三ツ鐘鳴りて
意思を強く示した直後の事だった。遠方から鐘の音がけたたましく鳴り響く。
カーン、カーン、カーンと三連打の後、一呼吸を入れてまた三連打。繰り返して鐘が鳴る。まるで警鐘を鳴らすように打たれた音色が、辺りを漂っていた空気を一変させる。
「な、なんだぁ!?」
「ああ、お前初めてだから知らないのか。『六厄災』戦開始前の予告の合図だよ。鐘が3回だから30分前の合図だな」
驚きの声を上げたプレイヤーに対して、説明する会話が耳に届く。どうやら鳴り響いた鐘は警鐘で合っていた。開戦が近づく知らせを受けて、周囲のプレイヤーは浮き足立ち始める。
「おっと、もうそんな時間か」
「まだ30分もあるじゃない」
「オジサン的にはもうなんだよねぇ。歳を重ねると時間が過ぎ去るのが早くて困るよまったく」
渋い表情を浮かべてボヤきながら、琥二郎は砥石を取り出した。
「さて、腹ごしらえは人が一杯で出来そうにないから、刀の手入れでもしておこうか。戦闘中にポッキリ折れでもしたら一大事だからねぇ。トミナ少年も、さっき折られた刀はちゃんと手入れしたかい?」
「え?あっ」
琥二郎に指摘されて思い出す。そういえば荊棘黄童子に【同田貫正国】を折られていたんだった。色々あってその事実がすっかり頭から抜け落ちていた。
【同田貫正国】を取り出して、鞘から刀身を引き抜く。時間が経過していたからか、ある程度修復は進んでいるが、刃先がすっかり欠けてしまっている。こんな状態ではとても戦闘に耐えられないだろう。
「オジサンの指摘で気づけてよかったねぇ。これで戦闘中に判明していたら、致命的なミスに繋がっていた所だったろう。……ま、その欠け具合なら自動修復でもギリギリ間に合いそうかな?『鍛冶屋』で直してもらった方が確実だろうけど」
そういえば時間経過以外に『鍛冶屋』で手早く修理する方法があると説明を受けたな。出来る事なら万全を期しておきたい。
「わかりました、鍛冶屋で直してもらってきます」
「あ、それならトミナ君、『鍛冶屋』の場所わからないでしょ?案内するよ」
「すみません、ありがとうございます」
「いいっていいって。『六厄災』との戦闘が始まったら私が出来る事はほとんどないから、これくらいはね!こっちだよ!ついてきて!」
案内を引き受けてくれたカルムの後ろ姿を追い、『鍛冶屋』へと向かった。到着して先で目に飛び込んできたのは、『鍛冶屋』と書かれた木の看板が掲げられた木造の平屋。平屋は入口が二箇所あり、どちらも待機列が伸びていた。




