表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第一話「死んで、気づいて、また死ぬかと思った」

はじめまして。

強くなって無双する話じゃないです。ざまぁもないです。

ラブコメ要素もほぼないです。それでも読んでくれる人に届けたいものがある。

世界って、文明って、本当にこの方向でいいのかなという、ちょっとした違和感。

それを、異世界という窓から覗いてみる話です。

ゆっくり、のんびり書いていきます。よろしくお願いします。

死ぬときって、もっと劇的なものだと思っていた。


走馬灯とか、後悔とか、愛する人の顔とか。そういうものが浮かんで、それで終わりだと思っていた。


でも実際は、ただ「あ、終わった」という感覚だけだった。


横断歩道の途中で、トラックが突っ込んできた。信号は青だった。私は何も悪くなかった。でもそれは関係なかった。世界はそういうふうにできている。理不尽に、何の前触れもなく、終わる。


名前は、桐島きりしま なぎ。二十四歳。特技なし。趣味は近所の公園の植物を眺めること。将来の夢は、なんとなく生きていること。


うん、我ながら地味だった。



気づいたら、土の上に倒れていた。


頬に当たる感触が、アスファルトじゃなかった。湿った、柔らかい土だった。草の匂いがした。それも、なんというか、普通じゃない草の匂いだった。公園の芝生とも、田舎の野原とも違う。もっと濃くて、古くて、生き物がたくさん重なったような匂い。


起き上がって、周りを見た。


森だった。


木が高かった。東京で見るような街路樹じゃない。幹の太さが私の両腕を広げたより大きい木が、何本も何本も、どこまでも続いている。空は木の枝と葉に覆われていて、その隙間から光が筋になって落ちてきていた。


「……ここ、どこだ」


声に出したら、少し落ち着いた。声は出た。体は動く。死んではいない、たぶん。


立ち上がって、自分の体を確認した。手、足、腹、顔。どこも痛くない。トラックに轢かれた感じが、どこにもない。服は死ぬ前と同じ、よれたグレーのパーカーとジーンズだった。


「転生、かな」


なんとなく、そういう言葉が浮かんだ。漫画やラノベで読んだことがある。死んで別の世界に生まれ変わる話。でもあれは大抵、神様が出てきて「チートスキルを授けよう」とか言うんじゃなかったか。


私には何も言ってきた人はいなかった。ただ気づいたら森の中にいた。


まあ、いい。



困ったのは、三分後だった。


森の奥から、何かが近づいてくる音がした。足音、いくつか。人間より重い何かの足音。


茂みが揺れて、出てきたのは、大きな灰色の狼だった。


狼、というか、狼に似た何か。肩の高さが私の胸くらいある。目が赤くて、知性みたいなものが宿っていた。その後ろに、同じような個体が二頭いた。


「あー」


逃げる間もなかった。足が固まった。


三頭の灰色の狼もどきが、私を囲んだ。低い唸り声が、腹に響いた。


これは食べられる、と思った。転生早々食べられる。それはさすがにひどい。


でも、なぜか。


私は怖くなかった。


いや、正確には怖かった。心臓はバクバクしていた。でも、その狼もどきたちを見ていると、なんか、怒りじゃないものを感じた。怯えとも違う。なんというか。


お腹が空いているんだな、という感覚。


それと、この森自体がおかしいという感覚。


「お腹、空いてるのか」


口から出た言葉に、自分でびっくりした。


狼もどきたちが、耳をぴくりと動かした。


「この森、食べ物が少ないんだろ。木が足りない。地面が乾いてる。あそこの川、水が少なくなってる」


気づいたら、見えていた。森の状態が。


川の水位が下がっていること。地面の水分が少ないこと。木の数が減っていること。それによって、ここに生きている動物たちの食べ物が足りなくなっていること。


一目で、わかった。


なんで分かるんだ、とは思った。でも分かった。


「ちょっと待ってくれ」


狼もどきたちは、なぜか待った。


私はしゃがんで、地面に手を当てた。


何をするつもりか自分でもわからなかった。ただ、この土が乾きすぎていることが気になって、なんとかしたかった。


手から、何かが出た。


熱くも冷たくもない、ただ「満ちる」感じの何か。地面に吸い込まれていった。


一分くらいして。


足元の地面が、少し湿った。ひびが入っていた土が、柔らかくなった。そこから、小さな草が、ゆっくりと顔を出した。


「あ」


狼もどきたちも見ていた。


その草が、ゆっくり伸びて、小さな白い花を咲かせた。


三頭の灰色の獣が、顔を近づけて、その花を嗅いだ。それから、なぜか、唸るのをやめた。


一頭が、私の手をぺろりと舐めた。


「……痛くないのか、私」


食べなかった。


なんで食べなかったのかは、私にも分からなかった。でも食べなかった。



その日から、私はその森に居着いた。


特に行く場所もなかった。この世界の言葉が分かるのか不安だったが、なぜか分かった。文字も読めた。これも転生補正というやつなのかもしれない。


やったことは、単純だった。


乾いた地面を湿らせた。川の流れを少し変えて、水が行き届かなかった場所に届くようにした。枯れた木の根元に何かを送り込んだら、新しい芽が出た。


それだけだった。


魔法なのかもしれない。でも魔法を使っている感じはしなかった。ただ、この世界の「ずれ」が分かって、それを少し直しているだけだった。


一週間後。


森の端に小さな集落があることに気づいた。人間の集落じゃなかった。耳が尖った、エルフに似た種族の人たちが、半壊した家に住んでいた。


その集落のお爺さんが、私の顔を見て、ひどく驚いた顔をして、こう言った。


「あなたは、魔王様ですか」


私は花を一本持っていた。さっき地面から咲かせた、白い小さな花。


「違います」


「でも、この森にことわりが戻ってきた。あなた以外に考えられない」


「花を咲かせただけですよ」


お爺さんは、深々と頭を下げた。


私は少し困って、持っていた花をお爺さんに渡した。


「よかったら、どうぞ」


それが、全ての始まりだった。

第一話、書きました。


最初から戦いはありません。チートで無双もありません。主人公の凪は、ただ花を咲かせただけです。


それでも魔王と呼ばれてしまう。人間側から見たら、森の秩序を取り戻すことは、自分たちの文明の拡大を妨げる「魔」に映るのかもしれません。


次話では、このエルフに似た種族の集落と、周辺の状況が少し見えてきます。凪がどういう力を持っているのか、本人も含めて、少しずつ分かっていく予定です。


読んでくださってありがとうございました。また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ