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神は勝手なのだと知っている  作者: 神狼 龍王《みたらしだんご》
第1章 夢見た者の成れの果て
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第7話 紅姫の帰還

ショーンたち一行は無事、王都に到着した。

彼らはそのまま王城へと向かう。


「スタリアより活気があるな」

「当然ですよ、ショーンさん。ここは王都、アリティア王国の中心地なんですから」


王都は当然スタリアよりもしっかりと整備されている。家屋はすべて石材でできており、しかし、屋根は所々青い金属でできていた。それは魔鋼銀(ミスリル)である。この王都は魔鋼銀を使った巨大な魔方陣を形成しており、それによって王都全体に結界を生成していた。


「ほへーすごい人ですね。見たことないのもいっぱいあります」


この中では小さな集落に住んでいたサクラが一番圧倒されていた。


東門から三十分ほどしてショーンたちは城門に辿り着いた。


普通なら王城の周りは貴族街で入るのが難しそうなものだが、この王都では貴族街は北区に存在していた。何故なら北には海が存在し、この世界の文明では侵入不可能。また、魔物が住む森や山もなく見晴らしの良い草原が広がり外敵が存在しないのが理由であった。


「止まれ。何用で城に近づく?」


門番の誰何がショーンたちに届く。ショーンはアルトリアの紹介状を門番に渡した。


「ふむ、アルトリア様の紹介か。では、一応馬車の中を調べさせてもらったら案内しよう」


門番はそう言って馬車の中を調べる。しかし、馬車にいたある人物を見て硬直した。


「あっあ、へ……第三王女殿下どうしてこのようなところに⁉︎」


硬直が解けると門番は叫んだ。


門番が見ていたのはカーミラであった。


「はぁこのまま、ばれずにいけると思ったんだけどねえ」


「えっうぇカーミラが王女様。えっうそなんで?」


レイルはそのことで混乱し、さらには今までのカーミラとのやりとりを思い出し顔を青ざめさせていた。


「カーミラどういうことだ?」


「フフ、ショーンは対応変わらないんだねえ。

改めて自己紹介を私はアリティア王国第三王女カーミライト・スペトル・アリティアです。どうぞよろしく」


カーミラは今までの雰囲気を消し、王族らしい気品をもってショーンたちに挨拶をした。ショーンは内心、頭を抱え、レイルは青ざめ、サクラは状況に置いていかれていた。








-カーミライト・スペトル・アリティア-

アリティア王国に生まれた第三王女である。父は国王、母は国王に最も愛されていると噂される第四側室。そんな生まれであるからカーミライトはなに不自由なく成長した。しかし、彼女は生来から活発でそのお転婆ぶりは国王も頭を抱えるほどだ。王城を抜け出すのは日常的なこととなり、止めることを諦めた国王は自衛のために剣を習わせることにした。当然、剣を教えたのはあの大剣聖である。そして、彼女は剣の才能を持っていた。さすがに大剣聖に勝つことはなかったが、城の兵士たち相手にたった11歳で勝利したのだ。その才能に疑いはない。

ただ、それがいけなかった。自衛というより戦闘を覚えた彼女の行動範囲は王都を超え別の街にまで延ばされた。護衛もつけずに冒険者として活動し、危機に瀕した村々を率先して救ったのだ。彼女は有名となり、王女とバレることはなかったもののこう呼ばれることとなった。


紅姫(スカーレット)







王城 応接間

ショーンたちは、カーミラの件でゴタゴタしたのち応接間へと案内された。この場にいるのはショーン、レイル、サクラだけである。この応接間はかなりコンパクトなもので公式のものではない会談やショーンたちのような一般市民で特別な事情があるものが通される場所である。それでも置かれている家具や調度品は最高級品であり掃除も行き届いている。


ふかふかなソファにショーンが腰掛け、レイルは立ったり座ったりを繰り返し、サクラは寝ていた。

サクラを見てショーンは大物かただの馬鹿かと呆れていた。


数分後、扉がノックされ開く。入ってきたのは赤を基調とし要所要所で青の装飾があるドレスを着たカーミラ、目元あたりがカーミラと似ている気の良さそうな老人。だが、その老人からは覇気が感じられた。さらに剣を携えた初老の男。彼ら三人が入室すると同時ショーンたちは立ち上がった。サクラもしっかりと起きている……いや、立ったまま寝ていた。


「楽にしてもらって結構、冒険者に礼儀など求めぬよ。座ってくれ」


覇気ある老人の言葉に従いショーンたちは腰を下ろす。カーミラたちも反対側のソファに腰を下ろした。同時に執事や侍女たちが入室しお茶の用意をしていく。それが終わると覇気ある老人が話を始めた。


「余がアリティア王国国王アンデルセン・フォン・アリティアである。此度の要件は我が国の英雄、大剣聖ガンドルフ・ラインハルトに修行をつけてもらうことで良いのかな」


覇気はあるがけっして威圧的でない声でアンデルセンは名乗る。


「修行といえば修行なのですが、心の迷いを払う手助けをしていただきたいのです」


ショーンが丁寧な口調になったことにその場のショーンを知る全員が驚いた。サクラもビックリして目を覚ましたくらいである。


「ほう。だそうだが、ガンドルフどうだね?」


アンデルセンは隣に座る初老の男に声をかける。

てか、なんでこのおっさん国王と同じソファに座ってんだろうか。


「あぁまあアルトリアの奴の紹介だしなぁ。請け負ってやるよ」


渋い声で男、ガンドルフが答えた。


「そうか。では、君たちには修行の間、城の客間を貸そう。我が娘の知り合いのようだからな」


「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」

「すぴー」


ショーンとレイルが感謝を述べ、サクラは寝ていた。

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