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宿泊手続き

「お嬢さんたち、ここでお喋りしてて大丈夫かい?」


 突然、カッコつけたような少年の声が聞こえてきた。


「!!カイトさま!」


 ネルネとメコが声をそろえて立ち上がる。声のほうを見ると、扉に寄りかかるように青髪の少年が立っていた。

 よく考えてみたらネルネとメコはまだ仕事中である。「ヤバイ、怒られる!」と駆け足で部屋を飛び出していった。

 カイトはのんびり「気をつけてなー」と声をかけた。

 すると、「きゃー、カイトさまに声かけてもらえた!」と聞こえた気がするが、遠すぎてよく聞こえなかった。


 そんな様子を呆気にとられて見ていると、カイトが声をかけてきた。


「やぁ、君たちがデコポンの拾いもの?この建物は初めてだろうから案内してくれってデコポンに頼まれたんだ。」


 白い礼服を身にまとい、腰には長剣を下げている。こちらも身長はグリコと同じくらいだろう。いかにもイケメン騎士といった少年である。人気があるのも頷ける。


「初めまして。ここの修道士、カイトです。デコポンから話は聞いてるよ。すぐに旅立つの?しばらくいるの?」


 カノンたちの近くに来たカイトは自己紹介をしつつ質問をした。とても親しみやすい話し方だった。初対面の相手だが、あまり緊張せずに話せそうである。


「食料も買い足さなきゃならないし…。」

「疲れたからちょっと休みたいよね。」


 話し合いの末、2日くらい泊まることになり、宿泊手続きができる事務室までカイトに案内してもらうことになった。

 食べ終わった食器などは後でシスターたちが片付けてくれるからと、このまま置いておき、各自の荷物を持って部屋を出た。


「グリコたちは僕らと歳変わらないのに旅してるなんてすごいな。」


 改めてお互い自己紹介して、カイトは17歳、デコポンは16歳であることを教えてもらった。カイトはこの教会にきて6年目になるそうだ。


「カイトさまこそ、まだ若いのにとても優秀だと聞きましたよ。デコポンさまも準司教を務めていらっしゃるって。尊敬します。」


 キラキラしたリンゴの言葉にカイトは驚き、そして照れながら答えた。


「あの子たちに聞いたんだね。成績については大したことないさ。デコポンの方が上だし。

 でも、その…。様付けはやめてくれないかな。俺のことはカイトでいいよ。」


 そんな話をしている間に事務室に到着した。


「ようこそ。モナクスドムス中央教会へ。本日はどのようなご用件でしょうか。」


 事務の女性は本当に事務的に挨拶をした。リンゴが今日から2日宿泊させてほしいと伝えると書類を1枚出しながらこう言った。


「宿泊ですね。ありがとうございます。朝夕の食事込みの宿泊で銀3枚ですので、2泊で銀6枚になります。」


 事務からの言葉にリンゴの顔色が変わる。


「えっ、一泊銀3枚? えーっと、それは3人分で?」


「1人銀3枚になります。3人で2泊ですので、合計で銀18枚になります。」


 2泊で銀18枚…。リンゴもグリコも耳を疑い、声が出せずにいた。


「大丈夫か…?」


 カイトが心配そうに声をかけてくれた。


「あぁ、大丈夫。所持金自体は足りてるから…。なぁ、宿泊費ってこんなに高いものなのか?」


 グリコが不審そうに言うが、事務の女性はこれが決まりですのでと言った。


「ノーステラだったら食事付き一泊で銀1枚もしなかったのに…。もう少し安くならないんですか?」


 リンゴが食い下がるが事務の女性はもう一度これが決まりですのでと言った。


「あの、俺の友人ってことで少し安くしてやれない?」


 見かねたカイトが口を出してくれた。しかし、事務の女性は


「いくらカイトさまといえども、大司教さまの決めたルールは曲げることができません。1泊なさるのでしたら1人銀3枚になります。」


 同じ言葉を繰り返す事務の女性を相手にリンゴとグリコは10分ほど粘ったが、お金を払いたくないなら泊らなければいいと言われ諦めることとなった。

 しぶしぶ銀18枚を支払い、2泊させてもらうことを承諾書に記入した。


「俺もここの宿泊費知らなかったけど、あんなに高かったんだな〜。」


 事務室を出て大きなため息をついたリンゴとグリコを眺めながらカイトが呟いた。そしてふと、周りを見渡す。


「ん?カイト、どうしたんだ。」


 困った顔しながらカイトは言った。


「いや、本当は事務室着いたあたりからおかしいなって思ってたんだけど…。」


 ためらうようにカイトはなかなか言わない。リンゴが何がと首を傾げて尋ねると、言葉を選びながらゆっくり言った。


「カノンの姿が見当たらないんだよね…。」


「!!!!!」


 長廊下にリンゴとグリコの怒りの悲鳴が響き渡った。

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