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人の命も虫の命も

意味ありげなサブタイトル、その意味は?

今話の中で残酷な描写があります。

苦手な方は飛ばしてください。

でも今話を飛ばすと……

いえ、なんでもありません。m(--)m

 トルーマンはツルハシを放してきょとんとした。

 抜剣の構えをした女性騎士が自然な歩調で歩いて近づいて来る。

 殺気も何も感じないごく自然な表情でいるので、その不自然さに首を傾げる。

 さらにその背後で待っているメイド服の女は背中に縦長の箱を背負っている。

「いったい何を……」

 トルーマンはその先を言えなかった。


 騎士が一閃した剣はトルーマンの首を横切ったかに見えた。

 だが首はまだ繋がってるように見える。

 騎士はその剣先を首の切れ目にそっと差し込むとひょいと空中に放り上げた。

 するとトルーマンの首は血潮の長い尾を引きながら背後のメイドの方に飛んで行き、背中に担いだ箱の中に逆さまにストーンと入った。

 その時メイドの顔に血の斑点が三つほどかかる。

 だがメイドの表情は無表情だ。

「ななななな……なんだ。何をしたんだ?」

 イーグル男爵は口から泡を飛ばして叫んだ。

 それに対してブーン子爵はにこやかに説明をした。

「ああ、すまん。状況が理解できないうちに執行してしまったな。これは死者を冒とくしたときに、その者の首を切って箱に納めるという古式に則った儀式でな」

「そんなの聞いたことがないっ!!ななな……なんだ? 俺も斬る気か? できるわけないだろっ、ただの騎士が男爵のこの吾輩をっ。然るべき手続きも通さずにっ」

「いやいやこの国で実際にあったことだが、王の葬儀に王太子が首を斬られたこともあった。それ以来秘かに伝えられた伝統的な儀式なのだ。もちろん余分な手続きも何もいらない」

「いやだぁぁぁ、馬鹿野郎っ!来るなぁぁぁっ!げほっごほっいやあ"ぁぁ……!!」

 男爵が暴れまわる為、騎士スーザンの斬った首が地面にゴロッと落ちて転がってしまった。

 土塗れで汚れた首を剣先で掬うようにしてポンッと跳ね上げるとバランスが悪く、メイドのミリーの手前に落ちて来た。

 間に合わないので、ミリーはそれを足でポンッと蹴り上げると、横向きに背中の箱に入った為ゴトゴトと音を立ててやっと箱に入る。

 二人分の首が入るように箱は縦長に作ってあったが、そんなわけで綺麗には収まらなかった。

「こらっ、ミリー。足で蹴り上げるなど死者を冒涜しておるぞ」

 そのときスーザンはすぐに抗弁した。

「恐れ入りますがご主人様、イーグル男爵は我が領地においてアドラーお嬢様を人質に取ると言う大罪を犯したもの。死者であっても罪びとなれば、このくらいの失策はご容赦願いませんでしょうか」

「ふん、折角の古式床しい儀式を美しくない形で行い本来なら首を刎ねるところだが、イーグル男爵が潔く刑に服さなかったのが原因でもあり、師匠のスーザンと見習の騎士ミリーへの罰は減給三か月とする」


 その後首は男爵の領地に送り届けられ、事の委細は国王にも報告された。

 結果、イーグル男爵の長男が男爵位を継ぐ代わりに、この度のこと一切遺恨を残さぬことを王室より魔法契約で確約させられたというが、それはまた別の話である。



 ブーン子爵他兵士たちが引き上げた後、何故かスーザンとミリーが残って話をしている。

「師匠、すみません。つい足が出てしまい、あんなことに。死者を冒涜したことになり私も斬首になるところを……お口添え頂きまして、ありがとうございました」

「良いのだ。ところでお前と私の三か月分の減給は合計いくらになるか分かるか?」

 ミリーは分かり切ったことを聞くスーザンに頭を傾げたが素直に質問に答えた。

「ではその倍額を渡そう。私は宿舎のベッドで寝ているから、起きたら私の分を渡しておいておくれ」

「師匠……言っている意味「ミリーよくやった。俺の方から三か月増給にしてやる。スーザン殿にはお前の方でうまくごまかしてくれ」」

「…………お父さん……」

 ミリーは驚いた。

 師匠のスーザンだと思って話していた相手が目を逸らした瞬間に父親のダランになっていたからだ。

「そうそうトミーにも宜しくな」

「あっ、待って……」

 ミリーは父親を引き留めようとしたが、その姿は消えて一頭の白い蝶となって飛んで行ってしまった。


 ミリーが子爵邸の使用人宿舎に戻ると、なんとスーザンの部屋で彼女はベッドに寝ていた。しかも騎士の装備をつけたままである。

 目覚めた彼女は、驚いてしまった。

「わ……私は今日の大事な役目を忘れて眠っていた。おかしいな。出発前の紅茶を飲んだその後、寝てしまったらしい。この失策は死んでお詫びを「待って下さい、師匠。多分私の父が師匠を眠らせたのかと」」

 それから事の顛末をミリーが話し、減給分の倍額のお金を渡すと、ただただ驚くばかりだった。



少し時間が戻って。



 僕はミリーが子爵邸に戻って行く姿を見送っていた。

 どうしても父さんの仇を自分の手でとりたかったから、スーザンさんと代わらせてもらったのだ。

 僕は生きているスーザンさんをちらりと見ただけでスーザンさんの肉体を再現して変身できるL9までレベルアップしていたのだ。

 それは何故か?

 虫や動物でも悪魔のスキル吸収は使えて、さらにきちんとレベルアップの経験値になることを発見してから僕はどんどんレベルアップして行ったということだ。

 森へ行って捕虫網で大量に昆虫採取して吸収してみたり、夜に光に誘われて集まる虫を吸収してみたりしただけで同数の人間を吸収するのと同じ経験値があるのだ。

 

『悪魔のスキルL6を獲得しました。生体から全ての記憶を手に入れることができます』

『悪魔のスキル吸収L7を獲得しました。生体からスキルをコピーすることができます』

『悪魔のスキル吸収L8を獲得しました。生体からスキルを強奪することができます 』

『悪魔のスキルL9を獲得しました。生体の肉体的特徴をコピーして再現して変身することができます』


 そして今僕は地面に這っている蟻の大群を見て吸収をしている。

 そして、遂に……



『悪魔のスキル吸収がL10になりました。

生体から魂を奪い肉体に憑依することも可能になりました。更に変身可能になった肉体を体内魔力の許す限り召喚することができます。また変身の対象の年齢を自由に設定することもできます』

 そうなんだ。僕は悪魔だったんだ。でも人の魂を奪って廃人にするのは悪魔の領域に足を入れることになる。それだけは一線を超える気がするので封印したい。


 その代わり……


 トミーの周りに色とりどりの蝶が舞っていた。

 彼は笑っていた。蝶と遊び戯れるようにして歩き始めた。

 歩きながら彼は考えた。

 そうだ。亡くなった家族を召喚しよう。

 そしてウォルナッツ村のみんなも。

 僕は失ったものを取り戻すんだ。

 そう思いながらトミーの背中は遠ざかって行く。





 でもそれはきっと自然に逆らうこと……悪魔の所業なのでしょうね。





 完

 

今話で完結になります。

励ましのブクマ、そして励ましの高評価。

私は幸せです。

ありがとうございました。

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