第1話 ノーパン妖精、拾った幼女が推しゲーのヒロインだと気づいて絶望する
数ある作品の中から本作を見つけていただき、ありがとうございます。
妹を平凡に育てたい妖精の姉と、なぜか大成していく妹の「すれ違いコメディ」です。
※全30話、執筆完了済みです
※毎日18時に更新予定
「あー……。やっぱノーパンに勝る解放感ってないわー」
──────
そこは木漏れ日が降り注ぐ森の奥深く。
私は今、肌触り最高な超高級ワンピースを着て、でも下はスースーの解放感あふれる状態でふかふかの苔のベッドに寝転がっていた。
最高。
控えめに言って、ここが天国か。
いや天国ね。
胡座をかこうが、服が捲れようが、人目が無けりゃ関係ない。無いっていうか皆無。
口元についた樹の実の食べかすを雑に払い、再びゴロンと横になる。背中の羽が多少潰れてもお構いなしだ。この程度なら痛くないし。
「うーん、何度も思うけど、やっぱこの自重無しで何にも気にせずだらけまくるのって最高! あー、今日も1日だらけるぞい」
そう思って快適なお昼寝を決め込んでいると、何やらかすかな物音が。
「魔物……じゃないわね。寝よ寝よ」
この森では一瞬の油断が命取り。
まあ私には関係ないけど。
とは言ったものの、気にせずお昼寝だと決め込むわけにもいかないし……仕方ない。
「あー、めんどくさい……でも後回しにするともっとめんどくさくなるかも知んないし」
ほんとーに仕方ないけど、ムクリと起きて物音がする方へと飛んでいく。
いつも果物が実ってる庭先もとい活動圏内に何か落ちてる。
ええと、何やら大きなボロ布、じゃないわね。金糸のような綺麗な髪に、泥だらけの服。
え、これ、ひょっとして……
「うわ、人間の子どもじゃない! メンドクサ……この森は不法投棄厳禁なの! 一体誰よ、こんな子どもを捨てるなんて。でもなあ……うーん、どうしよう。捨ててこようかな……」
誰が聞いているわけでもないけど独りごちる。
「誰……か……たす……け……て……」
うげ、まさか聞かれてないわよね?
っていうか生きてるじゃん。
どうしようかしら。
う〜〜〜〜〜〜ん…………。
唸ってみたものの、なーんも浮かばない。
まあ、放っておいても寝覚めが悪いし?
少しだけ、助けてあげないこともないし?
弱ってる相手への回復魔法は相手の体力を消耗するから気を使うし、さてどうしたものか。
「そういや魔法じゃない、なんだかよく分からないスキル的な能力があったわね」
助けようとしたところで突然思い出した。単に助けるだけじゃつまんないし、ちょっとお試ししても良いわよね。
ま、感覚的にはこの謎スキル的な能力で悪いようにはならないような気がするし、なんとかなるっしょ。
直感は大事。
街の図書館でイタズラ書きした本にもそう書いてあったし。
「と言うわけで、そぉい!!」
エイヤとばかりに謎スキル的なエネルギー(?)を倒れ弱ってる子どもにどんどん流し込む。魔力とは違う、別の何かがガンガン減っていってる感じがするけど、ヤバい感じはしない。たぶん謎スキル的なモノが発動してるって感覚でしょ! ヨシ!
行き当たりばったりで考えるのが苦手な私だけど、だからこそフットワークの軽さには自信があるのよ!
「おっ、効いてる効いてる」
子どもの顔色が、文字通りみるみるうちに良くなってきた。
うーん、この謎スキルって回復系なのかしら?
なにはともあれ、迷った時は感覚に任せて「エイヤ!」が一番!
やっぱ勢いは大事ね!
勝ったなガハハ!
◆ ◆ ◆
さて、ひとまず何とかなったわね。
この後、親元に返すにしろ、話くらいは聞かなきゃ。
「ほら、そろそろ起きなさい」
顔にかかった髪をさっと横に払う。
子ども、いや、幼女ね、この子は。
とにかく、幼女の額をペシペシと叩く。
「うぅ〜〜ん……」
「ぶべっ!!」
寝返りと同時に手で払われ弾かれる私。
大丈夫、痛くない。痛くはないけどびっくりするからやめてほしい。
そうこうしてるうちに幼女が目を覚ました。
「お、ようやく起きたわね。話せる?」
「……妖精?」
まだちょっとぼんやりしてるわね。
まあさっきまで衰弱していたし仕方ないか。
「そ、私はガーベラ。妖精のガーベラよ」
「……? ノーパン? ノーパン妖精のガーベラね。分かったわ」
ちょっっっっ!
ふわふわ浮いてるもんだから見上げられると丸見えなの忘れてた!!
「違っ! いや、あながち間違いじゃないけどとにかく違う! これには深い事情が! いやいや、今はそんなことはどうでもいいわ。あなた、名前は?」
さっきからイヤぁーな予感が止まらない。
彼女の髪を払って顔を見た時から、喉まで出かかってるのに、こう、あと一歩が!
「私はデイジーよ。あなたが助けてくれたの?」
「デ、デイジぃーーー!!!?」
ほげえええぇぇぇ!!??
お、思い出したぁァァァ!!!
この名前!
金髪の一部がピンクという特徴的な頭!
こ、この幼女、前世でプレイしてた乙女ゲー【乙女物語 II 〜デイジーと世界樹の森〜】のヒロインじゃん!
ちょっと待って、何で今になってあの鬼畜AP管理ゲーのこと思い出すのよ!
そりゃまあ私だって乙女なわけだし?
前世の記憶のほとんどは綺麗さっぱりだけど、この手のゲームを多少は嗜んでいたと思うわよ?
でもだからって、だからって!
なんで私の庭にヒロインが落ちてんのよ!!
意味わかんねーわよ!
え、それじゃあ何?
確かに加減が分からず謎スキル的なエネルギーをフルパワーでデイジーに流し込んだわよ?
その結果、彼女の髪の一部がゲームの通りの色になったのは、私と同じ色のピンクになったのは……私の自業自得?
ふざけんなし!
ちょっと寝覚めが悪いと思って人助けしたのになんでこうなるのよ!
いやまあ人体実験まがいなことをしたのがいけないんだけどさ!
だからってこうはならんやろい!
助かったならヨシ!(指さして確認する猫のポーズ)
で良いじゃん!
しかも、もしかしなくても私ってばシステム妖精的な位置付けとか言わないわよねえ!?
あーもう返品よ返品!
「うん、私はデイジーよ」
「よし、元気になったわね! じゃあ解散! さ、帰った帰った!」
関わったら碌なことにならないわ!
「えっと、帰り道は……分からないわ」
はあっ!?
「あと、魔物が……」
タイミング良く火吹き熊が茂みからがさりとこんにちは。
あら、ダイナミックエントリーしないなんて行儀良いわね。
って、はあぁーー!?
お前、いつも私がちょっかいかけてイタズラしてる熊公やんけ!
今はお呼びじゃないので強制ログアウト!
「お星さまになる魔法! ……ふぅ、魔物なんていなかったわよ? どう?」
「道も分からないし、あの熊に狙われてるから無理……。たすけて」
思い出したと言っても断片的なわけだけど、前世の知識によるとデイジーの未来には「ドロドロの愛憎劇」や「破滅フラグ(バッドエンド)」が待っている可能性もちらほらある。
う〜〜〜〜〜〜ん…………。
再び唸ってみたものの、なーんも良案は浮かばない。
一度助けた手前、この子がこのまま魔物の餌になったり、不幸になるのは寝覚めが悪い、か。
「しゃーないわね、助けてあげる。これも乗りかかった船よ! このガーベラに任せなさい!」
「ありがとう、ノーパン妖精のガーベラお姉ちゃん」
「違わないけどちがーーーう!!!」
ひょんなことから幼女ヒロインを拾っちゃったけど、まあ何とかなるでしょ。
行き当たりばったりだけど今まで何とかなってきたんだし、今回も大丈夫!
なんてったって鬼畜AP管理は前世で散々やったような気がするし、よゆーよゆー!
私の平穏なスローライフを守るためにも、この子を王都や学園などのメイン舞台に関わらせちゃダメ!
AP管理職人であるこの私が、しっかりとデイジーを導き、何が何でも彼女を平和な一般人エンドに導いてやる!
……ところで、APってどこで見れるの?




