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第十一話 ポヨッペがウォーリアに覚醒しました。

 モーコを『アリオンの祭典』に出場させてみせる――そう決心をした翌日早朝のこと。


「ごっ主人! おーきーろー!」


 耳元で大きな声がして、恭也は頭から布団をかぶった。


「あと五分……」

「おーきーろー!」

「ごふうっ!?」


 突然、腹に走った衝撃。恭也がびっくりして布団から顔を出すと、小麦肌の全裸少女――否、ギャルが、恭也にまたがっていた。ゆるふわウェーブの金髪が程よい胸にこぼれかかっている。そう、その姿はまるで――。


「あ……あんときのペットショップ店員!」


 ギャルは大きく首を傾げた。


「てんいん? 意味わかんないんだけど! ねえ、あっそぼ!」

「いや、あんた、なんでこんなとこにいんの!?」

「なんでって、最初からいるし?」

「は? ……ってか、服着ろ! 服!」


 恭也は身を起こし、掛けていた布団でギャルを包んでやる。と、その時、ギャルの背中辺りで何かが引っかかった。


「ん、あれ?」

「ご主人、痛い!」


 パタパタと、ギャルの背中から現れた可愛らしい黄色い羽。


 まさか、と。


 恭也は、ポヨッペがいるはずの鳥籠へと視線を移した。なんとまあ、木っ端微塵に破壊されている。


「もしかして……ポヨッペか!?」


 恭也が訊くと、ギャルは右目にピースを翳し、「ポヨッペデス!」と、舌をペロッと出した。


「嘘だろおおおぉぉぉ!?」


 恭也は頭を抱えた。


 羽は残されたものの、オカメインコのトレードマークである赤ほっぺは無く、あどけない少女とも言い難い。というか、ギャルである。


「なんだ、朝っぱらから……!?」


 部屋のドアが開き、現れたのはアウスタリスだ。唖然として、ポヨッペを見ている。次いで、軽蔑の眼差しが恭也に向けられた。


「このド変態が……」


 全裸ギャルと対面座位なこの状況。


「ちっ違う! いや、その、なんだ!」

「やはり、貴様の部屋をわたしの部屋の隣にして、監視していて正解だった。国家機関であるウォーリア・タワーで、よくもこんな破廉恥な真似を――」

「いや、こいつポヨッペなんだよ!」

「もう少しマシな言い訳をしたらどうだ? ウォーリアに覚醒するまで、最低でも一週間は――」


 アウスタリスは再度ポヨッペを見て、言葉を止めた。次いで、破壊されている鳥籠に視線を移し、ようやく状況を理解する。


「まさか――本当に!?」


 ポヨッペはビクッとして、恭也の後に隠れた。


「うー、あのドラゴンの人、怖い……」


 決定的である。アウスタリスは慌てて懐から携帯電話を取り出し、番号をプッシュした。


「……もしもし!? 大変です、ポヨッペが覚醒しました! いえ、本当です! 今ヒューマンの姿で……ええ、至急向かいます!」


 アウスタリスは電話を切ると、取り乱した様子で言う。


「急いで準備しろ! 検査室に向かうぞ!」

「な、なにそんなに焦ってるんだよ」


 アウスタリスは苛立ちを見せた。


「あまりにも覚醒が早すぎるんだ! 何か異常が起きているかもしれん! 早くしろ!」

「わ、わかった」


 恭也はポヨッペをひょいと持ち上げ、ベッドから降ろして翻訳機を耳に取り付ける。そして、シーツでくるんだポヨッペを担ぎ上げ、アウスタリスと共に部屋を出た。


----


 エレベーターで一階まで降りて、検査室。


 上下スウェット姿のティアがいて、落ち着きなく端末のキーボードに指を走らせていた。そのすぐ側には、大きな蚕の繭のような物体が配置されている。


 やがて、その物体が中心から二つに割れると、中からベッドが現れた。


「さあ、ポヨッペをそこに寝かせて。ハルナは手が離せないから、わたしがやるわ」


 ティアが言って、恭也がポヨッペをベッドに寝かせると、ポヨッペは不安そうに恭也を見た。


「怖い……」

「大丈夫だ、きっとすぐ終わる。羽、痛くないか?」

「うん」


 恭也が頭を撫でてやると、ポヨッペは気恥ずかしそうに笑った。ティアに視線を移して「頼む」と告げ、ベッドから離れると、ティアは頷き、物体が静かな音を立てて繭の姿に戻る。


 ティアは再び端末と向き合い、キーボードに指を走らせた。


「心拍数、血圧……異常なし。視力、聴力……異常なし」


 恭也は、鬼気迫る表情で端末を睨むティアを、固唾をのんで見守る。あれだけ元気な様子ならば大丈夫だろうとは思っているが、不安は拭えない。


 やがて、ティアは「ふーっ」と息を大きく吐き、椅子の背もたれに背中を預けた。


「全項目、異常なし!」


 その言葉を聞いて、恭也とアウスタリスもまた、大きく安堵のため息をついた。次いで、恭也が端末を見てみようとティアに近づくと、なにか様子がおかしい。これでもかというほど目を見開き、身体を震わせている。


「どうしたんだ?」


 恭也が端末を見ると、訳の分からない記号や数値の中に、一つだけ赤字で『????』と表示されているものがあった。


「なんだ、これ?」


 恭也は『????』を人差し指で指した。


 ティアは胸に手を当て、深呼吸をして答える。


「ポヨッペちゃんのスキル一覧の部分よ。ウォーリアのスキルは、各国が閲覧できるよう一つ残らずセントラルのデータベースで管理されているの。発現したスキルが何か、そのデータベースにアクセスして、すぐにわかるようになっているんだけど、つ、つまり……」

「つまり……?」


 恭也を見たティアに、満開の笑顔が咲いていた。


「前代未聞のスキルが発現したということよ!」


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