スパルタ修行
久しぶりにステータスが変化したな。魂への直接攻撃ができるようになったしこれで攻撃して精神を壊したら生きてる人形ができるんじゃないか?
……いや、この話はやめよう。こんな事を考えるということはステータスが変化したことによる影響か?今回は体質が変化したから、こんな事を考えたのかもしれないな。
次にコピーした時に確かめておかないとな。
「準備もできたし、我から闇魔法と即死魔法を教えていく。もう言ったが、闇魔法は使用者にも影響が出てくる。これを対処するには耐性をつけるしかない。
なので初めの修行は我が貴様に後遺症が残らない程度に精神を掻き乱していく。それに抵抗し無効化することができるようになれば、闇魔法の使い方を教えてやる。」
神聖魔法と似たような修行方法だな。無効化だし、魔法陣をしっかり見て構成を理解すれば簡単に無効化できるだろう。
あとは闇魔法の耐性をつけるために闇魔法を受け続けなきゃな。というか何でこんな事をするんだ?
「何でそんな修行を最初にするんだ?」
「これが成功すれば闇魔法のデメリットの1つの使用者への影響が無くなるからだ。」
そういう事か。使いながら慣れていくのかと思っていたが、受けて耐性を付けるんだな。
「少しずつ強めていくが、精神が狂う前に中断するように我に言え。」
フルフルは俺に向かってそう忠告すると闇魔法を発動させて、俺の精神へと干渉し始めた。
ぐ……。意外と気持ち悪いな。例えるならば、自分の中に何か別の生き物が好き勝手に動いているような、大量のイモムシを見た時のような不快感があるな。
まだ耐えられるな。少し吐きそうになってきたがギリギリでレジストに成功しているようだな。
「初めてでこれだけ耐えるか。少し浮かれていると思っていたが違ったな。一段階強くするぞ。」
まだ、強くなるのかよっ。早くレジストの精度を高めねぇと吐く。どんどん、気持ち悪くなっていくし、1周回って吐いた方が楽になるのでは?
「うぷっ、げぇ。はぁ、はぁ。……まだ大丈夫。」
闇魔法が強くなりレジストできず、闇魔法による不快感から吐き出してしまったな。体がだるいのなんてこの体になってから一度もなく、吐いたばかりなので闇魔法がいっそう不快に感じるな。
《熟練度が一定に達しました。スキル『精神攻撃耐性』を獲得しました。》
よし、ナイスタイミングで耐性を獲得できたな。これが精神攻撃だったことに驚きだが、少しだけ魔法による不快感も和らいだし、胃の中の物を吐き出したので気持ち悪いだけだな。
我慢は得意だし、努力も好きなのでめげずに耐性を上げていかないとな。
その後はひたすら闇魔法を受けて耐性レベルを上げていった。その間ずっと不快感がありフルフルが闇魔法を強めていく度に比例して不快感も強くなった。
耐性レベルは4になり、フルフルが言うに最初の6倍近くの強さで闇魔法をかけているらしい。
「おい、我も心配になってくるほど顔が白く、魔力が澱んでいるぞ。一旦休憩することを勧めるが……。」
何かフルフルが言っているな。休む?そんな選択はない。思いついたのはついさっきだが、この耐性レベルを上げれば俺性格がこの体に引っ張られることも止められるかもしれないのだ。
多少目の前が真っ白になったり、フルフルが増えたりしたくらいで休むわけにはいかない。
「休まない。」
「そ、そうか。そこまでして強くなりたいのだな。それならばフラフラするな、我でも今の貴様は不気味だ。」
フラフラ?俺はしっかりと立っているぞ。それよりも、フルフルはどうやったら頭を股の下まで伸ばせるの?キリンみたいだな。
「貴様、失礼なことを考えていないか?」
「何言ってんろ?そんにゃこと言ってないよ?フルフルこしょ何言ってるにょ?……ふぅ。」
俺の意識はそこで途絶えた。
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「やはり、限界ではないか。魔力も闇魔法に影響されて真っ黒に澱んでいるぞ。……アマルテイア殿そこにいるのだろう?このドラゴンの魔力を浄化してくれぬか?」
「気づいていましたか。それにしても、はぁ……。私があなたに頼んで言うのも変ですがもっとあの子のことを気遣ってあげてください。」
「……?何故我が気遣っていないと?」
「この子はあなたに対抗心があるのです。だから闇魔法の修行をあなたに頼んだのですが、もし修行を中断しろと言えばこの子の中ではあなたに負けたことになるのでしょう。
だから、意識を失うまで続けたのです。」
「……そうですか。アマルテイア殿はこのドラゴンの魔力を浄化してください。我は少し考え事をしてきます。」
「分かりました。あなたが戻ってくるまではあの子のことを見ていましょう。」
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目が覚めると何故かアマルテイアがいた。あれ、今回の修行ってフルフルが教えるんだよな?何でアマルテイアがここにいるんだ?
体も修行中よりも軽いし、不快な気分もない。修行していた時が夢のようだ。
「よく頑張りましたね。私がここにいることに疑問を持っているようですが、私はあなたの為に来たんですよ?
今回の修行では精神が淀みます。それを私が完全にあなたに定着する前に浄化し、あなたが狂うのを防いでいるのです。」
えっ。つまり、アマルテイアがいなかったら俺は本能に従って暴れる魔物がそれ以上に酷くなっていたかもしれないのかよ。フルフルに言われて知っていたが、アマルテイアが言うとマジに聞こえるな。
アマルテイアには本当に感謝しないとな。いつか、この恩を返せるように頑張っていかないとな。
「それと、頑張ることはいいですがもっと自分のことを大事にしてください。 今回は本能が危険だと判断し意識を失ったようですが、次も成功する訳ではありません。
あなたはまだ、弱いです。この下層では負けることの方が多いので負けたことは気にしないでください。その後どうするかが大事なのです。」
……そうか。俺は修行を中断したらフルフルに敗けると思って意地を張っていたんだな。ケルベロスとのステータスの差を見た後だったから強くなることばかりを考えて自分の状態なんか気にしていなかったな。
「すみません。ですが、俺は早く強くなってこのダンジョンから出なくてはならないのです。自分の状態には今後気をつけますが、多少の無茶はこれからも繰り返します。」
「そうですか。私が以前育てていた者たちの中には、そうやって無茶をし続けて感覚が狂ってしまった者もいます。あなたがそうならないように願っています。」
そうだったのか。だけど、やっぱり俺は強くならなきゃいけない。しかし今後すこしだけ自分の状態を気遣っていくか。
「それでは私はやることがあるので、もう行きます。次はあなたが自分で浄化してください。やり方は既に教えていますので大丈夫です。」
用事があるのに来てくれたのかよ。なんかどんどんアマルテイアへの恩が増えている気がするな。全部返しきることができるかなぁ?
「分かりました、ありがとうございます。無事に修行を終わらせるので待っていてください。」
多少遅くなってでも無事にアマルテイアの元へと戻って修行しないとな。その時に、記憶は同じの別の人格とかだと洒落にならないのな。体調はともかく精神の方には気をつけていかないとな。
「……そうですね。あなたが戻ってくるのを待っていますよ。」
アマルテイアと別れた俺はフルフルに修行の続きをしてもらうために探していた。離れたところで考え込んでいたが俺は遠慮なく話しかけた。
「フルフル、さっきはすまなかった。変な意地を張って修行を中断させてしまった。もう一度俺に闇魔法の修行をさせてくれ。」
「何故貴様が謝るのだ?これは我が悪いのではないのか?アマルテイア殿に言われて考えていたが、どう考えても貴様の状態を放置していた我が悪くなるのだが。」
意外だ。種族が悪魔というのもあるが、こいつは他者への興味が低いやつだと思っていた。それなのにこんな風に考えれるんだな。
こいつへの考えを改めないとな。
「普通ならそうだろうが、今回は俺が俺のためにお前に頼んだのだ。それなのに、俺はお前に迷惑を掛けたから謝った。」
「……そうか。それで貴様は何故我のところに来たのだ?」
「謝るためと、修行を再開してもらう為に来た。」
そうだ。何事も早く始めた方がいいからな。ケルベロス達がその間暇だろうが、2匹で適当に組み合わせとけばいいだろう。
「もう始めるのか。いくらアマルテイア殿が精神を浄化したとしても、気力が戻るわけではない。貴様は自分で自分の状態を理解出来ているのか?」
なんだって、気力が戻らないだと?普通に俺は修行したいんだが、普通はそうなるのか?
まぁ、いいか。そもそも俺は世界神のせいで普通じゃないし、今更気にしてもしょうがないだろう。
「修行を再開していい。今度はさっきのようなヘマはしない。」
「そうか。それでは先程よりも少し弱めほ闇魔法をかけていくが、早く抵抗を完璧にするのだ。」
完璧にするのかよ。……とにかく耐性レベルを上げるのと、無効化のコツを掴むことに集中しつつ俺の状態も気にして時々休憩していかないとな。
こうやって考えるとやること多いな。しかも、同時にやっていかないといけないし大丈夫かこれ。……やらなきゃダメなんだけどな。
修行を再開した俺はまた闇魔法で精神に干渉され続けた。最初と違い耐性レベルがあったので魔法陣の構成を観察することに多く意識を割くことができた。
お陰で、理解でき耐性を付けるための最低限まで威力を落とし不快感を和らげることに成功した。
「成功したようだな。それを闇魔法を使用中にも無意識でできるようにしろ。我はそこまで面倒を見ることはできない。」
まぁ、フルフルは面倒見が良い奴だとこれまでの修行で分かっているしきっと使用中にもできるようになるまで修行してくれたのではないか?
「それではそこのケルベロス達を使って闇魔法を修行していく。既に眷属となっているようだし都合がいいので、支配権を強めるようにしろ。
イメージは精神には干渉せずに自分とケルベロスの繋がりを濃くする感じだ。……魔力で可視化させれば簡単だ。」
フルフルはそう言うとフルフルのケルベロスに向かって魔法を発動した。すると、フルフルとケルベロスとの間に糸のような魔力が現れた。
これがフルフルの言っていた繋がりというものなのか?これに干渉して繋がりを強めていけば良いんだな。
魔法陣を真似してやるか。フルフルは悪魔で精神が影響されないからそれに抵抗するための作りになっていない。しっかりと抵抗するように修正しておかないとな。……これを全ての闇魔法に組み込まないといけないのか。
ケルベロスとの繋がりを可視化させた俺は、精神に干渉しない構成にした『テイム』の魔法を慎重にかけていった。何回か魔法陣の構成を変更していくと、少しだけだがケルベロスの存在が近くに感じられるようになった。
可視化した繋がりを見てみると僅かに濃くなっていた。
なるほど、この魔法の支配権のようなものを強めることができれば繋がりが濃くなるんだな。つまり繋がりとは俺の意思ががケルベロスへとどれだけ影響するか、ということなのだろう。
少し違うが簡単に言うと、仲が良くなるということだ。どうすれば繋がりが濃くなるのか分かったし、どんどん強めていくか。
俺はケルベロスへと魔法をかけ続け、順調に繋がりを濃くしていき最終的にケルベロスの状態が手に取るように把握できるようになった。
「ふむ、もうここまで繋がりを濃くしたか。これを濃く、強くしていくことによって他人に奪われるリスクが減る。精神を弄るかは貴様次第だが、眷属にはこの処置を必ずしておけ。」
へぇ、繋がりを強くしていく度にケルベロス達の存在が近くに感じられるようになっていたのは、どんどん自分のものとして支配権を強めていたからなのか。
「とにかく、闇魔法の基礎は教えたので次は即死魔法の修行に入っていく。闇魔法を敵に使いたいのなら背後から気づかれずに使うか、妨害されぬ内に発動できるように貴様で練習しておけ。」
もう終わりなのか。……仕方ない。時間を見つけては闇魔法の練習をしておくか。
とりあえず次は即死魔法だ。失敗したら死ぬらしいので完璧な制御をできるようにしておかないとな。




