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銀舞う世界  作者: KoKoRo
3/6

Act3

鉛のように重くなった足を引きずりながら、私は[銀色のそれ]の後を追った。




「はぁ…はぁ……」




息が上がる。自分が思ったより、足の痛みは遥かに痛い。激痛で顔が歪む。




私と[銀色のそれ]との距離が段々広くなっていった。




この男は私を待ってなどくれない。


私は生きる気力だけで歩き続けた。






―――――ズガンッ







突然、前方から銃声が鳴り響いた。[銀色のそれ]が銃を構えている。標的を見つけたのであろうか?





すると、[銀色のそれ]がこちらを向いた。



「おい、そっちへ行った。捕まえろ」





状況が理解できない。何がこっちに来たというのか?周囲を見回したが、何もない。




……………グッ





だが、突然、首を締め付けられる痛みが走った。恐怖が全身を伝う。






『………ククッ…』




耳元で不気味な笑い声が聞こえた。私は恐怖に怯えながら、後ろにいる人物の顔を見ようと、首を回した。


すると、目に移ったのは、白いワンピースを着た髪の長い女性の姿だった。死人とは思えないほど、綺麗な顔立ちをしている。





『この女の肉を喰らえば……私は生き還ることができる……』




………グググッ




私の首をまるで蛇が締め付けているような痛みに襲われた。痛みはやがて苦しみに変わる。息が出来ない。




『死ね……死ね………死ねぇっ………』





長い髪の女は依然として力を加えてきた。




意識が朦朧とする中、眼前に立っている[銀色のそれ]が銃を構えたかのように見えた。




『クククッ……私を殺す気か?出来ないだろう?この生きた女に銃弾があたるぞ?』




「その女諸ともお前を殺すまでだ」




『馬鹿な……。お前は生きた人間を殺すというのか……?』




「動くな。今、楽にしてやる」




『うわぁああああっ………………!!!』





首を締め付ける痛みが消え、それと同時に髪の長い女の姿も消えた。




「姿を隠したところで逃げられると思うな。俺はお前を必ず殺す」




[銀色のそれ]が言い放った。



『お前もあの男と同じだ……。信じていたものに裏切られた私の気持ちが分かるものかっ……!』





「人を信じたお前は、恋人の手によって殺された。皮肉な人生だったな」



『!?』




「現世で生き残る恋人への恨みが強すぎる。お前は死人だ。生き還り、殺すことは永遠に出来はしない」





髪の長い女の顔が、怒りに満ちた顔つきに変わった。そして、首元には先程見た時にはなかった痣が浮き出ていた。




『この……痛みが……貴様に……分かるものかぁあぁ………!!!』




ロープだ。首に浮き出ている痣の跡がロープの形状をしている。




すると、[銀色のそれ]は美園の方を向いた。




「おい、その女を押さえろ」



「私に言ってるの?無茶なこと言わないでよ!出来るわけないじゃない!?」




[銀色のそれ]は美園に銃を向けた。





「やれ」




「………」





ここで死ぬぐらいなら、嫌な仕事を引き受けた方がマシだ。

私は髪の長い女の元へ走った。




『貴様も……私を……殺しに来たか…?生きた人間の分際が……っ…』





私は無我夢中で女の手を掴んだ。掴むと同時にある映像のようなものが頭に入り込んだ。








映像に出てきたのは、ここにいる女とある男の姿だった。

傍にいる男に向けた女の笑顔は、とても幸せそうにみえた。だが次の瞬間、男の表情が一変した。





そして…………






手に持ったロープで女の首を締め付けていた。








やがて女は動かなくなった。男は慌てた様子で家の中をはいずり回り、金めのものを持って家を出て行った。








ふと映像が消え、辺り一面が黒くなった。元の世界に戻ったようだ。

気がつくと、目の前には長い髪の女が黒い血を流し、倒れていた。





「殺したの?」




わたしは[銀色のそれ]に躊躇いもなく聞いた。





「ああ。殺した」




[銀色のそれ]は答えた。





憐れとは思わぬ女の死に様。人などを信じたばかりに自らの命を奪われたのだ。




「この人が死ぬ前の映像が見えたの。……不思議ね。全然怖くなかった」




「人の死に興味がないのか?」



「わからない。あなたは……人を信じられる?」



「人を信じたところで何も変わりはしない。信じたくもない」




――――同じだ。





――――私もこの男と同じなんだ。





「あなた、名前はなんていうの?私は美園」





口に出して気付いた。こんなことを前にも誰かに聞いたような気がする。



「わからない」




「自分の名前を知らないの?」




「名前など必要ない。お前の名前も知る必要がない」






やはりこの男は[銀色のそれ]と呼ぶしかないようだ。





歩き出した[銀色のそれ]の後を追った。

不思議と足の痛みが和らいでいるように感じた。









Act3 …END…



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