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いずれにせよ、俺の小銭入れとは住む世界が違うってことか

 仮想世界、『アテナイ』。



 ログインの真っ白い光が薄れると、重力に姿勢を崩しかける。


 未だに慣れない感覚だ。


 しばらくして、意識が身体に追いつく。



 足の裏に伝わるのは、硬い石畳の感触。


 少し歩けば、靴底が削れる節約精神に反する音。


(リアル過ぎて、現実と変わらないな)


 情報の価値もだ。


 相棒――エイドス。


 こいつの力を引き出すなら、今はとにかく動く必要がある。



 現実とここ。その間に生じているズレは、未だに埋められてはいない。


「散歩がてら、情報収集でもするか」


『了承しました』


 俺は街の真ん中へ、足を向けた。


 人混みが続く。誰もが疲れているように見えた。


 歩いていく。



 雑踏を抜け、視界が開ける。


 瞬間、それは現れた。


「……まるで、城だな……」


 言葉が漏れる。


 見上げる首が痛くなるほどの質量。巨大な布に覆われたその異形。


 建築様式を語る知識のない俺は、その威圧感に黙るしかない。



 しかしエイドスは違う。


『ギルド【金獅子の盾】の建設中拠点です。このエリアを統治する、文字通りの最大手です』


「とんでもないデカさだな。……どれだけの人間が動いているんだ……」


『視界内に106名。全体では最低でも600名超。その全てが、この建物のために動いています』


 600。


 その数字が持つ意味の重さに、気が遠くなりそうだ。


「……どんな奴らだ、その【金獅子の盾】ってのは……」


『この街、スタークの支配者であるとお考えください。多数の有力プレイヤーを抱え、この街の外にも影響力を持つギルドです』


「なるほどな。この化け物みたいな建物を建てられるわけだ」


 傲慢。


 そうとしか言えない規模の建築物。


 しかし、それが許される影響力があるというわけか。


「……だが、これだけデカければ無駄も多そうだな……」


『おっしゃる通りです』


 予想通りの答えだな。


『南西側の石材は、移動経路を0.8メートル占拠しております。管理の行き届かない部分が表に出ております。これは管理の甘さの露呈であると考えてよいでしょう』


「いずれにせよ、俺の小銭入れとは住む世界が違うってことか」


 自嘲気味に背を向けようとしたその時。


 背後で男の舌打ちが響いた。


「……クソが。またポーションが値上がりしてやがる。あの獅子の連中、また買い占めやがったな……」


 吐き捨てられた言葉。


 男は俺と目が合うと、逃げるように去っていった。


「エイドス。今の、やっぱり……」


『【金獅子の盾】には、素材の独占と価格操作の噂もあります。断定はできませんが、可能性はあると考えていいでしょう』


 現実と同じ。いや、少し露骨過ぎるか。


『また彼らは、私的に徴税を行っております。アテナイのスタート地点であるため、税を払えずにデスペナルティを覚悟で、街を去っていく者も多いようです』


「人間が集まれば、現実もゲームも変わらないってわけだ」


『肯定します。どちらも演算の元が人間の脳である以上、導き出される結果に大差はありません』


「……違いないな……」


 払う必要のない税金を取られたらたまったもんじゃない。


「じゃ、戻るか」


 俺は、早々にこの場を後にすることにした。


 こういった手合いの近くにはいないに限る。

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