第38話 キリンの街
白龍の子、《アルカメリル》が新たな旅の共に加わり、魁人達は《キリンの街》へ向かった。
そして街道を進んでいると、視界に広がる石垣の様な物で出来た外壁、そしてその向こうには建物が見えて来た。
「おぉ、大きいなこの街。 それに街って言うだけあって建物がいっぱい並んでる。」
これまではエルフの集落含め、家屋がぽつぽつと疎らに立っている所ばかりだったが、《キリンの街》は建物が整然と並んでいて、通路なども整備されている。建物は基本的に木造だが屋根などに石材が使われている物もある様だ。どことなく昔の日本にありそうな感じの和風っぽい外観である。
「む? お前達一体何の集団だ?」
外壁の門の前に立つ門番らしき男の視界に入ったのだろう。俺達に気付いた門番らしく男が立っていた場所から、一歩前に出て質問してきた。
「俺達は《一角族》の長様に話があって、エルフの集落から来ました。 これ、《エメラルド=フィ=トワイライト》さんより仲介の手紙も持たせてもらっているので、街に入れてもらっても良いですか?」
「あ、ついでにこちらは、その娘さんのエメリィ。」
俺が手で紹介を促す様なジェスチャーを加えて、エメリィを紹介した。
「ついでに娘です。」
そして一歩前に出て堂々たる態度でエメリィは口添えをしてくれたが、全く何の捻りも無く直球の言葉だった。
「ついでで良いのか・・・、エメ・・・。」
そう言ったエメリィに、ルビアルカが苦笑いを浮かべている。
「分かった。 この手紙も本物の様だし、お前達が街に入ることを許可しよう。」
「あっ、1つだけ・・・。 長様は普段何所におられますか?」
「長はこの門から中央通りを真っすぐ行った所のあの大きな屋敷だ。 屋敷の門に護衛が立っているから、その者にさっきの手紙を見せると良い。 ただし、くれぐれも問題は起こすなよ。」
「ありがとうございます。」
こうして入街に必要な質疑応答を終え、俺達は《キリンの街》入って行った。
ガヤガヤガヤ。 ガヤガヤガヤ。
「おぉ~、一番多いのは《一角族》だけど色んな種族もいるな~。 エルフもいるし、見たことない種族も幾つかいる。 市っぽいのもあるし、何か楽しそうな街だ。」
頭に一本の尖った角を持つ人、それが《一角族》だ。見た目は《人族》とほとんど同じで、違いは角があるかどうか。稀に角に加え、目が蛇の様な目を持っている者、体格が非常に大きい者もいる。
「この街は《ルミリア大陸》で唯一の街であり、最も大きな街なんですよ、カイト様。 ここは大陸の北北西辺りにあって海に面しているので、他の大陸間での船の往来が出来る港があるんです。 ですから、港町と言っても良いかもしれませんね。」
リリィが俺の左肩に乗って丁寧にこの街について説明してくれる。
ちなみに事前に静かにしておく様に言っておいたアルカメリルは、右肩に止まって大人しくしてくれている。どうやら龍族は非情に賢く、生まれたばかりの子龍でも、人の言葉をある程度理解している節がある様だ。
「先ず長に会って、これまでの報告とお詫びをしたら、もうちょっと街を見てみようか、皆。」
『賛成~!』
皆、余り大きな街に赴く事が無いのだろう、何だか楽しそうだ。
「よし、じゃあ・・・」
そう言って先を行こうとした時。
「わぁっ! 退いて退いて~!」
何所からか女性の声が聞こえて来た。
「あれ?」
声の出所をキョロキョロと探して見るが、周りにはそれらしい女性は見当たらない。
「退いて~!!」
再度声が聞こえ、今度ははっきりと声の出所が分かった。建物の屋根の方からだった。
『あっ!!』
否、正確には顔を上げたすぐ先、もう目と鼻の先に女性が迫っていた。それに気づいた俺と落ちて来た女性はほぼ同時に声を上げる。
俺は咄嗟に、肩に座っていたリリィとアルカメリルを、それぞれ左右の手で軽く掴み、両腕をそれぞれ伸ばして1人と1匹をぶつからない様に避難させた。
ポフンッ。
「ぶっ!」
「あっ、んっ。」
そうして俺は両腕を伸ばしたまま顔で女性を受け止め、女性は俺の顔に腰辺りで抱き付く様に掴まっている。
『・・・・・・。』
それを見ていた他の女性陣は、皆呆気に取られている様だ。
「カ、カイト~! な、何か面白い事になってるぞ! あはははは!」
『ぷっ!』
『あははははは!!!』
そんな魁人の様子を見ていたルビアルカが、魁人達を指差して笑い出すと、女性陣だけでなく、事の顛末を見ていた他の通行人も笑い出してしまうのであった。




