64話_目覚め
対アービシア戦も今話でおしまいです。
シリアス展開もおしまいです。
「サクラ!サクラ!しっかりして!」
「せれす…?」
「そうだよ!セレスだよ!起きたらしゃんとして!戦いに戻るよ!」
「だめだよ…。私、父さまとは…。いたっ!」
セレスに頭突きをされた。痛いじゃないか…。ん?
「復活したね?闇魔法なんかに引っかかって。サクラには私がいないとダメなんだから。」
「闇魔法…?はっアービシアの魔法!」
「そうだよ?あっさり嘘に引っかかって。まいっちゃダメだよ?うぅ恥ずかしい。」
「うっ。確かに体育祭で思いっきり闇魔法使ってたね。無属性とか完全に嘘じゃん。ってあれ?セレスの一人称って私だったっけ?」
「そこは気にしないで!私ももう大人だからね!僕はやめるんだ!」
大人…?いや、神霊様だし年齢で言えば大人だと思うけどセレスはスキルのせいで成長しないんじゃ?
「ほれほれ、そんなことよりちゃっちゃとやっつけちゃおう!」
「なんか元気になったね。」
そういうとセレスは一瞬だけ嬉しそうな、泣きそうな、そんな複雑な顔をした後、すぐにニコニコした顔に戻った。
「えへへ、サクラがまいってたからね!私が代わりに元気になろうって思ったの!寂しい思いはさせないよ?」
寂しい思い…?そうか、私が日本にいたときは両親ともに生きていたけど旅行などでほとんど家にいなかった。一応死なないようにと料理や洗濯などの家事はしてくれていたが、今考えるとネグレクトに近かったのでは?と思うほど両親は私のことを見ていなかった。でも、当時はそれが普通だったから気にしていなかった。
でも、サクラとなって母に愛され、家族の愛がどれだけ暖かいものかを知った。そして…本来であれば父からも同じようなものが与えられるはずだったとも心のどこかで思って父親の愛情に飢えていたのかも…。
なんだか心のつっかえが取れた気がする。母にセレスに、カトレアちゃんに。家族やそれに近しいほど愛してくれている人は周りにいるんだ。そう考えるとなんだか力が湧いてくる。
「よしっ!気合が入ったよ!…って今戦闘中じゃん!」
「さっき戦闘中って私言ったよね?」
ああ、セレスがジト目で見てくる。それどころじゃなかったんだから許してほしい。
「さて、父さん。いや、アービシア!覚悟しろ!!」
「ぷふっ。」
ババーンと決めてアービシアのほうを見る。いやなんでセレスは笑ったよ。…よく見るとアービシアが植物にぐるぐる巻きにされている。手に持った剣状の植物も干からび、今思えば私を拘束していた蔓もほどけている。
「もう捕獲は終わってるよ。残りはヴァニティアだけ。」
向こうをみるとレオンがヴァニティアを抑え、ライアスが止めを刺すところだった。
え?…展開早くない?
―――
遺跡内部にいた他の魔族はすでにセレスが殲滅したらしい。私が闇魔法にとらわれていた間にいろいろと進み過ぎだ。
「いやー、本気でサクラが死んだと思ったわ。」
「笑い話じゃなくない?」
「生きてたんだからいいんじゃない?笑い話にしちゃおうよ!」
「はっ?お前誰だ?ほんとにセレスなのか?」
良く寝てたセレスがずっと起きてニコニコしているし、私を見る目も何か懐かしいものをみるような?よく分からない感じもするからレオンが偽物みたいに感じるのも分かる。だけど私にはセレスが本物だと分かる。
「本物だよ。本人曰く成長したんだと。」
「はぁ?お前は成長できないだろうが。」
「ふっふーん。いつまでも成長できないセレス様だと思ってもらったら困るね!」
「なんかサクラに似てきてないか?」
「なんだ、飼い主に似ただけか。なら納得だな。セレスとサクラだし。」
なにか馬鹿にされた気がしないでもないけどそんなことより何が起きたのか説明してほしい。
「私は遺跡ではぐれてから、散歩しつつ魔族を殲滅してたんだけど、途中で嫌な予感がしたから急いでサクラのもとに向かったんだよ。そしたらちょうどサクラが串刺しになりかけてたから“えいっ”てやってアービシアを捕まえたの!」
なるほど。植物で壁を作って私を守りつつ、アービシアの操ってた植物の主導権を奪って干からびさせたのか。
「今ので伝わったのかよ…。」
ライアスが驚愕しているけど何か変なところがあっただろうか。とても分かりやすい説明だったと思うんだけど…。
「サクラも変な方向に進化してないか?」
「あの二人が変なのは今に始まったことじゃない。気にしたら負けだ。」
ライアスとレオンが二人でなにかコソコソと言っている。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないぞ。こほん。その後、セレスが変な場所を攻撃したと思ったら偽レオンが消滅したんだ。」
「偽レオン?すでに倒してなかったっけ?」
「サクラを助けた後に私が鏡を割ったの!」
褒めて褒めてと顔に出てるセレスに苦笑しつつ頭を撫でる。
そうか、エピゴーネンの鏡は生きていたのか。偽セレスが消滅したのはアービシアがなんらかの手段…おそらく遺跡の別の用途として偽セレスの力を取り込んだのだろう。本体が生きていたから魔力が貯まって偽レオンが復活し、セレスが本体の鏡を壊したことでレオンが消滅したんだな?偽セレスが復活しなかったのはアービシアが力を奪っていたからだと考えると納得がいく。
「後は見たまんまだよ!レオンが抑えてライアスが止めを刺してたね!」
「そっか。みんなありがとう。頼りになる仲間がいて幸せだよ。」
なにか気恥ずかしいことを言った気がするけど気にしない。気にしないのだ!
それとは別に一つだけ、気になってることがある。
「アービシア…父さまが私を恨んでいたのは結局なんでだったんだろう。」
「逆恨みだろう。自分でごみだと判断して捨てたくせに、捨てたごみが宝石だって知って逃げられたって思いが強くなった。なんで勝手に離れていったんだーって思ってる間に制裁を食らって嫌なことが起き、嫌な対象を責任転嫁した先にサクラがいたってだけだ。」
「サクラが気にすることじゃないよ。案外なんとも思ってなかったかもしれないし。好きに想像しちゃおうよ!」
「セレス…そうだね。ありがとう。」
きっともう闇魔法で心をやられることもないだろう。そう思えた私だった。
*****
Tips 遺跡の魔道具
巨大な魔道具でエピゴーネンの鏡を経由して侵入者の魔力を奪い魔王を覚醒させる糧とする。また、奪った魔力を一人の人間に分け与えることで取り込んだ魔力とその魔法適正を扱えるようにする。
サクラ「セレスはなんで戦闘中だなんて嘘ついたの?」
セレス「面白そうだったから!目覚めドッキリ!」
サクラ「…。目覚めドッキリならしかたないね。」
セレス「うんうん。仕方ない仕方ない。えへへ。」
ライアス「…いいのかよ。」
次話は明日の17時投稿予定です。
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