それは、音もなく
足利照々は二刀を操り攻め立てる。紫電を纏う肉体が躍動する。絶え間ない猛攻の濁流が、荊棘黃童子を飲み込まんと襲い掛かる。
攻撃を止めない足利照々が同時に振りかぶった二本の刀が金棒を押し込み、荊棘黃童子の膝が地面に触れる。
「……オレに片膝をつけさせるたァ、油断ならねェな」
「わたしとしては両膝をつけるつもりだったのだけれど、そこは流石『六厄災』といったところかしら」
「ハッ!そりゃどうも!!」
「ッ!」
劣勢だった荊棘黃童子が押し返す。足利照々の刀が金棒に弾かれて宙を舞った。だが足利照々は動じない。すぐさま虚空から新たに刀を取り出すと、それを鞘から抜刀せずに荊棘黃童子の顔面へ投擲した。
「――ガッ!?~~ッ!オマエもかよッ!?」
「あら、ごめんなさい。手が滑ったわ」
右目付近に直撃し、荊棘黃童子が狼狽えている一瞬の内。足利照々は跳躍して宙に浮かぶ二刀を取り戻した。対する荊棘黃童子はぶつけられた右目を閉じながら、空中の足利照々を叩かんと、下から掬い上げるような一撃を放つ。
落下地点で受け止めるかのように迫る、荊棘黃童子のフルスイング。足利照々はその一撃に対して、身体を捻りながら右手の一刀で迎え打つ。刀と金棒がぶつかると、甲高い衝突音が炸裂した。
荊棘黃童子の振りの威力は衰えない。足利照々の身体はそのまま大振りの勢いに飲まれる――かに見えた。
「『刀篭流し』」
唱えた足利照々の動きが加速する。右手で受けた衝撃を推進力に変換するかのように、弾かれた右手が後ろに下がる勢いを利用し、足利照々の身体が翻る。それと同時に水色のエフェクトが足利照々の右手を伝い、両肩を経由して左手で握る一刀に集束する。
再び刀と金棒が激突。先程より遥かに大きな衝撃が発生し、空間が震えた。
「ッ!」
「やるじゃねェか!!」
足利照々の表情が僅かに歪む。荊棘黃童子は吼える。衝撃で反発した二人は距離を取る。
「だが、片手で受け止められるほど、オレの打撃はヤワじゃねェぞ」
足利照々の左手から刀が足元に落ちる。左手が小刻みに震えていた。そのわずかな隙を逃さず、荊棘黃童子は足利照々へと肉薄する。
迫る荊棘黃童子に対して、足利照々は右手で握り締めた刀を足利照々の足元へと投擲する。しかし荊棘黃童子はそれをあっさりと回避して、跳躍。一瞬で遥か頭上を取ると、月光を背に受けた状態で空中を蹴り急転落下。
「推し潰れな――――『圧壊』ッ!!」
金棒から黄金の闘気が溢れ、荊棘黃童子の動きが加速した。光芒をさしながら振り下ろされた鉄槌が、大地を抉る。衝撃が地面を這う。足元が震える。舞い上がる砂塵。
「……ま、こんな直線的な攻撃じゃあやられはしねェよな」
「……そうね、そんな単純な攻撃でやられるほど、弱くはないと自負しているわ」
体勢を崩しながらも、回避してみせた足利照々は膝をつかずに荊棘黃童子を睨み返す。形成された大穴の深さが、先程繰り出された一撃の威力を静かに物語っていた。
「オラ、しっかり立てよ。まだここからだろうが。もっとオレを愉しませろ」
荊棘黃童子は金棒を肩に担ぎ、立ち上がるように手で促す。足利照々は刀を取り出して、地面に突き刺して立ち上がる、その直後であった。
「荊棘黃」
「ゲッ」
「ッ!?」
両者の間に、額から二本の角を伸ばした赤髪の少年が姿を現した。




