始話 誇りか驕りか
第2章開始!
「陛下、報告いたします」
「なんだ?」
陛下と呼ばれた人物の声はつまらぬことなら殺すぞと言外に含まれたものであった。
その声に部下であろう、騎士姿の男はいつものことと気にせずに言葉を続ける。
「嫉妬が負けました」
「ふん、あのような愚物死んで当然だ。何故あの様なものが今の今まで七罪魔王の末席に座っていたのやら」
「陛下にとってはそうでございましょうが、あれでも人間たちからすれば充分な脅威でありましたゆえ」
「はっその脆弱な人間に結局負けたのであろう!なんたることか!七罪魔王の名を汚すとは!」
「はい、陛下の仰るとおりにございます。しかし、奇妙な話がありまして」
日頃からほかの七罪魔王に対して不満をもっていた陛下は、ここぞとばかりに罵倒する。それに対して騎士はなにも思ってはいないのか、淡々と言葉を続ける。
「どうやら、嫉妬を倒したのは半魔であるようなのです」
「なに?半魔だと。あれはここ数百年は現れなかったが……そうか、あちらもようやく重い腰を上げたか。くっくっくっ、くっくっはーはっはっはっ!」
まるで、無くした玩具が戻って来たかのような無邪気な喜びを、傲慢な大笑とともに顔に現した陛下。
その姿になにを思うのか、能面を浮かべる騎士。
それに気づくことなく、陛下は言葉を発する。
「よし、ではお前に命ずる。その半魔に挨拶をして来い。久方ぶりのあちらの駒だ。丁重に扱ってやらねばな」
「御意に」
その命を受けて騎士は退出する。そして、その顔には嘲笑が張り付いていた。それに陛下は気づかない。
だって、彼は傲慢だから。誇りが驕りに、慧眼が油断へと堕落してしまった者だから。
彼は確かに王の器を持っていた。だけど、それに胡座をかきすぎた。
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長い廊下だ。そこは暗い。
光源は等間隔に配置された青白い炎を灯す燭台だけ。
そこを侍女が綺麗に歩く。日本のトップモデルも真っ青な見事なウォーキングだ。
侍女は目的の部屋へとたどり着き、三回のノックとともに部屋へと入る。主は無駄を嫌う。返事を聞く必要はなかった。
「報告いたします。嫉妬は敗北、傲慢と虚飾が半魔を確認し動き出しました」
「半魔だったか…」
「はい、今回の遊戯はどうやら堕ちぶれた英雄の方向であるようです。残念でしたね。アキラ様」
侍女の言葉に返事はない。主はもう興味はないとばかりに目を閉じていた。
侍女はその様子に、憂鬱を感じつつ完璧な礼とともに退出した。
侍女の遠ざかる足音が聞こえる中、部屋の主は呟いた。
「今回は憤怒の出番か……」
つまらぬなー、そんな言葉を今にも吐きそうであったが、主がそれ以上言葉を発することはなかった。
今回はかませ犬がかませ犬でかませ犬になる予定です。
自分で書いておいて、意味不明⁉︎
ど、どうにかします。
末永くお待ちください。




