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「51話 家の購入 後編 」


家を買いにバーニア地区まで来た私たちはV系バーニア族店員に好条件のお家を紹介してもらっていた。


「最近客こねーから...ふーーーーー。こっちも必死、あとその家掃除しないと使えない。ぴょん」

どうやら客を逃がさないように安くても売ってしまえ戦法らしい。

こっちとしては願ったりなんだけど、掃除だってすればいいし修繕くらいだったら私ができるし。


「とりあえず見せてもらおっか。」

内見だー!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ここぴょん。」

「汚っ!!!」

木でできた三角屋根のコテージのような大きな家なんだけどものすごい量の蔦に覆われている。

魔法の力なのか材質がいいのかわからないけど建物自体の劣化は無いため床が腐ってしまっているようなことはない。

家の横に生えている木から蔦や落ち葉でとても人が住めるような環境ではない。


「これは...大掃除が必要ですね。」

「この家、精霊樹から作られてるみたいだから劣化は心配ないって訳か~、掃除すればハンパないくらいいい物件になると思うよコレ~。」

「....い、一応中入ってみましょう?...うわっ」

トルペタ君について建物の中に入ると部屋の中は開けっぱなしの窓、扉から入ってきたと思われる落ち葉と埃であふれかえっていた。

前の住人が使っていたと思われる机や椅子、ベッドなどもあったがもちろん埃や落ち葉でぐちゃぐちゃになっている。

トイレはドワーフたちに頼んで一から作り直したほうがよさそうだった。

6つの個室にはちゃんとドアが付いていてシェアハウスみたい。


予想以上に広く感じるし掃除をするだけで別荘になりそうだ。滅茶苦茶いいじゃん。



「ここ買おう!!!」

即決だった。皆も納得してくれたし四人で力を合わせればすぐ綺麗になるよね!

アイテムボックスからNiaを取り出して支払いが終わるとV系は「後は勝手にしてー」と言い残し去っていった。

手続きとかないんだ...。


その後、大掃除が始まった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「トル君は巻き付いた蔦を切ってまとめるです。わたしが家の中を水まみれにして全て汚れを洗い流すですからミウはあとで乾かしてください。」


「オレは~?」


「トル君が切った蔦でもまとめとくです。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「精霊樹でできてるからどれだけ強く水を当てても壊れないよ~。」


「言ったですね!!<大洪水>ウォーターフラッド!!!」


「カナっちいいいいい!オレが家から出るまでまってぇぇぇええぇえぇぇえぇええ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


カナちゃんが外と中の両方に水魔法で大量の水で豪快に洗浄を行った。

もはや家を洗濯機にかけてるくらい豪快だったし、レオが巻き込まれてて笑いつかれた。

細かい汚れはレオが<浄化>クリアで綺麗にしてくれた。クリアの魔法は不純物とか表面についた汚れを落とせるらしい。

だから落ち葉とか枝とかに使ってもゴミを綺麗にするだけでゴミ自体を無くすことはできないんだって。

トルペタ君は手持ちのナイフで一本ずつ根気よく蔦を切り落としていってくれたので家に巻き付いていた蔦はすべてなくなった。

切り終えた蔦や落ち葉はレオがホワイト・ファイアで焼いてくれた。

残るは水にぬれてびしょびしょになった木造りの大きな立派な家だ。


「よし、それじゃあ仕上げを行います!家全体に<乾燥>ドライ!!」

私が魔法を使った瞬間、大きな家からシュウウウと音を立てて水蒸気が上がる。


「うん、これで完成!!」

「つっかれた~マジ見違えたわオレらの家~」

「腕が...疲れた...。これ腕力上がったりしてないかな...。」

「まぁいい運動になったのは間違いないですね。」


大掃除を終えた頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。

家の中に入ってみると水洗いからの乾燥により木本来の心地よい匂いがしてとてもいい感じになった。

椅子やテーブルはカナちゃんが派手に洗い流したから無造作に転がっていた。

それぞれの部屋を決めた後、一番端っこの部屋をお風呂に改造していいか確認するとみんなが喜んでくれたため明日からさっそく取り掛かろう。


ひとまず入り口のドア、窓を塞ぐためまだストックのあるメイプルの木を取り出してドアと窓を作った。

装飾も穴もガラスも取っ手も何もない、木の板を何個か作ってつなぎ合わせたものだけど何にもないよりはましだよね。


家の明かりも、今はカナちゃんがライトの魔法で照らしてくれているけどこれも何とかしなきゃなぁ。


ひとまず家の購入と大掃除が終わった私たちはケットシー地区に戻り「酔ってけっとしー」へと帰ってきた。

ご飯を食べながら明日からについて話し合うことになった。


「明日はどうします?どちらにせよ防具ができるまで後3日は王都に滞在する必要がありますし...。」

「やることをまとめるです。今日綺麗にした家を使えるようにするためには明かり、新しいベッド、食料、トイレですかね...。あ、お風呂はミウに任せるです。...少なくとも色々集めるためのお金が足りないです」

食糧は私が買ってアイテムボックスに突っ込んでおくとして、トイレはドワーフへの依頼、新しいベッド、ランプは家具が売ってるお店...んーー、圧倒的にお金が足りないから今は無理かも。


「じゃあオレに任せてちょーだい!お金ならいくらでもあるし~?仲間に入れてくれた記念にそこらへんのもろもろは全部任せてよ~。明日中に全部依頼すっから~!」

「でも、それは申し訳ないよ。レオに頼りすぎちゃう....。」

いくら仲間になったとは言え、諸経費全てをレオにお願いしちゃうのは気が引ける。


「じゃあさ~。」

と言って私のほうに向きなおるレオ。


「お礼はミウシアちゃんのキスがいいな~。」

キス!?!?あーーーー、ニカとの見られてたもんなぁ。


「ミ、ミミミミウ!!!やるです!キスで済むなら安いもんです!!もうすでに済ませてるんだからもはや変わんないです!!」

「ははは...」

声を荒げてレオにキスするように促してくるカナちゃん。

あれ!?キミ、ニカとのキス見て顔真っ赤にしてなかった!?そんなに早くケットシー街から出てバーニア地区で暮らしたいの!?

トルペタ君は笑ってないで助けて!!


「やらないよ!?!?」

「「「「「キース!キース!」」」」」

気が付くと周りの客がキスコールをしていた。

くそ~~~、もう逃げ場がないじゃん。

レオはここまで大事になるとは思っていなかったらしく、ごめんね、と手を合わせてジェスチャーをしていた。

謝って済まないとこまできてんだよおおお!

ああもう!!!


席から離れてレオの前までくるとレオはまさか私が本当に受けるとは思ってなかったのか、目が泳いで焦っている。

ふーん、なんかその反応可愛いじゃん。


「あ~、え~、その、ミウシアちゃーん?じょ、じょうだんだから....。」

「「「「キス!キス!キス!キス!」」」」

そんなこと言っても周りはキスコールのテンポをどんどん上げている。

カナちゃんは手で顔を塞いで指の隙間からこちらを見ている。

そんなお約束しなくていいよ...。


「立って」

「は、はい。」

レオが席から立ちあがり頭を掻きながらバツが悪そうにこちらを見てくる。


「目!」

「へ?」

「つぶって!!!」


「「「「おおおお~~~~~?????」」」」

口にはしないから!!!!盛り上げんな!!!


目をつぶったレオを見る、こいつほんと顔整ってるなぁ。

毛穴全く見えないつるつる肌じゃん。

あんまり見つめると恥ずかしい気持ちになってくるのでさっさと終わらせよう。


目をつぶって頬を赤く染めたレオに近寄って、すべすべの綺麗な頬にちゅっと軽くキスをした。


「「「「フゥウウウウ~~~~!!」」」」ピューイッ!!!

辺りの盛り上がりが最高潮になり中には指笛で盛り上げてくる人もいた。


「はい!おしまい!」

頬を触って顔を赤くしているレオを見て恥ずかしさが倍増してきた。


先に一人で煙草を吸おうと部屋に戻る前に煽ってきたカナちゃんに仕返しをしておかなきゃ気が済まない。

カナちゃんの近くまで行って耳元でつぶやく。


「キス見て照れてるけど~、前カナちゃんとトルペタ君一緒の布団で寝てなかった~?」

「ひ、ひあ...ミ...ミウ...?どうして...それを....」

みるみる顔が赤くなっていくカナちゃんを放置して、部屋へと戻る私。



トルペタ君、後は任せた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇SIDE:デストラ

私は大罪を犯した。

ミウシア教官に向けて全ての魔物の長をけしかけてしまった。

しかももう取り返しがつかない、天啓に誤りがあったことを伝えることもミウシア教官を手助けすることもできない。


ならばせめて死を持って償おう。


服を着たまま遠視の湖に入りそのまま底まで泳いだ。

地面に足を突き刺し己を湖に縛り付けた。


これで死ねるはずだ。

ミウシア教官、申し訳ございませんでした...。






おかしい。

あれから1日分の時間は息をしていないというのに死ぬことができない。


ええい、ならば投身自殺よ。


湖から出た私は神界で最も高い木の頂上まで登り、そのまま体を宙に投げた。


今度こそ、これで死ねるはずだ。

ミウシア教官、申し訳ございませんでした...。





頭から地面に激突するが衝撃すら感じない。

何故!?


「私を死なせてくれ!!!!神よ!!!!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そんなデストラの様子を眷属達は湖のほとりでくつろぎながら見ていた。


「なぁ、あいつな~にやってんだ?泳いだり飛び降りたり。」

ジアがおかしな行動をしているデストラを見ながらほかの眷属達に話しかける。


「デストラさんはミウシア様に対して危害を加えましたから、おそらく自責の念から自死の道を選んだのでしょう。無駄ですのに。」

「シーア達ってもう神様だから死ぬとかそういうのとは無縁なんだっけ?とりあえずトラちゃんの気が済むまでやらせてあげるしか無さそーだにゃー。」

そう、彼らは神となったことにより死とは無縁の存在となった。

星を管理する立場なのだ、星が安定するまで彼らはこの地で人々の監視を続けなければいけない。

現時点でできることは何もないが。


「ああやって自分を傷つけ悔やんでいる間は魔物たちも弱まっているかもしれない。あのままにしておこう。」

ヒュムの言う通り、実際魔物たちは多少の影響を受けている。

ミウシア達がアースワームの王...ミミズキングに襲われたのはデストラの脳裏に打開策が一瞬浮かんだ時に気持ちが安定し、ミミズキングの索敵能力が元に戻ったのが理由だった。その打開策もヒュムによって穴を指摘され破城したのだったが。


「ほっときましょ、気にせず私達はこうやってのんびりミウシアの様子を見てればいいのよ...あ、立派なお家に変身したわね~、あたしだったら日本のウォシュレットとかいうトイレを再現できるのになぁ。」

一体いつまでデストラは自分自身を傷つけ、追い詰めればいいのだろうか。

彼を救う術はあるのだろうか。


....悲しいことに彼が救われるのはミウシアが全ての魔物の長を討伐するまでこない。

頑張れデストラ。



「神よぉおおおおおおおおお!!!!」

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