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神は勝手なのだと知っている  作者: 神狼 龍王《みたらしだんご》
第2章 不屈は愚行か、君たちは知っているか
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第7話 開戦

突如として、学術都市エコールを襲った怪物。その姿は矮小な人間にとっては山に等しく、事実としてそれは1つの山と同じ大きさをしていた。


長い休眠期間の末にその甲羅には地層が形成され、樹木が生えている。怪物が目覚めるときに運悪くその山の上にいた獣たちは、そのまま怪物の歩みとともに運ばれていた。


怪物の山の頂上の一番高い木の上に、1人の男が立っていた。彼は腕組みをしている。


「さて、支配(ロード)


その言葉とともに山全体へと彼の魔力が蔓延する。山の上にいた獣たちは、例外なく魔物と化し、もともと魔物であったものも含め彼の支配下となる。


それは、魔族としての基本的な能力である。


彼は薄汚れた右腕を掲げ、一息に振り下ろした。


「侵攻せよ」


その言葉とともに







学術都市エコールの東よりやや北にずれた場所。そこに門はない。あるのは堅牢な城壁。


しかし、そこに山の怪物が迫っていた。その正体もわからぬまま、街の衛兵は住民の避難を優先し、冒険者たちがその防衛に当たっていた。


「けっ、運が悪いぜ」

「まあ、そういうなよ。上手く立ち回ろうぜ」


城壁の外側に群れをなすのは、戦士系の冒険者たちだった。その数はわずか50そこら。およそ防衛に足りる数ではない。だからこそ、彼らは文句を言っていた。


「あいつらは、呑気なもんだな」


そう言って1人の冒険者が城壁の上を見る。

城壁の上に並ぶのは、射手系または魔術士系の冒険者と学術都市で学んでいた見習い魔術師たちである。もちろん、見習いとはいえ、下級魔法程度ならば、それなりの数を放てる者たちが集っておりただの数合わせというわけではない。その数は100に届くかどうかと言ったところだが、実力にバラツキのある冒険者も含まれるならばなんとかなるのではないかと薄っぺらい希望くらいはある。


「そうりゃそうさ。上には、A級冒険者が1人、轟雷のジジイがいるんだからな」


地上の冒険者の1人が言ったように、薄っぺらい希望を認識させる1つの要因がA級冒険者の存在であった。


「ほら、来たぜ。無駄話はやめにしろ」


地上の冒険者たちのまとめ役である男が、銀色の光を放つ心象器を構えてそう言った。


「はっ、異名を持たねえA級が何を偉そうに」

「まあまあ、黙って仕事だよ」


若干の不満をありつつも冒険者たちは己の武器を持つ。なぜなら、彼らの視界には土煙を上げて迫る魔物の大群が映っていたからだ。


「いくぞ」


短く呟くようなその言葉に


「「「「おーーーー!!!!」」」」


大気を割らんばかりの雄叫びで冒険者たちは答え魔物の大群へと果敢に突撃を開始する。


それとともに


轟雷(サンダー)


異名と同じ名を持つ魔法が、開戦の鐘がわりに轟いた。


その衝撃に思わず、足を止めた幾人かの低ランク冒険者は見た。異名を持たない無名のA級冒険者の男が、最初持っていたのとは異なる戦斧でもって魔物の大群のど真ん中へと大地を震わす一撃を放ったのを。


「なっ、なんだよ……あれ……」

「あ……」


無名であったがために、侮られていた男はしかし、そのときをもって、実力を示した。


参加戦力にA級冒険者が2人。しかし、相手は八方守護者が一体、霊亀。その激突の結末は、神すらも予測しなかった終焉を呼び寄せることをまだ、誰も知らない。


戦斧を持つ男の顔には、壮絶な笑みが浮かんでいた。











カーミラは、城壁の上にいた。彼女の心象器は片手剣型ではあるがその実、能力は遠距離攻撃に特化したものであったからだ。


「あ〜ショーン、はりきってんね〜」


呑気に声を上げる紅姫(スカーレット)


「それじゃ、私も」


片手剣の切っ先を魔物へと向けて


熱線(レイ)


そう呟いた。


そして、魔物の大群の一画は、言葉通りの熱線で焼き払われた。


「ホッホッホ、わしは引退するべきかのう」


そんなことを言いながら、カーミラのもとに現れたのはこの強制クエストの総指揮を任された轟雷の異名をもつご老体−


「アグニスさん、そんなに元気なのに何言ったんですか」


「そうかのう」


−アグニスである。好々爺とした出で立ちながら、その背は高齢でありながらまっすぐに伸び、身長は190㎝ほどの大柄。その白髪と白髭がなければ老人とはいえぬであろう覇気があった。


「いや、しかし。あの男は凄まじいのう」


「ええ、そうですね」


カーミラは老人の言葉に笑みを浮かべる。連れを褒められたことが、単純に嬉しかったのだ。


「それで、アグニスさんはこの戦いどう思いますか?」


「さてな。わしも随分耄碌しておるからのう。だが、負けるつもりはない」


カーミラの問いに、アグニスの纏う気配が一変する。それはまさしく歴戦を生き抜いたA級冒険者としてのもの。彼のプライドの現れでもあった。


「さて、二撃目といこうかのう」


「はい、そうですね」


アグニスとカーミラは、再び魔物の大群へと向き直った。

あまりにもな、急展開でありますね


しかし、このまま突き進みます。前後の説明回はなしの方向であります。ご容赦ください


さてさて、いつのまにか、ショーンのランクが上がっておりますがこれは王都防衛の功績によるものでございます。世界の真実というスケールのでかいことを中心に回しております作品でありますのでランクなどの細かいことはいつの間にという感じでときおりでてくることになっておりますです、はい。



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