Act2
私の真横には「塊」が倒れ、そして正面には、銀色の髪をした男が立っていた。
私は[銀色のそれ]に殺される……………。
今にも、手に持つ銃を私に向けて打ち殺そうとしているのではないか?
恐怖が全身を伝った。「死」への恐怖が全身に伝った。
「殺さないで」
私は涙を流し、訴えていた。今ここで死にたくない。今まで適当に生きてきた。けれど、死のうと思ったことは一度もない。
別に未練があるわけでもない。
ただ……
死にたくない。
死んでたまるか。
「標的にされたくなければ、ここをどけ。そして、干からびて死ね」
[銀色のそれ]は言った。
「死ぬぐらいなら私は地上に出て生きる……。こんな汚いところで死ねるか!!」
――――そうだ。
―――ここは、マンホールの中じゃないか。
――――上に登れば、地上に出られるじゃないか。
「上への出口などありはしない。お前はここで死ねばいい」
そう言った[銀色のそれ]は美園から離れ、歩き出した。
「待ってよ……。ここから出られないってどうゆうこと?」
状況が理解できない。私がいるこの場所は、一体なんだというのか?
「死、さ迷える街。死人が生きる世界。お前のような生きた人間がここを出ることは不可能だ」
何を言っているのか理解できない。
「マンホールの中で死人が生きる?じゃあ、ここに倒れてる塊も死人だって言うの?」
私は先程の態度とは裏腹に、落ち着いた口調で言った。
「そうだ。お前の横に倒れているそれは、火事において焼け死んだ死人だ。現世への未練が強すぎる。だから殺した」
「死人だから黒い血を流してるのね…」
――――この状況を理解するために、私は【バイオハザード】と例えた。
―――私は【バイオハザード】というゲームの中に迷い込んだ。
―――そう考えれば、理解できなくもない。
「ここにいる人は皆、死人なの?」
私は[銀色のそれ]に聞いた。
この男は私を殺さない。
なぜかそう感じた。
「ここにさ迷う者は皆、不慮の事故に遭った者、もしくは殺された者が集う。現世への未練が強い者はやがて怨霊となり、生きた人間を殺す」
「さっきの塊は私を殺そうとしてたの?あなたはそれを助けてくれた……?」
「俺は標的を殺しにきただけだ。お前を助けたわけではない。ここで殺されずとも、お前はいずれ死ぬだろう」
「あなたは何故ここにいるの?あなたも……死人なの?」
疑問に思ったことを聞いた。ここが死の世界というのであれば、生きた人間がこの場にいることは不自然だ。
実際、私も生きているのか死んでいるのかわからない。
「俺もお前と同じ生きた人間だ。自らの意志でここに来ている。」
「あなたが生きた人間というなら、私もこの世界で生きられるじゃない…。あなたが自らの意志でここにいるのなら、私が現世に帰れることだって出来るじゃない!私はここに落ちる前にあなたを見たのよ!?」
[銀色のそれ]に強い口調で訴えかけた。
私の言っていることに間違いなどありはしないと察したからだ。
「そんなに現世に帰りたいか?」
私はその言葉に、はっとした。
―――――あんなつまらぬ日常に戻りたくはない。
「戻るくらいなら、ここで生き延びてやる」
「現世への未練がないのか?面白い。ならばお前はここで、もがき、苦しめばいい」
「あなたの後についていくわよ。未練はないけど……私は死にたくないの」
「勝手にするがいい。お前が途中で生き絶えたとしても、助けるつもりはない」
「死んで……たまるか…………」
鉛のように重くなった足を無理に動かし、立ち上がった。
私は覚悟を決めた。
Act2 …END…




