表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋 大宇宙堂  作者: ヨネ@精霊王
八章 ドリル少女は引っ越したい!?
92/125

91 一人暮らしの理由


 俺がチョイスした服装。それはウルルのお胸を強調する体のラインにフィットした縦セーターと、健康的なおみ足をこれまた強調するデニムのショートパンツだった。勿論、頭のドリルの隠すためにニット帽もちゃんと用意してある。しかも二本のドリルの突起をより隠すために猫耳風のニット帽である。


「どうかなぁ? 似合っとるかなぁ?」


 ウルルは露出された太ももの辺りを摩りながら、心配そうにこちらをうかがっている。

 俺はと言えば答えを返すことが出来ずに、こぼれそうになる涙をこらえていた。そう、感涙すら覚えていたのである。俺はこの時生まれて初めて、女の子に洋服を貢ぐ男の気持ちを理解した。なるほど、自分好みのスタイルに女の子をコーディネートする、それがこれほどまでに感動的なことだったとは、俺は今の今まで知らなかった。

 『ほらほら見てください! 俺の選んだ服を着たウルルはこんなにも可愛いですよ! ほらほらほらほらあああああああ!』と、町内中に大声で叫び、さらには『祭りだ! 祭りだ! ワッショイワッショイ!』と、ウルルをお神輿に乗せて練り歩いてやりたいくらい、俺は感動に涙していたのだ。


「どうしたん黙って? なぁなぁ、何か言うてよー!」


 ウルルは返答をもらえないで些かふくれっ面だった。

 その言葉に我に返った俺は、脳内パレードを中止させ、親指をグーッ! と突き立てて満面の笑みをしてみせる。


「モチのロンで似合ってる! これを似合ってないっていうやつが居たら連れてこい! 俺が正座させて説教してやる!


「ほんと! 良かったぁ」


 ウルルはホッと胸をなでおろし、顔をクシャクシャにして全身全霊で喜んでいる。どうやら、俺の返事を聞くまで本当に心配だったようだ。今まで地下帝国で暮らしている間、あのパーカーしか着ることがなかったのだ、他の服を着た自分がどんな感じになるのか、わからなかったに違いない。


「うちもすごーい気に入ったよ!」


 ウルルはセーターの袖先をつまんでクルリと一回転をする。そして両手でピースサインをして俺にウィンクをしてみせた。

 なんだろうこの胸のときめきは、これは恋とは違う。この感情は何かを慈しむ心にきっと似ている。

そう、ウルルが妹だったならばきっと溺愛したに違いない。


「あの、これ全部買いますんで、このまま着て帰ってもいいですか?」


 俺は今までのやり取りを遠目からニヤニヤして見ていた女店員に尋ねる。


「はい、よろしいですよ。とってもお似合いですものね」


 このお似合いの部分が、洋服にかかっているのか、俺とウルルにかかっているのか、それともその両方なのか、まぁ今のところそれはどうでも良かった。

 

「そうだ! さらにこれも!」


 俺はもう一点を追加購入する。それは……ニーソックスだった。ニーソックスとショートパンツによる絶対領域、これは必要不可欠なのだ! 

 こうして、タイトな縦セーターに、デニムのショートパンツ、ニーソックス、頭には猫耳ニット帽を装備して可愛さの数値をアップさせたウルルが誕生したのである。

 

「ありがとうございましたー」


 女店員に見送られて俺とウルルは店をあとにした。

 財布の中身はかなり軽くなってしまったが、そんなものは嬉しそうなウルルの顔を見られたことに比べれば大した事ではない。

 商店街をまるで踊るようにステップを踏んで歩くウルル。俺はその姿を見ているだけで幸せな気分になれた。

 ところで、俺はウルルが今まで着ていたパーカーを袋入れてもらって持っているわけなのだが。大きな問題点に気がついてしまった。


――もしかすると、ウルルはノーブラなだけでなく、ノーパンだったのではないか!


 というトンデモナイ問題にである。

 確かにあのパーカーはサイズがかなり大きく下半身もすっぽり覆い隠していた。そのため、ウルルはスカートはもとよりショートパンツなどのものを身に着けていなかったのである。そしてこれは想像でしか無いのだが、パンツも履いていなかったのではないだろうか! おいおいおいおいおいおいおいおいおい、とると今までウルルはノーパンで飛び跳ねたりしていたことになる。なんて恐ろしい子なんだろうと思うと同時に、服を買ってあげて本当に良かったと心から思った。それと同時に、『あれ? 今もノーブラ、ノーパンなのは変わってないんじゃないか?』との疑問が浮上してくるわけなのだが、それはもう考えないことにしておく。


「あたらしーい、おようふくーっ♪ うれっれっしーなー♪」


 ウルルはスキップをしながら、子供の様に思ったことを素直に言葉に出しそれを歌い上げている。俺も釣られるようにスキップをして一緒に歌いたくなってしまいそうだった。が、俺にはやらなければならないことがあった。それは……ウルルをエロい視線から守ることである!!

 もとから可愛かったウルルであるが、俺のチョイスした装備を身につけることでその可愛さは天元突破してしまった。さらにはウルルのお胸パワーにより街を行く男子のエロい視線を受けかねないのだ。俺はそれから守る義務がある!

 こうして、スキップをしながら歌うウルルと、鋭い眼光で周りを威嚇する俺は、本来の目的であるアパート探しへと戻ったのだった。


 ……

 ……………

 ………………………


「駄目かぁ……」


 俺とウルルは公園のベンチに腰掛けてはうなだれていた。


 駅前商店街のありとあらゆる不動産屋を尋ねたのだが、身分証明書もない謎の地下帝国人を住まわせてくれるアパートは存在しなかった。それよりも不動産屋の親父連中がウルルをイヤラシイ目で見ないかの方に気がいっていたのは秘密だ。

 

「どうしよ……」


 元気っ子のウルルも、これだけの不動産屋をたらい回しにされれは、流石にしょんぼりモードである。

 

「どうしてそんなに地上世界で暮らしたいんだ?」


 俺は今更ながらの質問をぶつけた。ウルルは俺の命の恩人である。それ故に込み入った理由など聞くことなく依頼を受けていたわけだが、まだ年端もいかない女の子の一人暮らしとなれば、やはりちゃんとした理由を聞いておいたほうが良いと思ったのだ。


「んとなー。うちのおっちゃんたちが、地上世界は悪いとことやから滅ぼす言うてるんよ。でも、滅ぼすほど悪いところとは思わへんくてなー。そやから、うちが試しに暮らしてみてええところやったら、滅ぼすのやめてもらおうおもて……。あ、普通に可愛いお洋服とかもみてみたかったんやけどなー! 他にもおもしろいものいっぱいあるしー! それやのに滅ぼしたらあかへんと思うやん?」


 俺は思わずベンチからずり落ちた。

 まさか、まさかこんな壮大な理由が存在していたとは思いもよらなかったからである。普通に考えれば世間一般の女の子の一人暮らしの理由に、世界の命運をかけるようなものがあるわけもなく、そんな事を想像できる方がおかしいというものだ。本当に世の中ってやつは油断ができない……

 そう言えば、前にやってきた地下帝国の依頼人は地上世界侵略用の怪獣がどうのこうのと言っていた気がする。なるほど、このウルルが地上世界に対して下した評価によって、怪獣がこの地上に放たれると……。って、となると責任重大じゃねぇか!

 俺はずり落ちた身体を戻してベンチに座りなおすと、頭を抱え込んで唸り声を上げた。


「どないしたん?」


 ウルルの心配する声も今の俺には届かなかった。

 こうなれば、どうにかして地上世界の良さを知ってもらわなければならない。そのためには、安心して暮らせるん場所を提供しなければ……。しかし、今のままではアパートすら見つけられない。『うちを住まわせてくれへんような、優しくない地上世界なんか滅ぼしたったらええねん!』なんてことにすらなりかねない。絶対安全でウルルのような地下帝国人を住まわせてくれる場所……そんな都合の良い場所が……


「あった!」


 俺は勢いよくベンチの上に立ち上がり、大きな声を上げた。


「なんやー! びっくりしたわー!」


 ウルルは驚いて大きな胸の辺りを抑えていた。


「あったぞ! ウルルが安心して住むことの出来る場所が!」


「ほんま!」


「そう! オウ・サマ・キングダムだ!」


 オウ・サマ・キングダム。それはこの日本において唯一の独立国家。絶対不可侵領域である。そして、それを統治する物の王の名は、その名の通り『オウ・サマ』であり、発音はダンバインの主人公『ショウ・ザマ』と同じである。


「行くぞ! オウ・サマ・キングダムへ!」


「なんかようわからへんけど、行くぞー!」


 俺とウルルは二人揃って、ベンチの上でエイエイオー! と高々と拳を突き上げるのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ