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第40話 一角族の長

 『いたぞ! あそこだ!!』


 謎のお姉さんが言っていた怪しい奴らだろうか、数人の一角族がここに居る彼女に向かって走って来た。


 「あの・・・、彼女が何かしたんですか?」


 俺はとりあえず穏便に済ませられないかと思い、先ずは理由を聞けないかと試みる。


 「あん? 何だあんちゃん。 関係ない奴は退いてろ。 怪我すんぞ?」


 すると、テレビドラマ等でいそうな、チンピラっぽい応答が返って来た。


 「あの~、もうちょっと穏便に・・・」


 俺が苦笑いを浮かべながらもそう言って交渉を持ちかけようとした時。


 「おぉ? こいつ色んな種族の綺麗どころ連れてんぞ。 迷惑料としてこいつら貰っていくか。」


 男が何気無く言い放った、エメリィ達を危険に追いやる様な言葉によって、俺のこめかみにマンガやアニメでよく表現される様な、怒りマークがピキッと発現した様な気がした。

 

 「あ~・・・。 カイト、殺しちゃったらダメだからね? 私からのお願い。」


 そんな魁人の様子を、傍で見ていたエメリィは、魁人の後姿を見ながら、背に向けて優しく言葉を投げ掛ける。


 この時、エメリィの脳裏にはオークに襲われそうになった時の記憶が蘇っていた。あの時魁人はエメリィ達を守り、そして怒りのままに反撃した。あの時は強靭な肉体を持つオークだったので、殺さずに済んだが、今の相手は普通の人とほぼ変わらない肉体だ。魁人が全力で攻撃してしまっては死にかねない。いや、確実に死んでしまう。


 「・・・。 分かった・・・。 ふぅぅぅ・・・。」


 出来るだけ手加減出来る様に、心を落ち着けようと試みる。


 「あん? 何だっあっ!」

 ピンッ。

 ゴッ! ドサッ。


 「・・・。」


 何かを問おうとしたチンピラの1人が、急に吹き飛び、物言わなくなった。魁人の放った攻撃により気絶したのだ。


 「す、すげぇ・・・。」


 この場でこの魁人の攻撃に気付いたのは、1人驚いていたルビアルカだけだった。ルビアルカは高い身体能力を持っており、加えて動体視力も良いため見えていた様だ。


 「な、何をしやがったてめぇ!?」


 「圧縮した空気の粒を勢い良く飛ばしただけ。 デコピンで。」


 「デ、デコ・・・、何だって?」

 

 ピンッ。

 ゴッ! ドサッ。


 「・・・。」


 「ほらね?」


 こうして、再び魁人の放った攻撃によって、2人目が倒れた。


 『ひぃぃぃぃぃ。』


 良く分からないまま、次々と倒れる仲間を見ていたチンピラ達は、皆恐怖に慄く。


 「お兄ちゃんがこんなに怒ってるの。」

 「初めて見たかも・・・。」

 

 ククルとクルルが魁人の様子に少し戸惑いを見せている。


 「カイトは自分の事についてはほとんど怒ったりしない・・・。 けど、怒るときはいっつも私達の誰かのため・・・。 ホント、キミは優しいんだからなぁ。」


 エメリィは愛おしそうに魁人を見ながら、ククルとクルルに魁人が怒る理由を一人呟く様に教える。


 「ちょ、ちょぉぉぉっと待って、お兄さん! 悪かった! 私達が悪かったからもう許してぇぇ!」


 急に謎のお姉さんが俺に抱き付き、止める様に懇願してきた。


 「お、長危ないですよ! お逃げ下さい!」


 チンピラも急に丁寧な言葉遣いに変えて、謎のお姉さんを止めようとする。


 『・・・・・・。』

 『えっ!?』


 『お、長ぁぁぁぁぁぁ!?』


 そんなチンピラの何気ない一言から驚いた俺達は、皆一斉に声を上げた。


 「ど、どうも~・・・。」


 衝撃的な事実を知る事になった魁人達。意外な方向に話が進んだ事で、魁人はすっかり毒気を抜かれ、怒りもどこかへ行ってしまったのだった。

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