「50話 家の購入 前編 」
ニカにキスをされている所を見られた私は宿泊中の部屋の窓枠から身を乗り出して煙草を吸って気分を落ち着かせていた。
「あれは恋愛感情を含めたキスだったのかなぁ、それとも友情的な?バーニア族は友達同士で口と口のキスをする?ん~~~~~わかんないけどもう気になってしょうがないよ~~。」
ふぅ、と一息ついて心を落ち着かせる。
とりあえず今日の買取金額とかを話すために皆と合わなきゃいけない。
よし、キスの件は全部無視して話を進めよう、そうしよう。
部屋を出て1回のバーに向かうとすでに三人がご飯を食べて私を待っていた。
「お、お待たせ!買取について話していいかな?」
皆が思い思いの顔でこちらに視線を向ける。
カナちゃんは思い出して赤くなるし、レオは思い出して落ち込んで机に伏せる。トルペタ君は意外にも普通の顔をしている。
「ミウシアちゃ~ん、オレって眼中にない~?アウトオブガンチュ~?」
伏せた状態から少しだけ顔を上げて私の方をうるうるした目で上目遣いのレオ。
あ、可愛い。...じゃない!!!頭は撫でない!!!
手が出そうになったのをすぐさま引っ込めた。
無視だ無視!!
「買取!結果に!ついて!話をする!」
私はもう一度言いなおして話をそらした。
「レオさんレオさん、ミウシアさん今レオさんの頭を撫でようとしてましたよ。手が出そうになってました。」ボソボソ
ガバッとレオが起き上がりトルペタ君の方を見つめる。
な、なんだなんだ?トルペタ君がコクリと頷くとレオの表情はいつも通りのへらへらっとした気の抜ける表情になって何事もなかったかのように話を聞き始めた。
ん~?まぁいいや。
ミミズキングの素材が合わせて137000Niaになったこと、素材は3分の1を持ち帰ってきたこと、この素材があればいい武器が作れそうなことを伝えると3人は驚いていた。
報酬の分配について話をすると、レオは資金が沢山あるからいらないと辞退した。申し訳ないと思ったけど「酔ってけっとしー」の稼ぎで十分すぎるほど蓄えがあるそうなのでここは甘えることにした。
するとカナちゃんが30000Niaを分けて後は拠点の家を買おうと提案する。
「確かに、王都を拠点とするならそれがいいな。それにまだジア様に会ったジャイアント族の人が仲間に入る可能性があるのでちょうどいいかも。」
トルペタ君の一声で家を購入することが決まった。確かに、ジアが私と旅をするようにやんわり伝えたジャイアント族の人とまだ会っていないし、5人になれば大所帯だ。でも家を107000Nia、日本円で1070万くらいで買えるのかな?
家の値段を聞くと50~200万Niaで家を買うことは可能らしい。できることなら私はゲーム時代と似たような場所に似たような家を作りたい。ゲームではここと同じ王都と呼ばれる町の近くの森の中にギルドを作った。
そのことを伝えるとバーニア地区なら森が多く、安くて大きな家を買えるとレオが教えてくれた。
森を大切にするバーニア族の地区に家を建てるときは、代表者がバーニア族でなければならないらしいため丁度良かった。
ということで今日の予定は装備の更新と物件の購入となった。
レオは装備がどれも1級品で、カナちゃんの武器、防具は鉱物を素材とするものでは無いため、私とトルペタ君の防具を買うことになった。
トルペタ君は昨日のうちに武器を新調、祝福してきたみたいで、ボウガンではなく弓にしたようだ。
宿を出る前に鑑定させてもらった結果はこうだった。
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名称:ウィングボウ:風
品質:B+
祝福:済
武器性能:攻撃力+60
構成素材:シルフの風木、グレータースパイダーの撚糸
説明:風の精霊と言われているシルフが生息している木から作られた弓、強靭な糸を吐き出すグレータースパイダーの糸を
使用しているため、小さくても威力はすさまじい。
補足:・風のマナの影響で風属性のスキルの効果が大幅に上がる。
・祝福によりボウガンを通して風属性のスキルを発動することができる。
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凄い性能がいい武器で羽のような装飾が施されていて見た目も綺麗だった。
この武器を買うのに貯金を全部使い果たしたらしい。
ちなみにレオのステータスも見せてもらったんだけど思ったよりもレベルが高くてびっくりした。
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名前:レオ・フェアリアル
種族:ケットシー族
職業:精霊使い(Lv38)
HP:80/80
MP:3800/3800
腕力:E
防御:E
魔力:A
早さ:E
運:D-
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カナちゃんよりも魔力が高いけど攻撃魔法はほぼ無くて、あくまで支援系専門らしい。
今まで見てきた人の中で群を抜いて運が悪かったけどこのステータスは何に影響するんだろう....。
防具を見るためにドワーフ地区まで訪れた私たちはレオの案内で防具屋に訪れた。
ギアードと違い、建物はなかなか大きく、いろんなドワーフが奥で仕事をしていた。
展示されている商品は家も買えるような値段のものまであった。
「こんちわー、親方いる~?レオが来たって伝えてくれない?」
「おお、レオ坊じゃねえか!ちょっと待ってな!」
親方っていうことは一番偉い人なのかな?どういう繋がりなんだろう。
しばらくすると奥からドワーフ族では珍しく、ちゃんと老けているドワーフ族がやってきた。
しかし、筋肉は凄いついている。違和感が凄い...。
「おう!レオ坊!どうした、また風俗の誘いか~?俺好みのドワーフは....っと、他にもいたのか...すまん....。」
「あぁ.....。」
「ジトーーーーー。」
さてはレオめ、このドワーフと一緒に風俗によく行ってたな?カナちゃんがゴミを見るような目でレオを睨む。
トルペタ君はなぜか目をそらすね~なんでだろうね~。
「きょ、きょうはオレの仲間たちの防具を用意してもらいたくて来たから!冗談もほどほどにしてよ~、あはは...。」
「お、おう。すまんな、ありゃ冗談だ。そう、冗談だから気にするな嬢ちゃんたち。防具が欲しいのはどいつだ?」
私は気にしないし気持ちもわかるからいいんだけどカナちゃんがまだ疑ってる。
しょうがない、私が切り出そう。
「えっと、私とこのドワーフの男の子です。素材はこのアースワームの硬質皮と体液なんですけど...。アイテムボックス!」
親方と呼ばれたドワーフ族にアイテムボックスから出したミミズキングの素材の一部を渡した。
「これは...相当品質がいいな、しかしサンドワームは分厚い装備よりも精錬し直して薄くて丈夫な防具にするからもっと素材が必要だがそんなにあるのか?とりあえずありったけの素材を出してくれ。」
親方が鍛冶場の前の空間を指さしてそこに素材を出すように伝えてきたので、サンドワームの硬質皮100キロと体液1キロをアイテムボックスから出した。
「おいおい!ありすぎだろ!...これだけあれば合金じゃなく金属ごとに抽出したほうがいいかもしれねぇ。どういった防具が欲しいか教えてくれねぇか?ものにもよるが3日あれば作れると思うぜ。」
私が武器と蹴りで戦う早さ特化の戦闘スタイルであることを伝えると、軽い鉱石を抽出して作った鎖帷子と、金属のプレートを並べたようなスカート、硬い鉱石を抽出して作った靴を勧められた。
トルペタ君は今ある防具の性能が高いことと彼の武器の属性に会っていることから服の下に着れる鎖帷子と可動性の高いグローブを勧められた。
費用は余った素材の一部から払うことを伝え、採寸をしてもらってから私達は防具屋を後にした。三日後が楽しみだ。
次は家だ。バーニア地区に家を買うためにはバーニア地区を取りまとめている商会に行くのがいいらしい。
私達はその商会のあるバーニア地区に向かった。
ドワーフ地区を抜け、さらにケットシー地区を抜けてバーニア地区に入ると、ほかの地区と違い建物が密集しておらず、森の中にポツンポツンとでかい建物があった。
一番近くに見えるでかい建物には...なぜかデフォルメされたウサギ型の看板がでかでかとついていた。
いや、可愛いんだけどね!ピンク色のウサギから吹き出しが出て、何か書いてある。
えーっと、あれは何て読むんだろう?
「あれあれ、あれがバーニア地区を取りまとめてる商会「うさぴょん商会」だよ~、看板がマジきゃわたんっしょ~。」
「可愛いですけど、バーニア地区の代表ともいえる商会があれでいいですかね....。」
「バーニア族の人たちはもうちょっと真面目なイメージあったんだけど、まぁミウシアさんもバーニア族ってことを考えるとまぁこんな感じなのかな...。」
「ちょっとトルペタ君!どういうことさ!!...まぁ堅苦しいよりはいいじゃん、話しやすい人のほうが気楽だし!!」
私はまだニカにしかあったことはないけどニカが本名を知られた時に出したのが素顔だとしたら、案外バーニア族はちょっとアホ寄りな性格なのかもしれない。
トルペタ君に「半分冗談ですって!!」と返されたのでくすぐって仕返しをしたりして茶化しつつ、うさぴょん商会に入った。
「うぃ~...しゃせー...ぴょん。ふーーー。」
扉を開けるとピンク色のエプロンをした男性のバーニアが出迎えてくれた。
...煙草を吸いながら。
黒ののツンツンヘアーで眼の下には...隈...じゃない、化粧?アイシャドウが濃くて唇には黒い口紅を塗っている。
頭の上から生えた中折れ型の兎耳の先には大量のピアスが付いてて元々中折れじゃなかったのにピアスの重みで折れた感じがする。
V系バンドに居そうな感じだった、それもダウナー系の。
というかピンクの多いファンシーな内装、店員もピンクのエプロンをしているのに店員自体がとてもミスマッチな見た目をしている。
率直に言うと。
「「「怖っっ!!」」」
「グレイっちやっほー、お家かいにきたよっ!」
怖いのである。
というかレオの人脈どうなってんの?
鍛冶屋の親分、バーニア地区のV系男...ニカさんとも知り合いだったりしそうだなぁ。
「あ~...、それ...ふーーーー。...見て勝手に決めて....ぴょん。」
指輪が沢山ついた指の先にはたくさんの家の情報が載った張り紙があった。
ってかぴょんってなにさ!キャラ付け!?
「あ、あの人ずいぶん個性にあふれてますね..これが王都なんですね、田舎とは違うなぁ。」
「いや、王都でも珍しいですよ!?」
トルペタ君は都会に出てきた田舎っ子みたいなこと言ってるけど絶対違うからね。カナちゃんが否定しなかったら信じそう。
グレイっちと呼ばれたV系の指さす方にある張り紙を色々見る、けど文字が読めない。
代わりにレオが読み上げてくれた。
「え~っとなになに、【築28年ケットシー地区まで徒歩13分何でも屋まで5分、金額応相談。】【築推定650年以上ケットシー地区まで徒歩53分何でも屋まで1時間、金額応相談。】【築57年ケットシー地区まで徒歩6分何でも屋まで2分、金額応相談】...ん~、なんか条件で絞った方がいいかもね~~。」
「いや、日本か!!!!築650年って世界遺産か!!!」
そうでしょ、不動産に行ったら張り紙が貼ってある奴まんまじゃん!
てか金額応相談って相場がわかんないよ!!
いきなり突っ込みを入れたから三人にビックリされちゃった。ごめんて。
「こほん、移動時間を短くしたいのと、5人住めるようなお家がいいね、金額は...応相談だしなぁ。」
「あー...金、いくらあんの?...ぴょん。」
気怠そうにV系が私に金額を聞いてきた。これもう金額交渉始まってる!?
「えっと...一応10万7千Niaあるんだけど...。」
「じゃあ~、こことか?...ふ~...10万7千でいいぴょん。」
渡された資料の絵を見る感じ1階建て個室6部屋と大きな共同スペース(食堂)も、たぶんトイレもある。
買ってから改造もしていいなら一部屋使ってお風呂にもできるなぁ。
ていうか広くない?
他の皆も私の後ろから渡された資料を覗き見る。
「やっば、これやばいよミウシアちゃん~。この値段で買えるような大きさじゃないって~!」
「お、おおおおばけとか出るような家じゃないですよね?」
「実家の何個分だこれ....。」
どうやら滅茶苦茶にいい物件らしい。なんでこんなにいい物件が売れ残ってたんだろう?




