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「52話 王都からの出発 」

「52話 王都からの出発 」-------------------------------------------------------------

サスティニアで初の黒歴史となったほっぺちゅー事件から早三日。


ほっぺにキスをされて張り切ったレオはお金を惜しまず使って最高級の羽毛ベッド5個、周囲からマナを吸収して夜になると自動で着くライト(各部屋分)、ドワーフ数百人を総動員させて王都の下水道までつないだ洋式トイレ、様々な野菜、フルーツ、各種調味料、いろんなお肉を1日で用意した。

噂によると王族権限でお城の兵士も動いたとかなんとか。


やりすぎだよね、レオに食材を持ってきたからアイテムボックスに入れてって言われてレオの元に行ったときはドン引きした。

荷車5台山盛りの食材用意してたんだもん。


私もトイレ工事に来たドワーフの知恵を借りながら五右衛門風呂を作って快適に家に住めるようになった。


ちなみに、レオはケットシー王にこっぴどく怒られ、さらに貯金も底を尽きたようだ。

数百人のドワーフ分の人件費を考えるとなぁ。ほかの仕事よりも優先させたからそこでもお金かかったみたいだし。


防具作成を依頼してから3日目に親方の元に防具を取りに行った。

今までの防具はシャツの上から装着していたけど今回の防具は長袖の服に鎖帷子が埋め込まれているようなもので全く重くない。

下はホットパンツの上から軽い金属のプレートを並べたスカートみたいな防具、今間の装備と合わせるとなかなか冒険者っぽい見た目だった。

親方曰くアースワームの硬質皮から軽くて丈夫な魔鉱石、重めで特に硬い重鉱石が取れたようで、それぞれ鎖帷子とスカート、靴に使ったみたい。


トルペタ君の鎖帷子もミスリルで、服の下に着れるような肌着タイプになっていた。


フル装備でも重みをあまり感じないし動きやすい。靴は靴の先端、かかとを重鉱石で作って重さを最低限に抑えたらしい。

予想以上に素材が余ったみたいで、いろんな矢を大量に作ってくれたらしくトルペタ君がすっごい喜んでた。



旅立つための準備も終え、私達は冒険者ギルドで依頼を受けた。

依頼内容は南東の大陸で増えだした魔物の駆除だった。

魔物は魔大陸を中心として生息しているようで、王都側への侵略は最低限にとどめられているため、王都より西には魔大陸の強い魔物ではなくもともと生息している弱い魔物しかいない。

しかし南東の大陸は自然があふれるような大陸らしく、王都のような大きな町はない。

そのため冒険者を常に募集している、いわゆる常駐型の依頼らしい。


もともと私の目的は世界中を練り歩くことで神力を星にいきわたらせることだったから遠出は大歓迎だった。



そして今、私達は南東の大陸に渡るために王都の東にある小さな港へ来ていた。

港は王都から数時間歩いたところにあるため馬車を使わず徒歩で向かったんだけど人通りも多いせいか道中に魔物はいなかった。


「ほ、ほんとに船に乗るんですか?しかも数日?海には家よりでかい魔物が住んでるって聞きましたよ??死ぬんですか俺」

港について海が一面に広がる風景に感動していた私にトルペタ君が涙目で訴えてきた。

そっか、クルシュ村からあまり出たことが無いってことはトルペタ君も初めての船なんだ。


「私も船は初めてだけど、さすがに魔物対策とかはしてるでしょ~。案外、その大きな魔物は温厚で襲ったりしてこないかもよ?」


「いえ、襲ってきますし襲われたら死にますよ。」

「「えっ」」

カナちゃん...私たちのかすかな希望を奪わないで..。

そんな好戦的で致死率の高い魔物が海に生息しているならこんな依頼誰も受けないんじゃ....。


「ミウシアちゃん、トルっち、安心しろし~。この航海用の魔道具があれば海の魔物は寄ってこないんだよ~。」

ごそごそとカバンから何かを出そうとするレオ。しかしだんだんその顔は曇っていく。


「アレ?っかしーなー。ん~?....あ!...ごめん間違えて売ってきちゃったわ~」

「アホなんですか!!!!!!!!あーもう、それじゃあ港で新しいの買うですよ...ったく、レオに任せるとロクなことにならないです....。」

どうやら魔道具は港でも買えるらしい。

本当に大丈夫なんだよね?私はトルペタ君と一緒に不安な顔でカナちゃんを見つめた。


「だーいじょうぶですから!ほら、あそこの船乗りの人に聞いてみるですよ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんでこんな時に限って魔道具が値上がりしてるですか....。乗船賃4人分と魔道具分で皆の全財産ちょーどじゃないですか....。」

今、魔道具の作成に必要な素材が枯渇しているらしく、レオが売った魔道具よりも数十倍も高かった。

観光地とかにあるぼったくり系の体験ツアーじゃん....。


「ま、まぁこれで無事に行けるんだろ?アルカナ??...って...え...この船で.....?」

船乗りに案内された先で海に浮かべられた船をみてトルペタ君が固まる。


「うっわー、マジか~。」

王族のレオもドン引き、それもそのはず、案内された先にあった船は私が想像していた大きな海賊船のようなふねではなく、地球でいうところのクルーズ程度のでかさだった。でかいボートって感じかな。

南東の大陸に向かって自動で鍛冶を取る機構が組み込まれた魔道具を使用しているため、船長を必要としない。

つまり私達4人が乗れれば十分のためこのサイズの船をあてがわれたのであった。


この世界の海は波が非常に安定していて、よほどのことが無い限り転覆する危険が無いらしく、帆を広げてゆっくりと揺られていればいずれ目的地に到着する、といったふんわりとした方法の航海が一般的だってさ。

とカナちゃんが解説してくれた。


ちなみに魔道具は船の前部の海に使っているあたりに設置するものだと教えてもらった。

海の魔物を捕食する強力な魔物の素材から作られたもので、海の魔物はその魔道具から直感的に逃げるらしい。


「ま、こんなもんですかね。さっさと乗り込みますよ...どうしたんですか?3人とも。早くいくですよ。」

そういうものだと説明されても不安しかないんですけど....。


カナちゃんに急かされてしぶしぶ船に乗って出発するのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇船旅2日目


「ふ~~~~~~~」

海に揺られながら煙草を吸って、えさにかかる魚を待つこの時間は素晴らしい。

最高じゃん船旅。


「けほっ、けほ。ミウ後ろの方で吸ってくれないと全部煙が後ろに来るです~~。」

「あ、ごめん~。」

椅子サイズに切り落とした丸太を転がしながら、船の後ろの方へと移動した。

釣り餌を回収し、再度海へと投げ入れる。


「にしてもミウは器用ですねぇ、即席とはいえ釣り竿を作るなんて。」

私が今使っている釣り竿は家の材料となっていた精霊樹から作ったものだった。

ドワーフたちがやってくれたトイレ工事の際に家に穴をあけたためその端材から作ったんだけど、滅茶苦茶硬い上によくしなる。

まるでただの木の枝に見えるけど立派な釣り竿だ。

糸はトルペタ君のボウガンの余り、餌はフォレストワームを使っている。


魔物は来なくてもただの魚は船に近寄ってくるらしいのでこうして暇つぶし兼食料集めをしている。


「....それで、トルペタ君はまだ調子悪いの?」

「唸りながら船室で横になってるです。森暮らしが長いし海自体が初めてだから仕方がないですね~。」


「やあ皆。トルペタ君ならオレが魔法で眠らせてあげたから今は落ち着いているよ。」

レオはトルペタ君の看病をするために精霊術をかけてあげている。

つまり普段のイケメンチャラホストではなく、イケメンさわやか王子モードなのであった。


「王子モードで近づかないでよ、調子狂うから。」

ただただイケメンなだけのレオに近づかれるとなんかこう、照れ臭い感じになる。

チャラホストモードの時は適当に接せれるのになぁ。


「わかったよ、オレはトルペタ君の看病を引き続き行うから、2人とも寒くなったら中に入るんだよ?」

なにあれ、ほんと別人。


「なんだかむかつく。」

「.....です。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇船旅5日目

「うわ、見てくださいミウシアさん!でかい魚がいますよ~~~!!あれ釣ってください!!」


「あれは大きすぎじゃない?取れるかなー、よっと。」

船旅も早5日目。

もうついてもいいんじゃないかなぁと思いつつもできることと言ったら釣りしかないので相変わらず釣りを続けていた。

カナちゃんなんかは暇すぎて海に向かって魔法の練習をしているしレオは暇が一番嫌いだから寝込んでるんだけどね。

何かあったら起こして~とか言ってた。トルペタ君の看護も終わったので今はチャラホストモードに戻っている。


食糧は十分すぎるほどあるのでどうにでもなるんだけどすぐに消費しちゃうのもあれだから魚が釣れるたびに皆に料理をふるまっている。

刺身は最初皆に受け入れられなかったけどすぐに気に入ってくれた。


「トルペタ君もやってみなよ。ほら丸太と釣り竿用意してあげるから。」


「ありがとうございます!じゃあ勝負しましょう、先に連れたほうが秘密を一つ言うっていうのはどうですか?」


「あれれ?トルペタ君勝てると思ってるの~?トルペタ君の秘密楽しみだなー。」


「ミウシアさんこそ、村では狩人もしていた俺に勝てると思ってるんですか?」


結果、私が勝って「最近アルカナのことが気になっているけど他種族だから自制している」っていう秘密を聞き出した。

カナちゃんが押したらいけるんじゃないのこれ。頑張れカナちゃん!


こんな楽しい海の旅も終わりが近づいていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇船旅10日目


「ねぇカナちゃん、もう10日だけどまだつかないの?」

水魔法でお手玉をしているカナちゃんに向かって愚痴を漏らした。


「私も気になって調べたんですけど、この船に組み込まれた機構からわかった事実があるです。正しい進行方向に風が吹いたときだけ船が進む機構でしたので、風が全く吹かなかったり違う方向への風が吹いている場合はその場にとどまってしまうらしいです。」

そう言われてみると船が動いている気配はないし、ここ最近はずっとこんな感じだった気がする。


「え、これって普通なの?よくあることなの?」

「いえ、ここまで風が吹かないことはないです。つまり何か普通じゃない出来事が起きてるです。....まぁだからと言って今できることは何にもないですが。」

このままじゃあ死にもしないけど退屈で精神が参っちゃいそう。

景色も変わらないし。

現に面白いことを糧に生きているレオが元気なさ過ぎてずっと寝ている。


「何とかしたいですけど、何にもできませんね~。諦めて釣りでもしましょう。」

トルペタ君はトルペタ君で釣りにハマってしまったらしく、1日中ずっと釣りをしている。

大丈夫なのかな?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇船旅24日目

「いやさすがにもう限界!!!!!」

大声を上げて立ち上がったのに誰も反応してくれない。


虚ろな目で釣りをしているトルペタ君、魔法をどれだけ遠くに飛ばせるか遊びを編み出してずっと一人で魔法を出し続けてるレオ、水の球のお手玉を増やし続けてもはや只の輪っかに見えるほどまで極めてしまったカナちゃん。

そんな私も神式語の教本を読み返しまくった結果マスターするほどまで極めてしまったんだけど。


「絶対おかしいって!!ねぇトルペタ君!!!」

「は、はは。昨日より0.2ミリでかい...ミウシアさんコレ入れといてください。」

目が虚ろで私の方を全く見ないで釣った魚を渡してくる。

釣りによって精神をかろうじて保たせているだけかもしれない。


「カナちゃん!!」

「魔法を維持してる最中に魔法を出しても意識の外で制御したまま魔法を唱えればいけるのであれば理論上いくらでも増やせるデス。増えてきたら1つのグループとして認識しまた新たに唱える。それの繰り返しじゃないデスか。それならこんなことも....ブツブツ」

ダメだこりゃ。


「レオ~!!!!」

「あ、見てみてミウシアちゃん!オレの魔法あんなに遠くまで飛ばせるようになったんだよ~すげくね~?マジやってみるもんだわ~。次は~~~~~!」

レオは楽しみさえ見つければいくらでも遊べるみたい。

一番子供っぽいけど一番精神力が強いのかも。


はぁ、もう少し待つしかないのかなぁ。

皆から離れて船の後ろで煙草を吸って落ち着かせる。


「おかしい.....おかしい...なんで....」

その時、船の後方にある水の入った樽の影から声が聞こえてきた。


ん~??


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