80話_再びの遺跡へ
卒業式も終わり、退寮する日がやってきた。
午前中までが荷造りで午後に移動が始まる予定だ。
私は荷物を全てアイテムボックスに仕舞い、午前中のやることを直ぐに終えてしまった。
すると、私と同じ大きさまで成長したセレスが提案する。
「遺跡に行こう?」
「今から?午後の移動に間に合わないと思うんだけど…。」
「ゲートで行こう!」
「まだ慣れてないんだけど…。」
「練習だよ練習!どんどん使ってこ?」
私は魔素の支配を使うと魔素を自由に使えるため天以外の超級適正である空と時の適正も扱えるようになった。どちらもまだまだ慣れておらず、空の適正では視界に収まる範囲の短い距離を移動する瞬間移動と一度行ったことがあればどこてまも移動できる空間と空間を繋げる扉しか使えない。時の適正に至ってはまだ何も成功していない。でもこれはつまり私にはまだまだ成長の余地があるということだ。
「ゲート」
セレスのお強請りに負けて遺跡までのゲートを開く。
現れたゲートを通るとセレスと戦った場所に出た。
「あの時は驚いたよ。まさかスキルを書き換えちゃうなんて。」
「一か八かの賭けだったけどね。上手くいって良かった。」
セレスとの戦いの最後、魔素の支配を使い、祝福の後押しを受けた私はセレスの持つ神霊固有のスキルに干渉した。
推測でしかないけれど、怠惰の大罪によって永遠に変わらない器が豊穣の神によって増え続ける中身に耐えられないことで自身の制御が出来なくなり、魔王として暴走してしまうと考えたのだ。私が生きている間は私が成長の捌け口となってセレスの暴走を抑えることができている。…なんて予測に予測を重ねたとんでも理論だったけどあながち間違っていなかったらしい。
賭けに勝った結果、二つのスキルと私に掛かっていたセレシアの祝福が統合され、新しい神霊スキル、鎮魂歌へと変わった。これにより豊穣の神と怠惰の大罪によって魔王化する未来からセレスは解放されたのだ。
セレス曰くこのスキルの効果は、豊穣の枝葉のように他の世界線まで効力を伸ばし、祝福を通して魔王へと干渉し、怠惰をもって落ち着かせる。と、他の世界線で魔王になってしまったセレスを鎮める為のスキルらしい。
好きな植物を創ることも、過程をすっ飛ばして結果を知ることも出来なくなってしまったセレスだったが、他の世界線の自分達が誰かの敵にならず、誰かに恨まれることが無くなるのならそれだけで満足だと嬉しそうに言っていた。
とはいえ、木と水と土の適正を持ち、龍形態への変身もできるため不便になったとも考えていないらしい。
私に掛かっていたセレシアの祝福はセレスへと返すことになったけど強くなった繋がりは変わらない。今日もセレスの幸せそうな。後ろめたさの欠片も無い気持ちを感じとることができて私も幸せだ。
「ここの壁に手を付けて、魔力を流してみて。」
部屋の中を進み、ある壁の前でセレスにそう言われる。
言われた通りに魔力を流すと壁が開いた。
「この先に私の母さまがいるよ。」
そう言われて思わず息を飲む。先に進むセレスを追いかけると、とある鏡の前に着いた。
「エピゴーネンの鏡?」
「そうだよ。」
「え?もう壊れたんじゃ…。」
いや、待てよ?偽レオンが突然消えたから壊れたのだろうと推測しただけだったか。
「壊れてないよ?そもそも、エピゴーネンの鏡は私達の母さまに会うための試練として母さまが設置したものだよ。壊せるわけないよ。」
「え、でも突然偽レオンが消えたのはなんで?」
「私が鏡に触ったからだと思うよ。試練に合格するには複製体を倒さなくても鏡に触れるだけで良いからね。」
こんな場所の鏡をどうやって?…はぐれた時にでも見つけたのかな。
「エピゴーネンの鏡の試練を突破するには二通りのパターンがあるけどサクラは分かる?」
二つ?複製体を倒さなくてもってことは…。
「複製体との戦いを避けて鏡に触れるか、複製体を倒した後に触れるか。の二通りかな?」
「そうたよ。複製体を倒さなかった場合、母さまに会うことはできるけど話すことはできない。試練を突破した人に必要な記憶や知識を授けるんだ。私の場合は、他の世界線の私達の記憶。それと…。」
「それと?」
「なんでもないよ。」
どうしたんだろう?気恥しさと気まずさ、それから罪悪感と後ろめたさ?
「言いたくなければ言わなくていいよ。」
「えへへ。ごめんね?」
「まだ魔王化する可能性が…いや、時期的に違うか。」
「うんうん。サクラのおかげでそこは大丈夫だよ!」
言い方が他に問題があるみたいな言い方なんだけど?何があるのかじっと見つめる。
「そ、それでね、複製体を倒して試練を突破した時なんだけど…。」
えへ?って笑いつつ上目遣いでこちらを見つつ話題を逸らすセレスに仕方ないから誤魔化されてあげる。
「創造神様に会ってお話しができる?」
「うん。お願い事も聞いてくれるよ?」
お願い…。それでセレスの魔王化を防げば良かったのでは?
「母さまも万能じゃないよ。創る事には特化してるけど他は…ね?」
…ね?じゃないよ…。急に不安になってきたんだけど?
「あれ?でも複製体倒して無くない?出てきてもないけど。」
「もう倒し終わってるよ。」
セレスがドヤ顔してる。うーん。今日来てからは戦闘するタイミングすら無かったんだけど…。
「ああ、それで私と戦う前、先に遺跡に来たんだね。」
「えへへ。バレちゃったか。サクラは私の魂の一部を持ってるから私が試練を突破してもサクラが報酬を受け取れると思ったんだ。」
まったくこの子は…。再度ドヤ顔してるセレスの頬を引っ張る。おお、よく伸びる。
「私への置き土産って?そもそもこの仕掛けに気付かなかったり、ショックでここに足を運ばない可能性だってあったんだよ?それに、死ぬ前提で動くんじゃない!」
「いひゃいいひゃい、ひゃって死ぬ以外に魔王化を防げるなんて思ってもなかったし…。それにサクラなら大丈夫!最初は悲しんでも直ぐに立ち直れるって信じてたから!」
「そう…。」
まっすぐに信じてくれるのに照れてしまう。
「ではでは、母さまを呼び出すよ!心の準備はいい?一緒に鏡に触るよ!」
セレスも恥ずかしくなったのか、少し早口で促す。
「うん、よろしくね。」
そして私達は一緒に鏡に触った。
*****
Tips 神現の鏡
魔力を吸収し、複製体を作る魔鏡は創造神から与えられる試練だった。神が創ったダンジョンや遺跡にのみ存在し、試練を突破したものに創造神からの褒美が与えられる。
セレス「豊穣と怠惰でなんで歌になったの?」
サクラ「祝福って歌のイメージあるでしょ?」
セレス「そうなの?」
サクラ「そうなの!」
次話は明日の17時投稿予定です。
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