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ゴーレム

 ラプラスから死霊魔法を教えてもらうことになってから2週間経った。

 初めは死霊魔法をつかう際に必要な死体代わりでゴーレムを使う為、土魔法を先に教えてもらった。

 土魔法の特徴は質量だった。質量と言っても別に大きさは自由で、密度を上げて1箇所を攻撃するのも良いらしい。


 現在俺はラプラスに言われたメニューをこなしていた。内容はゴーレム100体を質量も密度も同一に生成することだ最初は2日かけて作っていたが、現在は慣れて半日で作り終える。

 しかし、多少は見逃してくれているがラプラスは物質掌握と探知の両方のスキルを使ってまで質量と密度を測っている。当然失敗していた個体が見つかり、また100体作り直すことになる。


 既に失敗する個体は1桁まで減っているが0体にならないと次の情報を教えないと言われているため成功させなければ一生これを続けさせられるのだ。

 早く終わらせて次の情報を教えてもらいたいけれど、魔法陣の最適化と慣れ、魔力量が増えたことにより余裕が出来たため日に日にゴーレムの質も良くなってきているので決して無駄ではないのが複雑だ……。


「ふぅ……。これでどうだ?かなり自信があるぞ」


「ふむ。…………多少誤差はあるが私でも200回に1度してしまう程度の誤差のため認めようかな。それでは今度はこのゴーレム達を起動させ、動かしてもらうよ」


 なっ……。死霊魔法じゃないのかよ。まだゴーレムについてやっていくのは辛すぎるだろ。


「これも必要なことなんだよ。死霊魔法を依代に入れた際に魂を定着させる感覚はゴーレムの操作する感覚と酷似していてな、ゴーレムを事前に操作しておけば魂も定着させやすくなるんだ」


 まじか。もうあまりゴーレムを見たくないほどに気力が無いんだがどうしよう。ラプラスに言っても休ませてくれないだろうし頑張るしかないよなぁ……。


 俺は100体の内、一体を動かした。並列演算と物質干渉の処理能力を最大にしてゴーレムにオリンピックに出る体操選手のような動きをさせた。

 密度は高く、硬度は既に黒曜石を超えているので無茶な動きも可能である。関節も自由自在なので体操素人の俺が操作してもそれっぽい動きにはできるのだ。


 ……こうして考えてみるとゴーレムって優秀だな。ある程度力量差が開いていると時間稼ぎにしか使えないが同レベルならば一方的に相手を攻撃できるんじゃないか?


「……本当に君は凄いな。スキルを使用しても初めて操作する者は本来、これほどの動きは出来ないんだよ。……それじゃあ情報の処理能力を上げるスキルの使用を禁止しよう。その状態で先程の動きをゴーレムに命令してくれ」


 うっ……。スキルを解除して動かすのかよ。別にもう良いか。時間と精神を削って練習していこう。

 まずは歩かせるか。さっきはスキルに処理を丸投げしていたからな。最初は少なめの情報を処理して頭を慣れさせないとな。


 俺は先程体操選手のような動きをさせたゴーレムを歩かせようとした。しかしゴーレムは微動だにしない。


「……」


 俺はゴーレムを無言で眺めていた。ずっと脳内でゴーレムに歩くように命令しているのだが、反応しないため泣きたくなる気持ちを我慢して続けていた。


「はぁ……。頭で念じているだけではゴーレムは動かないよ。動かしたい時には命令のみの魔法陣をつかうんだよね。私が1度手本を見せるから見ていてくれ」


 ラプラスは俺のゴーレムに向けて属性も何も無いただ、魔法にどのような効果を決定する部分だけの魔法陣を構築した。

 その直後探知に魔力の波動を感じ、それがゴーレムに届くとラプラスと俺のいるところまで歩いてきた。


「このように命令だけの魔法陣をゴーレムに発動させることで動かすことができるんだよ。じゃあ、やってみてくれ」


 ……命令だけの魔法陣ねぇ。とりあえず空気中の魔素を集めて魔法陣だけ構築しとこ。その後に命令を付け加えればいいか。


 俺は魔素を集めて何の効果も無い魔法陣を構築した。念の為魔力を込めたが何も起こらなかった。


 よし、成功したな。あとはこれに命令を付け加えるだけか。まずは構成を見てみるか。何か魔法とちがう部分があるかもだしな。……こうやって見ていくと結構気づくことが多いな。構成自体は普通の魔法と同じだが、何もないから単純で理解しやすい。今度新しい魔法を作る時にはこの魔法陣から始めていこうかな。

 少し脱線したけど魔法陣に命令を加えるか。さっきラプラスが歩かせていたから今度は走らせてみようかな。……よし、多分これで大丈夫だろ。もっと細かく、右足を前に出して左足は地面を蹴りあげ――、とかだったら動かないだろうけど、さっきのラプラスはそこまで複雑な魔法陣を使っていなかった。ゴーレムの核にはある程度の知性のようなものがあるからな。まずはこれでやっていくか。


 俺はゴーレムに向かって命令を加えた魔法陣に魔力を込めて発動させた。直立不動だったゴーレムが走り出した。速さを命令していなかったせいか、大体100メートル走の選手ぐらいの速度で真っ直ぐ走った。

 50メートルくらい進んだところで急にゴーレムがこけて動かなくなった。


「……壊れたのか?すみません、確認してきます」


「待ってくれ、君がゴーレムに触れるのは禁止させてもらうよ。立たせるときにも遠隔操作で立たせてくれ」


 そこまでするのかよ……。魔力は回復速度の方が消費よりも早いから減らないが疲れる。走れの命令で出来たんだし今度の命令は立て、でいいか。


 もう一度命令だけの魔法陣を構築し、ゴーレムに立つように命令した。命令を受けたゴーレムは何事も無かったように動きだし、硬い体を器用に動かして立ち上がった。


「君は本当にゴーレムについての無知だったんだよね?もしそうならば世界神の知り合いとか関係無しに天才だよ」


「そ、そうですか……」


 あれ、褒められているはずなのに怖いな……。ラプラスからは怒っている気配も威圧も感じないのになんでだ?


「うん。私は今まで沢山の悪魔や神霊、魔物を見てきたけれどここまで理解力があり実行する力を持った者は見たことがないよ。今まで見てきたものは基本どちらかの極端か中途半端なやつだけだったからね。本当に君には興味が尽きないよ」


 あぁ、分かった。ラプラスの雰囲気せいか。俺を実験動物や観察対象にしか見ていないような雰囲気のせいで本能的に危機を感じて怖いと思ったんだな。……別にいいけど。


「……少し興奮してしまったね。とにかく私は君に興味があるということだけは覚えておいてくれ。もうゴーレムについては大丈夫みたいだし、次は死霊魔法についてやっていこうか」


 おぉ、雰囲気が元に戻ったな。仮面で顔が見えないけれど仮面に隠れていない耳は僅かに赤みを帯びているし興奮していたのは本当なんだろ。ちょっと怖かったけどな……。

 次は死霊魔法について教えてくれるらしいし、気を取り直してモチベーションを上げていかないとな。


「それじゃあ教えていくよ。死霊魔法の特徴は魂の操作だよ。自分の体に憑依させるも良し、依代を用意して眷属にするのよ良し、という感じだね。君の場合は依代以外の選択肢は無いよ」


「それはどうでもいい。依代に憑依させる際にはどうしたら良い?」


「そう急かさないでくれよ。まずは君にとってどうでも良い、そこら辺のゴミと同じ価値の魂から練習していこう。腐る程あるから失敗してもいいよ」


 ……急に毒舌になったな。そんなに嫌いなのかその魂は。触れたらやばそうだしスルーしとこう。ラプラスの話的に失敗したら魂に何かしらの影響がありそうだし失敗し放題なのは嬉しいな。


「助かる。少しでも失敗するリスクは低い方が良いからな。確かめるが本当にその魂で練習していいんだな?」


「私は気にしないよ。もしも気にする者がいたとしても私には関係がない者だろうね」


 含みのある言い方だなぁ。完全に関係がない訳がないのに無表情で無関係とか言うとか本当にそいつが嫌いなのかよ……。


「……分かった。それじゃあ練習させてもらう。依代はゴーレムで良いよな?」


「私は構わないよ。私が教えるのは魂の定着だからね。実際依代はなんでも良いんだよ。ただ、人間の魂は人間の体に定着しやすいというだけだよ」


 なんでもいいのか……。人間の体は定着しやすいんだな。だけどゴーレムの方が頑丈だし、修復できるから多少面倒でもゴーレムの方が良いだろ。


「それじゃあ始めよう。練習に使っていい魂はどこにあるんだ?」


「あぁ、それなら私のアイテムボックスという異空間にあるよ。君は私の探知をコピーしているから死霊魔法を使わなくとも認識できるし出すよ」


 ラプラスは魔法を発動させると空中に手を突き出した。するとドプリと空中に波紋状に波ができ、ラプラスの腕が肘辺りまで飲み込まれた。


「なっ……。何してんだよ」


「少し待ってくれよ。今取り出すから……」


 そう言ったラプラスはしばらく何かをさがすように腕を動かすと勢いよく引き抜いた。その手には白い霊魂のような物が握られていた。


「どうやら見えるみたいだね。スキルのレベルが足りないかと思ったけど大丈夫だったみたいだね。この半月でそこまでレベルを上げれるなんて凄いじゃないか」


「……そうか。それでそれが魂なのか?触れているしあまり実感が無いんだが」


「心配しなくていいよ。触れているのは死霊魔法を応用しているだけだからね。試しに君も触ってみなよ」


 本当かよ。特に魔法を使った気配はなかったし半透明という訳でもないからなぁ……。


 俺はラプラスの持っている魂に手を伸ばした。すると今まで実体があるようにくっきりと見えていたが、俺が触れようとすると半透明になり俺の手がすり抜けた。


「……本当だ。それじゃあラプラスはどうやって触ってるんだ?」


「私は体内の魔力を直接魔法陣なしで使っているんだよ。これは魔力と言うよりは妖力に近いね。霊体を掴む時以外には身体強化とかに使えたりするよ」


 魔法陣が必要ないのか……。だけどどうやって魔法陣無しで魔法を発動してるんだよ。俺も試して見たが、魔法を発動させようするとその過程でどうしても魔法陣が必要になるんだが。


「妖力での身体強化は体内にしか及ばないよ。魔法の方が強力だし、私も霊に触る時以外には使わないよ。触るための魔法陣の構成は教えるからね。妖力の行使については今度教えるよ」


「……分かった。」


 俺が了承するとラプラスは魔法陣を構築し始めた。完成した魔法陣を俺がコピーし終わると魔素に還元した。

 コピーした魔法陣を発動させ、魂を受け取った俺はゴーレムに向かって死霊魔法を発動させ手に持っている魂を定着させようとした。事前にラプラスに魔法陣の構成は教えて貰ったので定着自体は無事に終わった。


「何用ですか。マイマスター」


 魂を定着させたゴーレムはバキバキと音を鳴らしどんどんと縮んでいった。岩だった筈の表面は次第に人の肌のように変化していき、変化が止まるとそこにはイケメンがいた。

 そのイケメンは俺を認識すると膝を地面につき、頭を垂れた。


「どうやら君は死霊魔法が苦手みたいだね。精神に影響を与えて絶対服従してしまっているよ。君のお友達を定着させる時までには普通に定着できるようにしないとね。……そうだなぁ、あと2、3人練習すれば直るんじゃないかな?」


「貴様は黙れ。私はマスターに話しかけているのだ。私の魂を拘束し続けていた貴様には話しかけていない」


 俺が作ったゴーレム?アンデット?は俺に話しかけた時とは違い、乱暴な口調でラプラスに話しかけた。


「ちょっと静かにしててくれ」


「はっ」


「……なぁ、ラプラス。これ大丈夫か?1回鑑定して見るけどまともなんだよな」


「それはどういう意味だい?君に服従していることかい?それは君のせいだが、この口調は元々だよ」


 ……そうなのか。俺に対しては絶対服従しているから丁寧な口調だが、以前は誰に対しても乱暴な口調なんだな。

 別に何かしらのデメリットがある訳でもないしいいか。


「とりあえず鑑定しといてよ。自分の眷属についてはなるべく知っておいた方がいいと思うよ」


「……分かった。鑑定したら言うから新しい魂を用意しておいてくれ」


「分かってるよ。魂は私が選んでも良いんだよね?」


「大丈夫だ」


 よし、ラプラスから新しい魂を用意するという言質をとったし鑑定していこうかな。


 __________________


 種族:デビルリッチ


 名前:マクスウェル


 年齢:0


 レベル:47


 HP:4500/4500

 MP:4100/4100

 SP:0/0


 スキル:『気配感知LvMAX』『魔力回復速度LvMAX』『並列演算LvMAX』『思考加速LvMAX』『念話LvMAX』『魔力感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『身体強化魔法LvMAX』『森羅万象LvMAX』『闇魔法LvMAX』『空間魔法LvMAX』『自己再生LvMAX』『未来予測LvMAX』『アンデット創造Lv1』『物質創造LvMAX』『分解LvMAX』


 称号:『悪魔』『アンデット』『賢者』


 __________________


 は?俺よりも強いじゃん……。

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