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よろず屋 大宇宙堂  作者: ヨネ@精霊王
四章 幼女でママで神様で!?
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28 藤宮神狩。



「急に隠された力でも覚醒しねぇかなぁ……」


 他人が見たら人間失格の烙印を余裕で押されてしまうような発言をしながら、俺は事務所のソファーに寝転がっていた。

 

「できればかねを楽に稼げる力が良いな」


 炎を操る力とか、重力を操る力とか、そういうのに憧れる時代はとっくの昔に終わった。今は現実的に金が欲しいのだ。


「手っ取り早くきんを生み出せる力とかがいいなぁ……。うん、きんは相場が安定してるし、全世界共通の価値があるからな」


 今日から錬金術師にでも転職しようかと、わりと真面目に考え出してしまうほどに、俺は貧乏だった。

 アイドルのマネージャーの仕事を途中で降りたことにより、発生した違約金は思いの外高額で、おれのなけなしの貯金残高は完全に底をついてしまっていたのだ。

 このままでは、ここの家賃が払えないだけでなく、飯を食うことすら出来なくなってしまう。

 悲しいことに、人間という生き物は、ご飯を食べないと死んでしまうように作られているのだ。全くもって欠陥品である。

 そうそう、結成されたアイドルユニットがあれからどうなったかというと……。


 驚くなかれ、大人気となっているのだ!


 まぁ綾小路桜あやのこうじさくらは、道行く人がみな振り返るような美少女であるわけだし、ベルのあざと可愛さは世界を狙えるレベルであるのだから、人気になるのは当然なのだが、あの聖ヱルトリウム女学園ことヱルすらも人気となっているのだから、世の中本当に油断ができない。

 もう今更、不思議に思うのもめんどくさくてやめてしまっているが、どうやってあのヱルが収録スタジオの中に入れているのかは永遠の謎である。

 今もテレビをつけると、若者に人気の音楽番組でベルたちのユニットが歌っているわけなのだが、その姿は異様としか言い表せない。

 と言うか、普通の人間は誰がどう見ても二人グループとしか認識できないはずだ。何故ならば、どれだけカメラをひいても、ヱルの姿はごく一部分しか映らないのだから!

 もはや背景の一つと捉えられてもおかしくないレベルだと言うのに、驚くなかれ何とヱルのファンも出来ているというのだ。

 そう言えば廃墟マニアだの、工場マニアだの、変わったマニアがいたりするのだから、学校マニアがいたとしておかしくないのかもしれない。あの校舎の作りがたまらないとか、校庭の曲線美がそそるだの、俺からしてみれば常軌を逸している楽しみ方をしているのだろうか?

 とは言え、ヱルもただ背景として突っ立っているわけではない。構内にある放送器具や、チャイムなどをリズムカルに鳴らしては、演奏に加わっているのだ。

 

「大したもんだよ」


 俺は素直に賛辞の言葉をテレビ画面の中の三人に向けて送った。

 とは言え、今は他人を褒めている場合ではない、どうにかして金を作らねばならないのだ。

 もういっそのこと、このよろず屋をたたんで、フリーターにもでもなってやろうか……。と思っては見たものの、そうするとタイトルが『よろず屋 大宇宙堂』ではなくなってしまうので、それは無理だ。

 と、頭を悩ませていると玄関のチャイムの音が響いた。

 

――もしや、仕事の依頼人では!


 俺はソファーから飛び起きると、つんのめりかねながらも猛ダッシュで玄関へと向かう。そして玄関のドアを開けるとそこにいたのは……。


「やっほー。お元気ー?」


 山に登ったわけでもないのに『やっほー』などという、脳天気な挨拶を第一声でしかけてくる。こんな人物は、俺の知る限り一人しかいない。


「お、大家さん……」


 玄関先に立っていたのは、大家であり、藤宮花火ふじみやはなびの母親でもある『藤宮神狩ふじみやかがり』さんだった。

 さて初登場、藤宮神狩さんの風貌はと言うと……。腰にまでかかる長い赤みがかったロングヘヤーに、大人の男性である俺が見上げなければならないくらいの高身長の持ち主である。

 かと言ってガッチリとしてガタイが良いわけではない。海外のスーパーモデルそこのけのスレンダーでありながら、女性的な部分にはきっちりと弾力のあるお肉がついているという、日本人離れしたスタイルの持ち主なのである。

 

――ああ、この限りなく長い足、その魅惑の太ももに挟まれたい……。そして踏まれたい!!


 こう思ってしまうのは、俺が変態だからではない。世の男ならばこう思ってしまうのは必然なほどの魅力を持っている女性なのだ。

 故に、俺は毎回神狩さんに会うたびに、見惚れてしまって数秒フリーズ状態に陥ってしまう。


「どしたの? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔して。食らっちゃったの豆鉄砲? それとも鳩になっちゃった? クルックー?」


 腰に手を当てて、鳩の羽を演出してみては、可愛らしく泣き真似をしてみせる。

 スーパーモデル並の容姿の持ち主でありながら、この陽気かつ屈託のない物言いいという、アンバランスさが更に魅力を掻き立てて……最高です! 

 正直、人妻でなければ今すぐにでも求婚したい。

 しかし、この人は一体何歳なのだろうか? 花火が十五だか十六歳なわけなのだから、早めの子供だとしても三十代半ばといったところだろうか? 三十代という言葉があまりにも似合わないルックスではあるが、母親であるという感覚は感じさせてくれる。それは、母性が溢れ出ているからだろうか。


――おっぱい飲みたい!! 


 おっと、危ない危ない欲望がダダ漏れになるところだったぜ


まもるくん」


 神狩さんは俺のことを下の名前で《くん》つけで呼んでくれる。これもまた何ていうか……こそばゆくなる感覚というか……気持ちいい!! 正直の神狩さんにこう呼ばれるの大好きです!


「な、何でしょうか?」


「口からヨダレたれてるんだけど?」


「はっ!? いや、これはそのおっぱいが……。いやそのなんでも」


「またお金なくてご飯食べれてなかったりするんじゃないの〜?」


「あ、あははははは」


 俺は笑ってごまかした。

 まさか、『あなたのおっぱいが飲みたくてヨダレを垂らしました!』とは口が裂けても言えやしない。


「そして、お金がないってことは……。今月の家賃はぁ……」


 陽気だがどこか迫力のある声が、俺の耳に迫ってきては、その音の伝わる鼓膜の振動に快感を感じた。

 

「あ、あのですね! 仕事のほうがお入りましたならば、すぐさまに家賃を払い奉るわけなんですけれども」


 しどろもどろとはこういうことを言うんだ! と言わんばかりに、俺の口調は滅茶苦茶だった。


「うふふふっ、そうだと思って……じゃーん! なんと今日はこの神狩さんがお仕事を持ってきてあげました!」


 そう言って神狩さんは、俺の前に一通の用紙を突き付けてくれた。

 

「こ、これは……」


 そこには『留守番役』の仕事の依頼内容が書かれていた。

 

「守くん、お金なさすぎて電話料金払ってないでしょ? だから、依頼人さん連絡取れなくて、うちのビルあてにファックスが届いてたのよ。それを神狩さんが持ってきてあげたってわけ。ね、神狩さん偉いでしょ?」


 そう言えばたしかに俺の電話は料金未納で止まっていた。そしてもうすぐ電気も止まるところだった。

 

「ありがとうございます!!」


 俺はその場で土下座した。


「やぁねぇ〜。そんなことしなくていいわよ〜」


 と、神狩さんは笑ったが、俺は土下座がしたかったのだ! ああ、神狩さんに土下座をする会館たるや……うーんたまらん! このまま踏みつけてくれないだろうか……くれないだろうなぁ。


「それじゃ、お仕事頑張ってね。んで、お金が入ったら……家賃よろしくね」


 そう言って神狩さんは去っていった。俺は神狩さんの姿が見えなくなるまで、その姿を焼き付けようと凝視し続け、さらには居なくなってからも暫くの間余韻を楽しむように、その空間を眺めていた。


「よし! 堪能した! 生きるエネルギーってやつを頂いた! しかし、花火にもあの素敵な魅力が一パーセントでもあればなぁ……」


 そして、ようやく俺は依頼書に目を通すことにしたのだった。

 そこに書かれていたのは……。

 

 


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