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エンジョイ勢のなんでもない日常  作者: SIN


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プロローグ

 毎日毎日、俺は学校から帰るやいなやゲームをしていた。

 オープンワールドのアクションRPGのそのゲームでは、剣術だけじゃなくて魔法もある中、銃器もある世界で、主にモンスターを倒して経験値を稼いでレベルを上げていくという、特に変わったところもない普通のゲームだった。

 ストーリーについては、魔王が復活したので倒す。みたいな大まかな流れは知っているものの、俺の楽しみはストーリーではなかったためスキップできる所は全てスキップしたので細かくは分からない。

 敵を倒して経験値を稼いでレベルを上げさえすれば強くなっていくゲームは、現実世界で低迷していた俺を夢中にさせるには十分で、スキルポイントを割り振るだけで新しい技を使えられるゲームに対し、本気でこんな世界に行きたいと。

 確かに俺はそう思った。

 別に変った感情ではないはずで、誰もが1度は異世界に行きたいと考えるはずだろ?

 まさか、本当に異世界に行けるとは思わないってだけで……。

 異世界に転生したことは最初は全く気が付かなかったが、俺の住んでいた村が大火事で火の海になった時に思い出したんだ。

 ヘッドフォンをつけてゲームに没頭していたために逃げ遅れ、火事に巻き込まれて死んだ前世の記憶ってやつを。

 前世の記憶を思い出したとき俺はまだ子供で、両親を亡くしたことで孤児院に行き、そこで冒険者になって困らない程度の勉強と訓練を受けて育った。

 冒険者にさえなれば経験値を稼いですぐに強くなれる、スキルポイントを溜めたら色んなスキルを覚えられる……。

 けど、いざ実際に冒険者になると、そんな便利な機能なんて一切なく……それどころかスキルポイントという概念すらなかった。

 実に現実世界らしく訓練でしか強くなれないが、実にファンタジーな世界らしく訓練をすることでひらめきを得られればスキルを覚えられる。

 そしてなにより、俺には異世界転生では当然にあるのもだと思っていた転生者特典”チートスキル”が、一切なかった。

 本当にただモンスターや魔王という人類共通の敵がいる魔法のある世界に、本当に一般的な人間として生まれただけ。

 これは異世界転生と言って良いのか?

 いや、前世の記憶が戻って異世界に転生していることを認知できてるんだから、異世界転生したってことになる……のか?

 とはいえ、コントローラーだったからできていた機能のいくつかは、スキルポイント同様に概念事消えていることもあって、逆にスタートボタンを押して確認していたステータス画面は、この世界では冒険者になると必ず腕につけられる”通信機”という機械を起動させれば見ることができた。

 ようは通信機1つでメニュー機能をカバーできているといって良いだろう。

 妙にハイテクな世界なのに、モンスターが存在しているせいで世界そのものは閉鎖されている感じがしていて、だだっ広いフィールドに点々と人が住む村や町があるというRPGの風景だ。

 ともかく俺は、前世の全く役に立たない記憶を思い出しただけの一般的な冒険者になった。

 チート機能もないんじゃあただただ生まれ変わっただけだと割り切って、新しい命を生きるしかない。

 ボス級モンスターの攻撃パターンは知っているけど、ボタンを押すだけで”避け”とか”ジャンプ”ができていたゲームと違い、ここでは自分の体を動かさなければ剣1つ振り下ろすことも出来ない。

 ゲームパッドで慣れ親しんだボスの攻略法と、実際に体を動かして戦うボスの攻略法が同じなわけないんだから、確実に俺よりも熟練冒険者の方が詳しくモンスターのことを理解している。

 行きたかった異世界は、敵を倒してレベルを上げさえすれば強くなっていくゲームの世界、だったんだけどなぁ……。

 これじゃあ異世界転生特有の極上イキリ「俺TUEEEE」も、女性キャラクターを侍らせる「ハーレム」も、チート機能をふんだんに発動させておきながらの「俺また何かやっちゃいましたか?」もできないじゃんか。

 でもまぁ、そんな世界だとはいえ好きだったゲームの中に転生したんだ。

 折角だし、前世同様にエンジョイ勢としてこの世界を楽しもうじゃないの。

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