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よろず屋 大宇宙堂  作者: ヨネ@精霊王
六章 守の秘密!?
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66 ぼよんむにゅ

「いますぐデータを取りましょう。こんな貴重なデータそうそう取れるものじゃないわ!!」


 眼鏡の奥に光る眼は赤い宝石のように輝き、今にも周囲を燃やし尽くしてしまいそうに思えた。いやまて、何だこれ本当に焦げ臭いんだが……。あれ、これ比喩表現じゃなくて本当に何か燃えてるんじゃねぇか?

 俺はクンクンと犬のように臭いのもとを探した。が、そんなことをする必要すらなかった。赤炎さんのすぐ後ろでソレは煙を上げていたからだ。


「赤炎さん! あなたのノートパソコンから火が出てるんですけど!」


 どうやら俺からの異常極まりないデータを処理できなくなったノートパソコンが熱暴走を起こ

し、遂には発火に至ったようだ。


「そんなの気にしないわ。今大事なのはデータを取ることなのよ!」


 赤炎さんは俺の言葉に振り向くことすらせずに、両手の指をまるで昆虫の足のようにワシャワシャと動かしながら、穢れを知らない無垢な子供の姿になった俺に迫ってくる。


「いやいや、そのデータを取るのに、パソコンが必要なんじゃないんですか? ってかね、このまま家事になったら俺が困っちゃうんですけど。大家さんに怒られちゃんですけど!」


 と、困り顔でそこまで言ってみたが、俺はこよなく愛する大家の『藤宮神狩ふじみやかがり』に怒られる状況を頭の中で描いてみた。


『もぉ〜まもるくん、駄目じゃない。メッ! だよ?』


 スーパーモデルのスタイルに母性たっぷりの大きなおっぱいを持つ神狩かがりさんの甘い声、そして子供をあやすようにコツンと頭をこづいてくるシーンを想像して、俺の子供下半身は元気になりかけてしまいそうになった。

 

「うーん、それはそれでありだな」


 と、俺は目元と口元を蕩けさせてしまう。が、それではいけない。このビルに被害を出すってことは、神狩さんを困らせることになるのは間違いないのだ。それは決してやっていいことではない。ただでさえ家賃の支払いを遅らせたりで迷惑をかけているのだから。

 

「とりあえず、この火元であるノートパソコンをぉぉぉぉ!」


 俺はノートパソコンに向け勢いよくジャンプ……しようとしてその場でもんどり打ってずっこけた。なぜならば、俺の今の服は体格が変化したことでダボダボになってしまっているからだ。そのことを考えずにいきなりジャンプなんてしたもんだから、そりゃ何ていうか……ズボンがずり落ちて……ついでにパンツもずり落ちて……色々なものが出てしまったではないか!


「やべぇ!」


 俺は大慌てでずり落ちたズボンとパンツを掴むと恥部を覆い隠した。


『見られた? 見られたのか? 赤炎さんに俺の子供になってしまったオティンティンを見られてしまったのか!?』


 しかし、その心配は意味をなさなかった。今の赤炎さんの目には俺は人間として映ることなどなく、ただの貴重な実験サンプルとしか見えていないのだから。


「まずは、あの実験を試してみて……いやいや、その前に生体サンプルを採取して……」


 ブツブツと呟きながら、両手の指がそろばんを弾くように何かしらの計算をしているようだった。勿論、視線は俺の下半身などに向けられていない。それどころか真正面にいるというのに、きっと俺のことなど眼中にないだろう。あるのは俺のデータのみ。

 そうこうしているうちに、ノートパソコンは完全にオーバーヒートし『ボン』と小気味いい音を出して爆発した。幸いその爆発は大した規模ではなく、火事に至ることはなかった。が、赤炎さんを正気に戻すのに役立ってくれた。


「はっ!? 私は一体何を!?」


 ここはどこ? 私は誰? と言わんばかりに、オロオロと周囲を見回すわざとらしい真似事をしてみせたあと、これまた取り繕うように咳払いを一つすると、理性的な瞳がやっと戻ってきてくれた。

 

「しかし、この薬の効果は……。確かに体内を正常にするために遺伝子配列を強制的に変化させるように仕向けてはいたけれど……。これほどの肉体的変化をもたらすなんてありえないわ」


「おい! 今なんて言った! 遺伝子配列を強制的にとか、とんでもないこと言わなかったか!! ってか、間違いなく成分を二億倍にしたせいだろ!」


 わかってはいることだが、俺の言葉は赤炎さんには届かない。きっと自分にとって都合の悪い言葉は聞こえないように設定されている都合の良い耳なのだろう。

 

「ねぇ、もとに戻るんですよね? 時間が立って薬の効果が切れたら戻るとか、解毒剤があるとかそういう感じなんですよね?」


「え?」


 赤炎さんはすっとぼけた声を出した。


「まさか……」


 嫌な予感がした。嫌な予感しかしなかった。嫌な予感が宇宙並みに膨張してビックバンを起こしてしまいそうだった。


「治せないんですか!!」


 俺は思わず赤炎さんの胸ぐらを掴もうとしたが、縮んでしまった身長のせいで手は胸ぐらより下……そうつまり、おっぱいを掴んでしまっていた!!


 ぼよん


 世界で一番響きの良い効果音が俺の心の耳には聞こえた。

 そして手には……


 むにゅ


 世界で最高の感触が伝わってきた。

 

『俺はいま子供になっているのだから、小学生なのだから、これくらいは犯罪ではない。多分』


 そんな考えが頭の中をよぎった。それ故に、事故でついつい胸を掴んでしまった……だけですまさずに、更に追い打ちをするように。


 ぼよんぼよん、むにゅむにゅ♪


 と、揉みしだいてしまったのだ。さらにリズムを付けるかのように、ぼよ〜んむにゅ〜ん、ぼよむにゅ〜ん♪ と緩急をつけて揉んだりもした。幸せだった、楽しかった、今ならどんなことも許せそうな気がした。


「堪能しましたか?」


「え?」


 俺がおっぱいを揉む手を止め、顔をあげるとそこには営業スマイルで完全に凝り固まった赤炎さんの顔があった。

 

「契約書に命の保証はありませんとは書いておきましたが、流石にこのような事態になるとは思っておりませんでしたので、私の胸で済ませてくれるなら安いものですわ」


 これであなたは何一つ文句を言わずに、わたしの実験動物よ。と、瞳が雄弁に語っていた。つまり、俺は至福の時間を得るのと引き換えに、命の取引をしてしまったことになる。

 

「そして、改めて質問に答えさせてもらいます。時間経過でこの薬の効果は切れません。そして解毒剤はどざいません。あしからず」


 赤炎さんは、胸を掴んだままフリーズしてしまっている俺の手を払いに退けると、冷酷に言い放つのだった。

 


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