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-壊れていない世界-

*********


 アランがこのホテルを出てから、1週間が過ぎようとしていた。心配で落ち着かない私を北斗とリーは、代わる代わる宥めてアランの帰りを食糧と物資の調達やこの街の情報収集をしながら待ち続けていた。


「もう、1週間だよ! アランに何かあったのかもしれないわ!」

「大丈夫です。今回は長くなるかもしれないと、アランは言っていましたから」

「かなり中心部まで行くと言っていたからな! そんなにピリピリするなよ。オレたちもオレたちがやるべきことをして、アランの帰りを待つんだ!」


 こんな時は、やっぱり女の私よりも男たちのほうが落ち着いて色んなことを見据えて行動が出来るものなのね。要はまだまだ、私はお子ちゃまってことかもしれない。


「スマホが使えたら便利なのに……。連絡の取りようがないから、どうしようもないよね」

「確かに連絡を取る手段は限られてしまっていて不便を感じるね。チェリー……そろそろ、地下へ行ってみましょうか? アランが地下を通じて連絡を寄越しているかもしれないからね」

「地下へ?」


 リーがニッコリ笑いながら、私の手を取ると立ち上がって地下に住む吸血鬼たちのところへ向かった。


********


 地下へ入って行くと、フードを深く被った吸血鬼たちが私とリーに一斉に注目していた。


でもすぐに、吸血鬼たち全てをまとめている『伯爵』と呼ばれている銀髪で碧眼の綺麗な顔立ちをした30代くらいに見える男が私たちの前に立って微笑んでいた。


「そろそろ、来る頃だと思って待っていたんだ。アランからの報告では、どうやらあの組織のある中心部にアランは無事にたどり着いたみたいだね。組織の者たちと接触はしていないようだ」

「さすがアランですね。それで? 他に何か報告は?」

「大変なことがわかったんだ。奴らは電力を使えるようなんだよ!」

「電力ですって!?」


 二人の会話を黙って聞いていた私は、電力という言葉を耳にした瞬間に驚いて声をあげていた。


「ふふふ、驚いたでしょう? 私も初めは耳を疑ったからね。電力を奴らが所持しているなんて思いもしなかったよ」

「それは、能力者の力なのか?」

「いや! どうやら、原子力を使っているようだ!」


 核戦争で全てが壊れてしまったと思い込んでいた世界の中で、未だに電力を使って生活している人間たちがいたなんて……。このアランからの報告は私たちにかなりの衝撃を与えていた。


********


 私とリーは、地下を出て急いでホテルに戻ってこのことを北斗やユーチェンたちに知らせた。


「電力だと!? 奴らはそんなもん使ってやがるのか!! しかも、原子力だなんて……。どういうことなんだ!」

「これは、私の勝手な憶測なんだけどね。奴らが核戦争を仕掛けた張本人じゃないかと思うんだ」

「奴らが!?」


リーは、温かいココアを私たちに用意しながら、奴らに対するリーの見解を話してくれていた。


「私の見解が間違いで無かったとしたら……奴らが所持しているのは、電力だけでは済まないだろうね」

「何もかも、奴らの計画したことだとしたら……。奴らが意図的に能力者を造り出したことにもなるな!」

「……これが本当だとしたら、絶対に許せない!」


 沸き上がってくる怒りを必死に私は抑えながら、そっと私の横で震えているユーチェンの小さな手を自分の掌で包み込んでいた。


「あ、あのね。私が捕まっているときに男たちが確かに計画がどうとか、ショウグンがどうとかって話してた……」

「将軍? 奴らの親玉のことかも知れないな! 計画か……奴らは何を企んでいやがるんだ!」


 私たちが重苦しい空気の中で、話し込んでいたらホテルの割れた窓からカラスのルディーがバサバサと羽を羽ばたかせて入って来ていた。


********


 ルディーは、私たちの様子に少し目を丸くしていたけれども、すぐにボスからの報告を話し始めていた。


「BADさんからの組織に関しての報告なんですがね。奴らは、この上海だけじゃなくてですね……この大陸全体に自分たちの新たな世界を作り出そうとしているようだと組織に潜入している仲間たちから報告があったそうです」

「潜入出来たの!?」

「もともと仲間の中で、軍の兵士だった男たちがいたんですよ!」


 どうやら、ボスたちも奴らが電力を使えることを知ったようで本格的に私たちは、奴らの目的を探るために全力を尽くすことをお互いに決断するしかないようだった。


「あんまり危険なことはこの子たちを連れてやりたくないんですがね。仕方がありませんね」

「大丈夫だよ! オイラたちも何か役に立てるよ!」

「私も! 仲間だもん! なんだってするよ!」


 ユーチェンも琥太郎も明るく笑いながら、私の手をしっかりと握り締めて…奴らに対する闘志を口にしてくれていた。


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