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次はどうする?

 ラグナは予定されていた二人への指導を終えると、セイラのところに戻る。

「二人への指導はひと区切りがついたと思うが、次はどうする?」

 彼の問いにセイラはため息をついて頭を抱えた。

「大変恐縮ですが、ラグナ様の指導がすごすぎ速すぎて、私のほうが追いつけません。申し訳ございません」

 セイラは泣きたい気持ちでいっぱいである。

「そうか?」

「アポロニアもシギュンも、何年も学院を悩ませてきた生徒たちです」

 とセイラは言う。

「けっして悪い子たちではなく、だからこそセイラをはじめ教師陣は何とかしてやりたいと悪戦苦闘してきたのですが……」 

 彼女はそこで言葉を切って、ラグナを見る。

 目がうるんでいた。

「ラグナ様はやってきて初めての授業でいきなり何とかしちゃいましたね」

 自分の情けなさを恥じ入る気持ちは、ラグナへの敬意へと昇華される。

「魔法使いとしての経験値が違うということだろうな」

 ラグナは淡々と答えたが、セイラからは目を逸らした。

 うるんだ目で見つめてくる彼女は色っぽく、女性に免疫がない彼にとっては反応に困るのである。

(あらっ?)

 とセイラは思ったが、口には出さない。

 彼女もまた親族以外の異性と触れ合う機会などなく、男性というものをまったくと言っていいほど知らなかった。

「つ、次でしたか?」

 セイラは必死に頭を働かせて話題を見つけ出す。

「そうだ」

 ラグナは内心ほっとして返事をする。

「それでしたら他の子も見ていただけませんか?」

 とセイラは提案した。

「私は精いっぱいの指導をしているつもりですが、きっとラグナ様がごらんになれば至らない点が多いでしょう」

「いや、それは仕方がないことだよ」

 肩を落とす彼女に、ラグナは優しく言う。

「大人数を一度に見て、均一的に育てるという制度を運用しているのだからな。少人数だけを、しかも課題を解決すればいい俺と同じわけにはいかない」

「そ、そうでしょうか?」

 セイラは少しだけ元気になる。

「そうだ。役割が違うんだから、同じ結果が出るわけがない。気にするな」

「は、はい」

 ラグナにはげまされて、セイラは安心した。

 不思議と彼の言葉は心にしみわたる。

 信頼をこめた目で彼を見つめた。

「さて、他の生徒たちだが……」

 ラグナはそっと目をそらす。

 セイラは残念な気持ちが一瞬だけ浮かぶが、今は授業中だという使命感でねじ伏せる。

「はい」

「見た感じ、中級くらいが多いようだが」

 とラグナは指摘した。

 彼が見たかぎりでは上級魔法を使える生徒は一人もいない。

「ええ」

 セイラはちょっと暗い顔になって告げる。

「このクラスは六クラスの中で、最も実技成績が劣る子のクラスですから」

「なるほど。実力順でわけているのか」

 ラグナはうなずいた。

 わりとよく採用されているシステムである。

 この女学院ではどうなのか判らなかったが、例外ではないらしい。

「もっと優秀な生徒もいるのか?」

 ラグナの問いは何気ないものだったが、セイラの表情は暗いままだ。

「ええ。中には学院長の手にしか負えないレベルの子も」

 と言ってそっと息を吐き出す。

「レトしか?」

 ラグナはちょっと目をみはる。

 レトは間違いなく世界でも上位に入る大魔法使いだ。

「あいつが出てくる必要とか、天才でもいるのか」

 ラグナはうなる。

「はい。本人には聞かせられませんが、将来極大戦力と呼ばれることもありそうな逸材だと言われています」

「ほう」

 セイラの回答にラグナは興味を持つ。

「極大戦力は一人いるだけで国家の命運を左右し、大国をけん制することも可能な超常的な存在……おいそれと出せるものじゃないはずなのですが」

 と話すセイラの表情は複雑そうだ。

「教え子がそんな存在で誇らしい反面、手に負えなくなりそうで困るというところか?」

「情けない話ですが、そのうちそうなりそうです」

 ラグナの推測を力なくセイラは肯定する。

「ですから、ラグナ様がいらっしゃったのは大変心強いです」

「うん。任せておけ」

 ラグナは答えてから、首をひねった。

「もっとも、俺がその子を担当するかどうかは、レトの判断しだいになりそうだが」

「そうですね。学院長がラグナ様のお力を借りないとは思えませんが」

 セイラは自信なさそうに言う。

 結局レトの意思しだいなので、ここで言っても仕方ないようにも思える。

「さてと、他の子たちだが」

 ラグナはじっと生徒たちを見て回った。

「何かお気づきの点でもありましたか?」

「そうだな。基本的に魔力があまりないようだな」

 ラグナの指摘にセイラはうなずく。

「はい。もっとも鍛錬で増やすには限界があるかと思いますが」

 彼女が歯切れ悪く言ったのは、彼ならば何かよい方法を知っているかもしれないと考えたからだ。

「学校教育で教える分にはそうだろうな」

 ラグナはそう答える。

 彼も学校教育に関わっていたことがあるため、それくらいは知識として持っていた。

「では?」

「試しにやってもらうか」

 期待に目を輝かすセイラに、ラグナは伝える。

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