3番目の婚約解消 55 戦いの狼煙
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早く4回目の婚約解消へ進みたい…m(_ _)m
セライアがコーション国にしばらく留まると決意してから直ぐ、アンジェリア達はオルソン公爵領へと戻るようにとの通達を受けた。
それは、王城でのカイル派とレオン派とのいざこざが毎日のように絶えず、国政が進まなくなったためであった。コーナー王女の捕縛で勢いを取り戻したオルソン公爵派を少しでも王都から離したいと、カイル派の貴族等がルーファスに陳情したのだ。
【オルソン公爵派がカイル王太子を認めないばかりに、国政が乱れている】ーーと。
「コーション国は、穏やかで自然がいっぱいだけれど、娯楽が少ないわよね?」
オルソン公爵領に戻ってきて数日後、セライア、アンジェリア姉妹とルルドは、オルソン公爵家の庭園で、気ままなティータイムを楽しんでいた。
と言うのも、王都から戻ってきたのは、サスティアル王族とガーランド王国のアンジェリア達、オルソン公爵夫人のダイアナ達であり、何とか理由を付けて、オルソン公爵とレオンは王城に残ることに成功したのだ。そして、少しでもアンジェリアのレオンへの心証を悪くすべく、エステリア国のアマリアも王城に留め置かれていた。
「この国難にあっても、いつでも、刺激を求めるセシーには脱帽するよ」
ルルドは、つまらないとぼやくセシリアに苦笑しながらも、暇潰しにでもと胸元から黒くて小さな水晶を取り出した。
「ーー? なあに? 占いでも、するの?」
セライアは面白い事が始まるのかと身をテーブルに乗りだし、食い入るように水晶見つめた。黒い水晶は、どことなく冷たさを放っており、アンジェリアは不安を感じる。
「セライアお姉さまは、サスティアル王族が占いなんてすると思うの? サスティアルの水晶と言えば、透視。そうでしょ? ルルド?」
黒く透き通った水晶から目を離さずに、アンジェリアがルルドに問いかけると、ルルドは嬉しそうに頷いた。
「さすが、リアだね! そう、これはサスティアル王国でも、珍しい透視水晶さ。見たい人間の現在を一度きり写し出してくれるよ。セライアに使ってもらおうかと、持ってきたんだ」
そう言うと、ルルドはセライアの手に水晶を握らせた。セライアは突然渡された水晶に、興奮気味に覗き込んでいる。
「これ、サスティアルでも、珍しいんでしょ? 良いの? 私に渡しても?」
セライアはそう言いながらも、既に見ようとしている対象は決まっているのか、水晶を凝視し始めた。
「サスティアル王族は、転移魔法でとこでもいけるし、父上とアラン兄上は水晶を使わなくても、短時間の透視はできるからねーーサスティアル王国でも、プライバシーに関するものは簡単には使えないけれど、セシーは、リアのためにコーション国に留まるようにしただろう? 父上はその心に痛く感心したようで、その、褒美らしいよ?」
「褒美に、透視水晶って、何か、品位が…」
「決めたわ! 私、見たいものがあるの!!」
ルルドの言葉にアンジェリアは思う所があったが、セシリアの言葉に掻き消されてしまった。
「本当? 早かったね? ーー見たいのは、ラークブルグ侯爵家かい?」
セライアの即決にルルドも驚いたように目を丸くした。そして、あまりにも早い決断であったため、セライアが婚約者のラークブルグ侯爵嗣子のセシルの様子が見たいのかと予想した。
「ーー違うわ…! それは、セシル様のことは、とっても、、気になるけれど…。でも、今は、ベイガザード王国とコーション国との国境を映して欲しいの!」
「! お姉さま?!」
思っても見なかったセライアの言葉にアンジェリアとルルドは息を飲んだ。
かの国境はサスティアル王族であるレイモンドが定期的に様子を調べている。その様子はルルドやレオン、オルソン公爵には伝えられはしていたが、アンジェリアやセシリアは教えてもらえずにいたのだ。
「ずっと、気になっていたの…! レイモンド伯父様は、このところ毎日国境を偵察に行ってるご様子。何か起きているのでしょう?」
セライアのいつにない真剣な表情にルルドは、いつも通りのふざけた態度をとることが出来なかった。
「ーー参ったなぁ…。きっと、セシーは、ずっと会えない婚約者の様子を見ると思っていたのにーーそう、セシーが、決めたのなら、僕は反対しないよ? リアも、国境が気になる?」
「ーーえぇ、もちろんよ…」
ルルドの問いに、迷いもなくアンジェリアが答えれば、ルルドはガシガシと手で頭を掻いた後、水晶の上に手をかざした。
「ーー覚悟は、良い?」
「えぇ、お願い」
セシリアの淀みのない返事を聞くや否や、ルルドは水晶に魔力を流し込んだ。
すると、水晶の内面が濁り出し、ぐるぐると渦を巻いていく。
ーーーー見ていて、気持ちが悪くなるわね…
そして水晶は濁ったまま、うっすらと、コーション国とベイガザード王国との国境、山間部を映し出した。
「「!! これっ!!」」
「ーーっ!!」
濁った水晶の映像が徐々に明確になっていくと、国境の山間部には、びっしりと軍隊がひしめいているのが分かる。軍隊の上にはいくつものベイガザード王国の旗が風で揺れていた。
セシリアとアンジェリアは、自分達の想像以上の光景に言葉を失くして息をのんだ。
同じく、水晶を見ていたルルドも驚き言葉を失っている。
「ーール、ルルドも、知らなかったの…?」
絶句したまま、微動だにしないルルドにアンジェリアが恐る恐る尋ねると、ルルドはブリキのおもちゃのようにぎこちなく頷いた。
「ーー、昨日までは、ここまで大群じゃなかった。ベイガザード王国の軍隊が、、想定以上に、遥かに増えている!!」
ルルドの言葉にアンジェリアは思考が水晶のように真っ黒く塗りつぶされたような気持ちになった。
セシリアも、あまりのベイガザード王国の大軍に顔が青くなり、ガタガタと体が震え出した。
「ーー! ちょっと、まって、う、嘘でしょ?!」
アンジェリアがルルドから水晶に目を戻せば、もっと恐ろしい光景が映し出されてきた。
ベイガザード王国の大軍が、国境からコーション国に雪崩れ込む様子が映ったのだ。
「!! リ、リア!! 僕は直ちに、サスティアルに戻って、兄上に報告する!! ーーリア! しっかりしろ!! 大丈夫か!?」
水晶の映し出した光景に、1番に正気に戻ったのはルルドだった。直ぐにでも、状況をサスティアル王国に伝えるべく、席を立つ。
アンジェリアはルルドが手を離した拍子に元に戻ってしまった水晶から、目を離せない。
ーーーーた、大軍が、ベイガザードの大軍が!!
ーーーーコーション国に、、コーション国が戦場に、、!!
「リア!! しっかりしろ!!!」
ルルドが再度、アンジェリアに呼び掛け、肩を揺すれば、アンジェリアと同じように硬直していたセライアもはっと我に返った。
「ーーっ!! そうよ! 直ぐに伯父さまにお伝えしてーー!!」
セライアの悲鳴のような声に、とうとうアンジェリアもパッと顔をあげた。そして、横に座るセライアの手を取り、立ち上がらせた。
ーーーーお姉さまを、ガーランド王国に!! 早く戻さなくては!!
「ルルド!! 待って、お願い!! シャルに会いに行く前に、どうか、セライアお姉さまを!! ガーランド王国に!!」
「リア?! な、何を言ってるの?! 」
アンジェリアの言葉にセライアは驚き、直ぐに怒り出した。しかし、アンジェリアの意図を正しく汲んだルルドはアンジェリアの意見に賛成だった。
ーーーーお姉さまは、転移魔法が使えない。人質にと狙われてしまうわ!!
「ーーセシー、リアの言う通りだ。何かあってからでは不味いーーさぁ、リアに暫しの別れを」
「な、何を!! ちょっと、待って!!」
ルルドはテーブルを回り込み、セライアの近くまで来ると、アンジェリアとの別れを促した。けれど、セライアは感情的になっており、ルルドの腕を振り払おうと暴れる。
「セシリアお姉さま、お父様、お母様によろしくお伝えくださいませーールルド、早く!!」
「! ちょっと! アンジェリア!!」
アンジェリアの言葉を待って、ルルドが転移魔法を展開すると、抵抗も空しくセライアの体はどんどん透けていった。
「リア、直ぐに戻る。時期に、レイモンド叔父上も戻るだろう。リアは部屋で、ナサル達と待機するように」
「わかったわ」
ルルドは指示に素直に従う姿勢を見せたアンジェリアに満足そうに頷くと、もう一度転移魔法を強めた。すでに、セライアがアンジェリアへ向けて、何を叫んでいるのかは聞き取れない。
「お姉さま、今までありがとう」
アンジェリアの言葉を最後に、ルルドとセライアはテーブルから姿を消した。
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