痴るとシルビアはいつもより強気で反論してきた。
『そ、そんなの仕方なかったじゃん。私も言われたら傷付くと思うけど、私たちは人化してるからわかりずらいけど実際はドラゴンなんだし化け物と言われても仕方ないよ。』
む……。それもそうか。別に化け物と言われること自体は構わないな。人化を解けば化け物だし。だけどこのままだとまた何か言われるんだろうなぁ。嫌だなぁ。特に眷属のあいつらにまた化け物と言われたら傷付くなぁ。
『……リュウキ君性格変わってない?本当に大丈夫?なんか私みたいになってるけど』
『……はっ。だ、大丈夫だ、多分。こ、こほん。それで俺が言いたいのは眷属達に見た目ではなく中身を化け物と言われるのが嫌だと言うことだ。だからこれ以上成長速度が上がるのが好まない理由だな』
『流れる僕の力を制限できればいいんだけど、君の体が無理やり引っ張るから制限しきれないんだよねぇ』
『……それはどういうことだ?』
『そ、それは私から説明します。ドラゴンは本来強さだけを求める種族なんだよリュウキ君。だ、だけど元人間のリュウキ君は本能が薄く認識出来ていないんだけど現在体は意志と関係なく力を求めているの。さっき私も試して見たけれど、げ、現在はこの体で発生した意思である私でも制御出来ないくらいに本能が強くなっちゃってるんだ』
シルビアはまるで俺に授業をするようにドラゴンの特徴について語り、俺らの現状について説明した。
『そ、君たちは僕の力を吸い続ける吸引機みたいな感じになってるんだ。勇者だった頃は大丈夫だったんだけど、眷属として希薄でも確かに魂の繋がりができてしまって流れ込む量が増えたんだよ……。その時は制御出来ただろうけど今回の進化で無理になっちゃった』
なんかこの二人息がピッタリじゃね?阿吽の呼吸で交互に俺に分かりやすく説明してくるな。今回が初対面の筈だけどなんでこんなに息が合うんだ?
『わ、私にはリュウキ君が世界神さんと話してた記憶もあるから完全な初対面という訳でもないの』
『僕は神だよ?初めて話す子に合わせるくらい余裕でこなせるさ』
ふ〜ん、つまり相性がよかったのか?俺はあまり世界神を好きじゃないけどこの世界で発生した意識だから世界神に何かしらの縁を感じてるのかもな……。
また話が脱線したなぁ。えぇと、そうだ。魂の格が上がったという話だったな。終わったっぽいし早く渡してもらお。
『それじゃあさっさと魂を渡してくれ。今度は話題を変えさせないからな』
『……分かったよ。ええと……確かこの空間に……』
世界神は不安になるような言葉を言いながら魂を探し始めた。しばらくすると世界神が話しかけてきた。
『あぁ、あったよ。直接は渡せないから君が死霊魔法を使う時に僕が魂を依代に入れてあげるよ』
『……そうか。それじゃあ頼んだ』
それは助かるな。ラプラスみたいな異空間はまだ俺にはないし、急に手元に魂が現れたら問い詰められるのは確定だからな。
『それじゃあ俺はこの後移動してから清川達を蘇らせるからその時は頼むぞ。俺はこれで頼みたいことはないから俺達を戻してくれ』
『……分かったよ。また寂しくなるなぁ』
世界神は本当に寂しそうに、迷子になった子供のような感じで一言呟いた。
『…………その、お前には一応感謝してるぞ』
『あっ。ツンデレのニールちゃんがでれた。珍しいものが見れたなぁ。暫くはこれで寂しさを我慢させてもらうよ』
なっ……。ツンデレだとっ!?可哀想だから同情して慰めただけなのにふざけるな。
『リュウキ君お、落ち着いて?それじゃあ世界神さんありがとうございました。とても楽しかったです』
『うん、こちらこと楽しかったよシルビアちゃん。また呼ぶからその時はもう一度話そうね』
『待っ……。てめ、シルビア俺の精神に干渉するな』
『リュウキ君本当に落ち着いて!私もこれ辛いんだからっ』
シルビアは本当に辛そうに俺にそう懇願しながら俺の精神に精神攻撃無効のスキルを何故かスルーして干渉し、俺の怒りを無理やり静めようとしてきた。
『あはっ。それじゃあニールちゃんまた今度ね』
世界神は俺たちのそのやり取りを聞いて楽しそうにそう言い、繋がりを切断した。世界神との繋がりが断たれた瞬間周りの景色も普通に動き始めた。
……くそ。結局シルビアに邪魔されてツンデレということを訂正出来なかったじゃねぇか。絶対次話す時にこれをネタにからかわれるぞ。
『……リュウキ君。い、いくら世界神さんでもちゃんと礼節をわきまえないと駄目だよ。私たちはた、頼んでる側だから尚更だよ』
……シルビアの言っていることは本当にド正論だが、何故か納得できない。理解はできているしやろうとも思うけど世界神相手だと出来ないんだよなぁ。
あいつがいつも俺をおちょくったり、爆弾を最後に落としていくからだな……。うん、絶対そうだ。
『はぁ、リュウキ君それじゃあ本当に世界神さんの言っていたつ、ツンデレみたいだよ』
『……お前までそれを言うか。……もう良い。言いたきゃ勝手に言え』
俺はツンデレという言葉を聞かないためにシルビアに心を読まれないように心を閉じ無心で目的地へと進んで行った。
俺らは俺がアマルテイアと修行していた魔素濃度の高いドーム状の空間に来ていた。
魔素の濃度が高い方が魂が定着しやすいという助言を悪魔たちからもらったため、目的地を変更しここに来た。本当はケイローンと修行したアンデッドの巣窟に行く予定だった。
「よし、ここら辺で良いだろ。それじゃあ今から集中するから離れていてくれ。多分大丈夫だろうが、周りを警戒しておいてくれ」
眷属達はいつも通り了承し、俺から距離をとって周りを警戒し始めた。俺はありったけの魔力を込めた限りなく人に近い男性型と女性型の2体のゴーレムを作成した。
ふぅ、強度・人間性・魔力と魂への融和性・声帯・魔力貯蔵量・関節の稼働域・質量はこれくらいで十分だろ。これなら例えば500キロのハンマーを時速100㎞で振り下ろしても罅一つつかないだろうな。
魂との融和性も高めたので失敗する確率は5%もない筈だ。魔力貯蔵量は最大まで高めてあるし、魂が成長すればそれに比例して増えるので二人が魔法系でも戦士系でもどんな種族になっても十分な魔力量があるだろ。
関節の稼働域は360°回転するし、神経と同じ役割をするように配置したシェロブの糸を通してある。任意で感覚を無くすことが出来るようにはしてあるので痛覚とかへの対策は大丈夫だ。既に二度死んでいるし痛み自体は大丈夫だとおもう。体は土があれば再生可能だから予備はいくらでも作れる。
体型も清川と宮沢で変えてある。男型の方は6パックの八頭身。女型の方は平均よりも少し大きい胸と美脚、美尻のスラリと細い腕と指という文字通り人形のような体型だ。
まぁ魂を込めれば自分好みの体型に変わるし大して意味はないだろうけどな……。後はシルビアに頼んでいたものができれば準備は完了だな。
『おい、シルビア。頼んでいた魔法は完成したか?』
そう、俺は心を閉じた後成功率を上げるためシルビアに性能の高く、低コストの新たな死霊魔法と危機的状況時に使う魔法の開発を頼んでいた。
性能は魂を精神に影響を与えずに定着させ、俺の眷属にして能力を底上げする魔法と後はいつでも魂を回収出来るようにする緊急回収術式という謎の魔法を頼んだ。
『……ええと、ここがそうで。それがこうだよね。……あっ、何?もう一回言って』
こいつ集中しすぎだろ。移動時間と俺がゴーレムを作っている時間で完成すると思ってたのに……。またのめり込んで作ったからかなり時間がかかっているのにな……。
こいつも俺だから半端な性能に
したくないのか……。まぁその分完成した時は以前俺が作った風魔法のような性能の魔法を作ったくれるだろ。
『俺が頼んでいた魔法はあとどれくらいで完成する?』
『し、死霊魔法の方は完成してるよ。魂の回収魔法はもっと低コストで回収時間を短縮出来そうだからま、まだ改良中だよ』
『……分かった。それじゃあ一旦それは中断して俺と一緒に魂の定着を手伝え』
『う、うん。分かった』
俺はシルビアが作った新しい魔法をシルビアと一緒に構築し始めた。いくら最適化させたとは言え、性能を追加しまくったので魔法陣がかなり複雑だった。
恐らく俺一人では制御出来ないくらいには複雑だし魔法の知識があり、これを作ったシルビアと共同でやらないと不安だからな。
詠唱はイメージと魔力操作の精度が高いため必要ないがそれでも時間がかかるな……。思考加速してるから実際まだ数秒程度だが、加速してなかったら普通に30分はかかるだろうな。実際俺の体感時間が30分超えてるし……。
『リ、リュウキ君そろそろ構築し終わりそうだよ?大丈夫だと思うけど、ちゃ、ちゃんと準備しておいてね?』
『……大丈夫だ。俺もそれくらいは分かる』
その後しばらく魔法陣の構築に時間がかかったが、無事に構築が完了した。
『よし、終わったな……。対象はこのゴーレム2体だ。絶対に間違えるなよ?』
『だ、大丈夫だよ。これの重要さはリュウキ君と同じくらいり、理解できてるよ……』
魔法陣の構築を完了させた俺はシルビアとの動きを合わせるために最後の確認を行った。返事を貰った俺たちは息を揃えて魔法を発動させるための言葉を唱えた。
『『【蘇生】』』
俺とシルビアが魔法を唱えると魔法陣から二つの光の玉が現れ、ゴーレムへと吸い込まれていった。
すると今まで微動だにしていなかったゴーレム達が、マクスウェル達を練習に使った時と同じように大体高校生くらいの身長まで縮み、次第に人の肌のように表面が変化していった。
変化が止まった頃そこには少し美形になっているが前世の清川と宮沢の姿があった。
「あ、あれ?私魔物に殺されたんじゃ……」
「ひいっ、やっ、やめっ……あれ?俺山賊に襲われていたのに……」
無事に成功したみたいだな。精神にも影響はなさそうだな。とりあえずはこれで一安心だな。……混乱してるみたいだし話しかけてみるか。




