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69話 出会いと交流



「まさか、バレンタインチョコをこんなに貰える日が来るなんてな」



 カーミラと別れ、サンブレイヴ聖国へ帰るためにヘルゲイト駅に向かう。

鞄の中には最近始めたマッチング魔道具で出会った敵国幹部たちからのチョコが計4つ。



「ここに来る前に貰ったのと合わせたら全部で6個か……いつもの6倍だな」



 毎年オレにチョコをくれる義妹のフランキスカから仕事終わりに手作りチョコを受け取ったのだが、実はその前の仕事中、第6師団長のラヴリュス先輩からも美味しそうな焼き菓子を頂いてしまい、第8師団の部下たちから色々と詮索された。



「いつもはフランキスカから貰ったチョコだけで、あとはホワイトデーにハルとお菓子交換をするくらいだもんな」



 ちなみにハチェットとはそういうことをした記憶は一度もない。

むしろ『また今年もフランキスカちゃんだけだったね~かわいそ』とか煽られて終わり。



「ふっふっふ。今年は煽られたら自慢してやるぜ……帰ったら喫茶ハロゥにでも寄ってくか」



 そんな感じでヘルゲイトの駅前を歩いていた時だった。



「あ、やっぱり来たのだ」



「……ん? って、ルーナじゃねえか」



「あけおめことよろ~なのだ」



「おう、今年もよろしくな」



 ヘルゲイト駅近くの裏路地前に立っている一人の女の子、元家出少女のルーナだ。

家出少女っていうか、家の決まりで強制的に半日だけ家を追い出されたというか。



「今日はどうしたんだ? またお見合い会場から逃げてきたのか?」



「違うのだ。今日はこれをルイに渡しに来たのだ」



「これって……」



「ヘルハッピーデスバレンタインなのだ!」



「おまえもか」



 だからなんなんだそれ。エビルムーン帝国定番なの?



「まあ、ありがとうな。まさかルーナから貰えるとは思わなかった」



 ルーナから受け取ったのは、なんだかとっても高級そうなお店のチョコレートだった。

木箱に入ってるお菓子とか初めて貰ったぜ……



「ルイからのお返し、期待してるのだ」



「そんなに高いもんは返せねえぞ。それにホワイトデーだって、ルーナと会えるかも分かんねえし」



 ルーナはデスティニーを持っていないし、そもそも年齢的にマッチング魔道具が出来ない。

だからといってオレがサンブレイヴ聖国で使用している通信用魔道具の連絡先を教えるわけにはいかないしな……



「じゃあ約束なのだ。ホワイトデーのこの時間に、ここでまた吾輩と会おうなのだ」



「分かった。それじゃあ約束な」



「約束なのだ! 破ったら磔の刑なのだ!」



 いや罰が重すぎだろ。



 ―― ――



「というわけで、今年のチョコはなんと7個だ」



「へ~。やるじゃんルイソンくん」



 サンブレイヴ聖国に戻り、夜の喫茶ハロゥで寝酒を少しいただくことに。

夜勤明けからのオールのテンションで眠気が一時的にどこかへ行ってるが、酔っぱらったらすぐにでも爆睡できそうだ。



「いつもはフランキスカちゃんからのシスチョコだけなのにね~。マッチング魔道具始めて変わったよね、ルイソンくん」



「シスチョコって言うな。でもまあ、女友達は増えたな。ここ半年の出来事にしては増えすぎちまった気もするが」



 逆に男友達は全く増えてない。

相変わらずハルバードとカッシートだけだ。



「男友達マッチング魔道具とか無いのかな」



「え~なんかいやらしいねそれ」



「何がいやらしいんだよ」



 脳みそが同魔人誌にやられてやがる……早く何とかしないと……



「それじゃあ、はい。8個目どうぞ」



「え? なんだよこのカクテル」



「アレキサンダーだよ。バレンタイン特製、チョコレートリキュールに追加してココアとクリームマシマシバージョン」



 どうやらこのカクテルはハチェットからのバレンタインチョコということらしい。



「まさかお前とバレンタインイベントが発生するとは思っても見なかったぜ」



「まあまあ、飲んでみてくださいよ。毒とか入ってないから」



「ああ……」



 カクテルを一口飲むと、生クリームの滑らかな味わいと共に濃厚なチョコの甘みが広がり、最後にアルコールとカカオの苦みが僅かに残る。



「うん、美味いなこれ」



「そっかそっか、それは良かったよ~。あ、ホワイトデーのお返しはエビルキングで良いよ」



「ああ、エビルキングね……ってそれ、エビルムーン帝国でしか手に入らないうえに数量限定で抽選に当たらないと買えない火酒じゃねえか」



 カクテル1杯に対する対価がデカすぎるだろ。



「……私も、少しがんばろうかな」



「何か言ったか?」



「ううん、なんでもなーい。それよりルイソンくん、今は友達かもしれないけど、今日チョコを貰った子の中から恋人同士の関係になったりもするかもしれないよ。そういうことも考えてる?」



「んなこと今はまだ考えてない。ていうか、考えたくねえなあ」



 貰ったチョコの半分は敵軍の幹部だしな……なんなら約二名、妹と神出鬼没の子供だし。



「でもまあ、これからも、色々な出会いを……大切に……」



「ルイソンくん?」



「……くかー……Zzz」



「あらら、寝ちゃった。……お疲れ様、ルイソンくん」



 平凡な生活に刺激を求めてマッチング魔道具に手を出したら、予想以上に刺激的な毎日が始まってしまった。

彼女たちと交流することで、まだまだトラブルもハプニングもあるだろう。

それでもオレは、自分の選択を後悔していない。



「……人生は、冒険だぜ……Zzz」



「男の子って、いつまで経っても子供だなあ」





 おしまい。



————  ――――


読了いただきありがとうございました!

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