「49話 光属性の可能性 」
あの少し変なしゃべり方のミミズキングがまさかこんなにお金になるとは思わなかった。もっとたくさんいればよかったのに。
お金を受け取ってホクホク顔で解体屋を出た私をみて笑うニカさん。
「ミウちゃんは冒険者なんだよね?ランクはいくつなの?」
「え~~~~っと、たしかDです。」
SランクのニカさんとDランクの私、差が凄い。
私のランクを聞いたニカさんは驚いた顔をしていた。
「あのでかさのアースワームをDランク冒険者が止めを刺せたのか...凄いね、ランク以上の腕を持っているんだね。」
うーんと悩んだ後私に向かってある提案をしてきた。
「ちょっとミウちゃんの力が気になるから一緒に修練場に行かない?仮にも私はSランクだ、ミウちゃんにいいアドバイスができると思うんだけど。」
何たる僥倖!!こっちからお願いしたいくらいだ。
「はい!!是非!!むしろこちらから頼もうとしていたんです!!」
それにしても見て楽しいことなんて何もないんだけどなぁ、ニカさんを満足させられる気がしないよ。
精一杯頑張って私の戦い方を全部見せて何かアドバイスを貰おう。
「はは、それは良かった。後今更だけど敬語はいらないよ、呼び捨てでもいい。じゃあ修練場まで案内するから行こう。」
「はい!..じゃなかった、わかった!よろしくねニカ!」
一瞬止まるニカ、いきなりため口&呼び捨てはマズかったかな?
と思ったらニカが私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。たまに耳に当たる指がこそばゆい。
なんで撫でられたかわからず頭に疑問符を浮かべていると笑われた。
子供扱いされてる?!でも確かにこの体になってから精神年齢も幼くなった気がする。
まぁ美人からここまでボディタッチされるのはとてもいい気分だし役得と思っておこう。
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ジャイアント地区のはずれにある修練場まで来たけどあまり賑わっていなかった。
というか私とニカだけだ。というのも今日は地球で言うところの祝日で、修練場もお休みだったけどニカ権限で使わせてもらってる。
流石S級冒険者。
更衣室で戦闘着に着替えてニカと向き合う。
ちなみに着替えは個室というか木で作られた試着室のような場所で行ったため、ニカと一緒に着替えるという刺激が強い展開にはならなかった。
安心したような惜しいような....。
「ミウちゃんは魔導士じゃなくて短剣士だったんだね...よし、じゃあ始めようか。いつでも来てくれ。」
今日は対人戦ということで武器は木でできたものをお互い装備している。
ニカは剣と盾を持つスタイルらしいので盾はいつも使っているものを構えている、盾は体の半分ほどの大きさでくすんだ銀色で豪華な模様が刻まれた、RPG終盤に手に入る盾みたいな綺麗なデザインだった。その光沢を失ったところからいくつもの激しい戦いを乗り越えてきたことが分かった。
隙が無い。木製の短剣を逆手に構えて機を伺うが、盾がでかすぎて付け入るスキがない。
私の速さを知らない最初が肝心だ、一気に回り込んでしまおう。
盾を真ん中に構えるニカに猛スピードで正面から近づき、盾をこちらに構えなおしたところでニカの横に回り込むようにステップをする。
「なっ、早いっ!」
私の速さに驚いて一瞬反応が遅れたニカの背中に向かって木剣を突き刺そうとしたその時。
ニカの盾の側面が私を横からなぎ倒す。
予想外の攻撃にノーガードで盾を食らってしまった私は衝撃でそのまま数メートルほど吹き飛び背中から地面にたたきつけられた。
頭を打ってはいないけど受け身を取れずに背中から受けたことと盾の衝撃をもろに食らってしまったことで痛みのあまりすぐに起き上がれなかった。
「ミウちゃん大丈夫!?ごめん、予想以上の速さで手加減ができなかった!」
ニカが近寄ってきて私を抱き起した。
腰のポーチから緑色の液体が入った瓶を取り出し私に飲ませてくれたけどこれ滅茶苦茶マズいね!?
ポーションかな?でもこの世界ではポーションが貴重品で簡単には手を出せないって聞いたんだけど私に使っていいのかな?
「あ、ああ平気だよ。ニカは強いね...私じゃあ何もできなかった。」
「いや、ミウちゃんはまだ冒険者になって短いじゃない、それでここまで動けるなら大したもんだよ。すぐ私では反応ができないレベルにまで強くなると思うよ。」
私は立ち上がって服についた土を叩き落とす。
そういえばニカってどれくらい強いんだろう、ステータス見せてもらえるのかな?
「ニカ、私鑑定の呪文が使えるんだけど...ニカのステータス見てもいいかな...?」
「....凄いね、ミウちゃんがもし冒険者をやめても本当に引く手あまただね。いいよ、私もしばらく冒険者カード更新していないし気になるな...。」
「それじゃあ..<鑑定>アナライズ!」
「あ!ちょっと待って!!!!!!!」
いきなりニカが叫んで私を止めに来た。凄い勢いで飛び込んできたためそのままニカが私に覆いかぶさるようにして倒れた。
身体全てが密着したこの状態は私には刺激が強すぎる。でもまぁ私がニカに対してドキドキしていることを示すような男の象徴的なものは今や見る影もない。
私の胸を包み込むように当たる柔らかい感触。ヤバい、心臓が飛び出そうなくらいドキドキする...。
ニカがものすごく焦っていた理由を何となく頭に浮かんだ鑑定結果から理解した。
「ご、ごめん!ミウちゃん...鑑定もう済ませちゃった...?」
上半身だけ起こして私を押し倒したような姿勢になったまま目をうるうるさせながら見つめてくる。
綺麗系だったのが一気にかわいく見えてそのギャップにさらに私の胸が高鳴る。
目を合わせるのが恥ずかしくて顔を横にそむけながら私は答えた。
「いや、うん、見ちゃった...。でもニカが思ってるほどおかしくないよ、皆そういう感じだし。」
ニカのステータスを改めて確認する私。
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名前:ルクニカ・ホワイトミルク
種族:バーニア族
職業:パラディン(Lv98)
HP:8460/8460
MP:9876/9876
腕力:A+
防御:S+
魔力:A-
早さ:C+
運:B+
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いや、めっちゃめちゃに強いんだよ、防御特化で腕力も魔力も凄い高い。速さだけ低いけどこの防御力なら受けて反撃したほうが都合がよさそうだ。
....多分ニカが隠したかったのは名前、鑑定の前では偽名は使えない。
ニカは自分の名前をルクニカ・ホワイトと言っていたけど本名はルクニカ・ホワイトミルク(・・・)。
バーニア族は自然と共にある種族。だからなんだろう、実家が畜産とかなんだろうね。
本人は隠したかったんだろうけどこの世界の人たちは名字に相当する部分が家業や長けている能力から取っている節があるから私は気にならない。
「あ、ごめん、起こすよ...。ええと、私の実家は畜産を主にしていて、その中でも牛からとれる乳が有名で....。」
ニカが私を起こした後、なんだかモジモジして声も先ほどまでの凛とした声ではなく弱弱しくてかわいらしい感じになっている。
「でも私、牛乳大好きだよ!今度ニカの実家に連れて行ってよ、新鮮な取れたての牛乳も飲んでみたいなぁ!」
「本当!?絶対来て!....コホン!約束だからな!ほら、ミウちゃん、稽古を続けるよ!」
弱弱しいニカが可愛くてもう少し見ていたかったんだけどすぐに気を取り直して宝塚モードになった。
まぁ本来の目的はこっちだもんね。
「えーっと、何だったかな。そうだ、次はスキルを見せてほしい。普段使ってる武器に持ち替えてあの木人に対して攻撃してみて。」
アイテムボックスから飛び兎を取り出して...あ、やば、無詠唱魔法陣無しでアイテムボックスつかっちゃった...けど気付いてないな、よかった。
「へぇ、いい剣だね。刃の部分は黒錬鉄かな?Lvが低いときから装備しているとどの武器よりも強くなる可能性があるらしいよ、そうなるといいね。」
ゲームとかでも成長型の武器が一番強かったりするし、期待はしてたけどやっぱりこの世界でもそうなんだね。
魔法とスキルの複合技のために刀身に魔法陣を描いていく。
うん、展開スピードも速くなってきたしもう少しマナ制御が上達すれば戦闘中に描けるようになりそう。
木人に向かって走って飛びつく。それと同時に木人の頭部に飛び兎を突き刺して、
「穿て!」
始動キーを唱えると木人を貫通し、そのまま地面に向かって光が突き刺さる。
「今のは!?魔法のように見えたけど剣がマナを通るのも感じたのだけど!」
飛び兎を木人から抜き、ニカの方を向いた。
ニカは初めて見る攻撃に興奮してる、Sランク冒険者でも初めて見る魔法の使い方なのか。
「えっと、魔法陣をあらかじめ刀身に描いておいて、突き刺した時に始動キーを唱えることで内部から敵を攻撃する技だよ。えっと、これが一応主力の攻撃で、後はスキルなんだけど...。」
私が使えるスキルのエフェクティブソード...かっこいい名前を付けてみたけど要は攻撃時に光るだけのスキルを見せる。
後は日常的な魔法を応用し、<水生成>ウォータークリエイトと<光反射>ミラーを使って地面を焦がしてみせた。
「二つ目の技はすさまじい威力だね、でもこれは晴天の時しか使えないんだよね?だとしたらミウちゃんには攻撃力が必要だね。....丁度私も光属性の剣を使っているから色々教えられると思うよ。例えば..。」
ニカはポーチから盾と対になるような美しい剣を取り出した。
あ、あのポーチはアイテムボックスと似たような効果を持っていたんだ。
ニカは剣を構えると木人に向かって離れた位置から剣を振るった。
振った剣筋がそのまま光になって残り、木人に向かってバリバリと音を立てながら飛んでいき、木人に当たった瞬間バチッと音を立てて木人が燃え上がった。
今のは雷...?雷なんて属性は無かったと思ったんだけど...。
ニカが使ったスキルを自分なりに考察しながら木人の火をクリエイトウォーターで消火しておく。
「消してくれてありがとう。今のスキルなんだけど、何をしたかわかった?」
「うーん、ちょっとやってみてもいい?」
「はは、さすがに一発ではできないと思うけどとりあえずやってみてよ。」
飛び兎を逆手に持ち自分のマナを飛び兎に流し込んでいく。
ニカが見せてくれたあれはきっと雷、光属性は雷の性質も含んでいるんだ。
マナを電気に見立てて飛び兎に蓄電させて勢いよく剣を振る。
その時に空気中のマナを吸収させて自分のマナが霧散しないようにする。
飛び兎から出た剣筋はそのまま木人に飛んでいって先ほどのニカのスキルと同じように木人に当たる。
木人が濡れていたため火は着かなかったが、バリバリッと音を立てて木人全体に光の筋が見えたことからどうやら成功したらしい。
「ま、まさか本当に成功するとは....ミウちゃんは魔力操作と自頭がいいんだね。わかったと思うけど属性は何もその名の通りの性質だけではないんだよ。光属性というのは光を放つ事象全てを指すんだ。ここまで言えばミウちゃんならいろんなスキルが思いつくんじゃないかな?」
つまり光るもの、炎も再現できるということはレオが使用していた白い炎も光魔法だったのか。
でも火属性の炎とは火力も性質も違う。ゲーム風に言うと火属性の炎が火力特化の攻撃だとしたら光属性の炎はデバフ付きの攻撃みたいな感じかな。
そう考えるといろんな技を作れそうだ。武器をしまってニカの元へ駆け寄った。
「本当にありがとうニカ!でもタダでこんなに教えてもらったら申し訳ないよ...。」
「いいんだよ、私も面白いものを見せてもらったしね。魔法の遅延、罠のようにして武器に魔法陣を施しておいて使うなんて思ってなかったよ。私も盾に描いておけばカウンターみたいに使えるかもしれないしね。」
日も暮れてきたしそろそろ皆も「酔ってケットシー」に帰っている頃だと思い、そろそろ宿に帰ることを伝え、普段着に着替えて修練場を後にした。
ニカがケットシー地区まで送ってくれるというので2人でケットシー地区に向かった。
手を繋がなかったのはもう私がケットシー地区への帰り道がわかると思ったからなのかな?
じゃあ手を繋いでいたのはあくまで案内をするときにはぐれないようにで深い意味はないのかぁ。
あんなのされたら勘違いしちゃうよ、まぁ女の子同士で手を繋いでいる光景は日本ではよく見かけたしそういうことなんだろうな。
今日の話やニカの実家の話を色々しながら歩いていると、あっという間にケットシー地区についた。
「ニカ、今日は本当にありがとう。これで私ももっと強くなれそうだよ!今度、また会った時改めてお礼をさせてね!」
ニカは世界で唯一のSランク冒険者、そう頻繁に会えることはないだろうし忙しいはずだ。
今度どこかでニカに会うその時までにはきっと肩を並べるくらい強くなっていよう。
「またどこかで会ったらお礼なんていいから今日みたいにまた町を歩こう。だからお礼は....」
そこまで言ったニカはズイッと私との距離を詰めてくる。
私の顎を手で少し上げる。そのまま....。
唇にふにょんと柔らかい感触を感じ、同時にふわりとニカから甘い匂いがした。
えっ、えっ、え、えええええ!?
キ、キスサレタ!?イマ!?
「あ、ああ、あ、あああのニカ????」
少女漫画のように顎くいっからのキスをしてきた。しかも道の真ん中で!ほら注目集めてるよ!!!
なのにニカは周りを気にせずほんのりと赤い顔で私に笑顔を向ける。
「私、ミウちゃんのこと気に入っちゃった。早く強くなって一緒に旅にでよう。じゃあ、またね。」
私の頭をポンポンと優しく触れた後振り返らずに去って行ってしまった。
男は勘違いしやすいから手を繋いだり楽しく話しただけで好きになっちゃうけど、地球での私は勘違いしたことが無かった。
けど流石にキスまでされたら好きになっちゃうでしょ!話してて楽しかったし強いし頼りになるし....。
あーもう完全に惚れちゃってるじゃん!
熱くなった顔を両手で冷やしていると後ろから気配を感じた。
そのまま恐る恐る振り返ると....。
顔を真っ赤にして恥ずかしそうな顔をしているカナちゃんと
真っ青な顔で落ち込むレオと
妙に納得した顔のトルペタ君がいた。
「も、もしかして....見てた...?」
恥ずかしさのあまり顔の熱が一向に冷めない。
「み、みう...恋愛は自由ですけど外で、とは大胆すぎです...。」
「ミウシアちゃんは....もしかして男性には興味ない感じ~....?」
「あぁ、だからミウシアさんは母に照れたりしていたのかぁ、.....でもレオさんにプロポーズされた時も照れてたような...?」
恥ずかしさのあまり三人を無視して「酔ってけっとしー」にダッシュしたのは言うまでもないね。




