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イーグル男爵とトルーマン

今話では荒事になりそうな場面があります。でもなりません。

今後は次話辺りでそうなる予定です。

 僕は『こんがり亭』では仕込みもするし厨房の中で主に働くが、同時に客が入って来た時看板娘の娘の手助けもして、料理や飲み物の手渡しや注文の引継ぎをする為に食堂の方にも顔を頻繁にだしている。

 悪魔のスキルL5はいまだにその上へのレベルアップはないが、相手と目を合わせる時間が1分からどんどん縮まって、今では2秒くらいにまでなった。

 2秒くらいなら不自然なく目を合わせれる時間なので、その二人が店に入って来た時、彼らの名前や身分、弱点や秘密、隠されている恥などを瞬時に分かってしまった。

 一人はイーグル男爵で、ここから馬車で4日くらい離れた所に領地のある貴族だ。

 もう一人は男爵家の料理人トルーマンだ。

 イーグル男爵はどうやら食道楽の人間であちこち料理人のトルーマンを連れてグルメ旅行をしている。

 トルーマンは味覚が鋭く、一度食べたらどんな材料や調味料が使われているか分かるらしい。

 そうやって覚えた料理を領地に戻っても再現して作り男爵の機嫌を取ってるという訳だ。

 食べ終わってから男爵は僕に向かって言った。

「おい、料理人をここに呼べ」

「わかりました。今呼んできます」

 相手が貴族なので逆らわず厨房に行き、親父さんに耳打ちをする。

「いってえ、何だって言うんだよ」

 親父さんは呟いてから食堂に出て行く。

「どんな御用でしょうか?」

「この料理に使っている調味料の油は香ばしい香りがするが、何を使っている?」

「へえ、ごま油でさあ」

「ただのごま油ではないだろう?何を混ぜた?」

「へえ、お客さん、それはちょっと……この店の看板の味なもんで、お教えする訳にはいかねえんで」

「おい平民、これは命令だ。さっさと言え」

「そうおっしゃってもこればっかりは」

「そうかそれじゃあ表に出ろ」

 イーグル男爵は親父さんの胸倉を掴んで店の外に引きずり出すと地べたに座らせ抜剣をした。

「もう一度言う。命令だ。ごま油に何を混ぜた。言わなければここで打ち首だ」

 周りにどんどん人が集まって来る。

 僕はその人ごみに混じってウォルナッツ村のマーサおばさんに変身してから、声を出した。

「貴族さん、そんなことしなくてもあたしが知ってるよ」

「何? 誰だ。どこにいる?」

「どこでも良いじゃないか。教えてやろうか、ごま油の中に何が入ってるかさ」

 イーグル男爵も一緒について来たトルーマンも同時に声をあげた。

「「何が入ってるんだ?」」

「あんたたちが知りたがっていたそのごま油に入っていた物はねえ」

「「なんだっ。早く言え」」

「料理人の長い年月をかけた血と汗の努力だよ。わかったかい。このおタンコナス!」

「なにぃっ!どこにいるっ」

「ここにいるよっ」

 


 マーサおばさんは小太りの口うるさいが陽気な人だ。

 人垣がさっと左右に分かれてその姿を現したが、ごく普通の田舎のおばさんだ。

「おいあんたはイーグル男爵だろう。領地の面倒もろくに見ないで、あちこちを食べ歩くしか能のない馬鹿貴族だろう」

「なにをっ? なんで吾輩のことを知ってる? お前は誰だ?吾輩を馬鹿にしたな。生かしてはおかん。そこになおれっ」

「知ってるよ。あんたの頭は貴族は偉くて平民はクズだって信仰で染まってるだろう? 小さい頃にそう思ってから考えるのをやめたんだよ。何でもこれはこうだって決めつけたら後は何も考えなくて良いから楽だもんね。考えないから馬鹿になったんだ」

「きっさまーーっぶふっ!!」

 マーサおばさんは飛び掛かって来たイーグル男爵の顔に砂をぶつけた。

 トルーマンは腰につけていたナイフを構えてマーサに向かって来た。

「おのれ、女の分際で男爵様に「トルーマン、あんたは素晴らしい味覚を持ってるよね」なっなにぃ、俺の名前をどうして?」

「どうでも良いよ、そんなことは。だけどその才能がお前を駄目にしたのさ。人気の料理を食べては材料を全て当てて、同じものを作って行くうちにお前自身の独創的な料理ができないようになっちまった。全部人真似だ。つまりあんたは味泥棒って訳だ。だからお前の作る料理には何の価値もないんだよ。泥棒料理で少しも心がこもってないものね」

「くそぉぉぉ、まてぇぇ、女ぁぁぁあ」

「あらら、怒ったよ。本当のこと言われると人間って怒るって本当だねぇぇ。ここまでおいでよ」

「トルーマン、その女を掴まえろっ」

 イーグル男爵とトルーマンがマーサおばさんを追いかけるが、彼女は中年の小太りの女なのに冒険者か傭兵かはたまた騎士のように足が速い。

 マーサおばさんは鬼ごっこを楽しむように、時々止まっては二人が来るのを待ってからまた逃げる。

 それだけじゃなくて、二人のそれぞれの秘密を大きな声でからかいながら叫ぶ。

 それで余計に狂いながら追いかけるが、二人ともそれほど体は鍛えてないから息切れして苦しくなり汗まみれで地べたにしゃがみこんでしまった。

 マーサおばさんは町の人々が見ている所をグルグル回って、その様子を見せていたので二人とも恥ずかしくなって、その場にいられなくなってしまった。

「ゼーゼーゼー、女……名を聞こう。貴族を馬鹿にした報いは一族郎党皆殺しに値する。度胸があれば、どこのだれかを言ってみろ。ふん、言わなくても調べればわかるけどな。ひぃーふぅー」

「そうかい。調べて分かるなら言う必要はないね。せいぜい金を使って調べるんだね。会いに来るのを楽しみにしてるよあはははは」


 親方はとうの昔に店に戻っていた。

 僕も男爵たちが立ち去った後に店に戻った。

「あのおばさん見たことがあるぜ。えーと、マーサさんと言ってここにも食べに来たことがある。確か……えええっ??」

「どうしたんですか? 親方」

「マーサさんて確かウォルナッツ村だろ。あの村はお前の村じゃないか。お前たち父子以外全員全滅してるだろ」

「それならきっと人違いですね。世の中似た人はいるもんだから」

「??????」



 それから男爵は裏社会の人間まで使って、女の正体を探った。

 だがポールタウンの誰に聞いても、女はウォルナッツ村のマーサおばさんだと言うのだ。

 但しウォルナッツ村は国外から来た傭兵によって皆殺しにされたという。

 だから殺された筈のマーサが生きている筈がない。

 男爵の捜査はそこで一時終わった。

 だがだいぶ経ってからの追加情報で、生き残りが三人いたという話があったのだ。

 

「生き残りがいたならそいつを殺してしまえ」

 怒りのぶつけどころを失った男爵は生き残った農民のダランとトミーとボーン子爵の所にいるミリーに殺害指令をだしたのだ。

 同じ村の出身者というただそれだけの理由で殺すというのは理不尽そのものだが、男爵の頭の中はそういう風にできあがってしまっているので、本人はなんら疑問に思わないのだ。


「ウォルナッツ村のミリーか?」

 ミリーは油断していた。ちょっとの間にお嬢様のアドラーが男たちに抑えられ喉元に短剣を突き付けられていたのだ。

「俺たちの狙いはお前だ。大人しく剣を捨てればこの娘は放してやる」

  男の数は三人だ。戦えないことはないが、人質がいるので身動きが取れない。

 町中で通行する人はいるけれど、みんな見ない振りをして離れて行く。

 命まではとらないだろう。

 だがいったい私になんの用事が?

 ミリーはゆっくり鞘ごと腰から剣を外し、そっと地面に置いた。 

面白い、続きが読みたいと思いましたら面倒がらずにブクマを……!

きっと良いことがあります。たぶん……。(^O^)”

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