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王子と騎士

 白い清潔なベットの上でカノンは目を覚ました。天井が高く、窓も高い位置にある大きな部屋だ。ベッドも30くらいあるように見える。

 右を見ればリンゴとグリコが寝ている姿が目に入った。


「起きた?」


 落ち着いた男の子の声が響く。カノンは慌ててベットの中に潜り込んだ。


 ぐぅ〜


 代わりにカノンの腹の虫が返事してくれる。すぐ近くでイスを引く音が聞こえて、カノンはそっと顔を出した。


「はい。どうぞ。」


 いつの間に近くに来たのか、美味しそうな果物をカノンに差し出す手があった。

 カノンは起き上がり、顔を見ないまま果物を受け取り、小さな声でありがとうと言った。よっぽどお腹が空いていたらしく、一口かじると食欲が止まらなくなっていた。

 4つ目の果物を食べている頃、リンゴとグリコも目を覚ました。リンゴは起きて、カノンを見つけるなり、駆け寄ってきた。


「カノン!大丈夫?怪我はない?」


 リンゴの勢いに戸惑いながら、カノンはかじりかけの果物を口につけたままコクコクと首を縦に振る。安心した顔でだらっとするリンゴの近くに、グリコもやってきた。


「なんでカノンは落ちてきたんだ?

 …あれ?なんで俺ら森じゃなく、こんなところにいるんだ?」


 キョロキョロと周りを見渡すグリコの様子にリンゴもやっと周りを見る。そして、おぉと驚いたように見知らぬ少年に気がついた。


「誰?カノンの知り合い?」


 いやいや、そんなわけないでしょとカノンは首を横に振った。

 カノンたちのやりとりが落ち着いたのを見計らって少年は立ち上がり自己紹介をする。


「初めまして。このモナクスドムスのセントラル修道院で学んでいるデコポンと申します。」


 落ち着いていて、礼儀正しい。カノンはこの時初めて少年を見た。メガネをかけた黒髪の少年で、身長はグリコくらいだろうか。しかし、真面目な表情を変えずに話すので、少し怖いなとカノンは思った。


「俺はグリコです。それから、カノンとリンゴ。助けてくれて、ありがとうございます。」


 グリコがデコポンに挨拶を返す。挨拶に合わせてリンゴもお辞儀をした。カノンも掛け布団で少し顔を隠しながら小さく会釈した。


「あの、ここってどこなんですか?」


 ゆっくり周りを見渡しながらリンゴが尋ね、デコポンが答えてくれた。


「ここはモナクスドムス中央教会の休息所です。この町には宿屋がないので旅の方の宿になる場所となっています。」


 モナクスドムスと聞いてリンゴは安堵の声を出す。ルートはどうであれ目的地に着いたのだ。

 リンゴがもうひとつ質問しようと口を開いたとき、ノックの音が聞こえた。


「デコポンさま、大司教さまがおよびです。」


 シスターがデコポンを呼びに来たようだ。デコポンは短くわかったと言うとシスターは扉を閉めて行ってしまった。


「デコポンさま…?」


 カノンはデコポンとシスターが立ち去った後の扉を交互に見つめ声に出した。しかし、デコポンは答えず、


「お腹が空いているようなので厨房に食事を届けるように伝えておきますね。ここは自由に出入りして良いのですが、宿泊する場合は事務室の方へその旨を伝えてください。」


 デコポンは丁寧に説明した後、失礼しますと礼をして扉から出て行った。



 グリコが近くにあったイスを2つ持ってきて座りながら言った。


「とにかく、俺ら無事でよかったよな。」


 リンゴもグリコが持ってきてくれたイスに座った。


「うん、目的地にも着いたみたいだしよかった。」


 リンゴの言葉にカノンとグリコは目を見開いて驚く。2人とも目的地の名前は把握していなかったようだ。リンゴはため息を吐いた。


「てっきり、わかってるものだと思ってたのに…。」


 そんな3人の元へデコポンさまからですと言って先ほどとは違うシスターがパンとスープ、サラダを運んできた。


「わぁー、まともな食事!」


 どんな感想だよとグリコが突っ込む。しかし、道中は少ない食料を3人で分割して食べていたのだから、カノンの言う通り3日ぶりのまともな食事だった。


「デコポンさまってどのような人なんですか?」

 リンゴはシスターに尋ねる。


「このモナクスドムスではたくさんの修道士、修道女が修行をしております。特に中央教会はとても厳しい修行と高い知識が求められるところです。

 デコポンさまはこの中央教会においてトップの成績を維持しており、私たちをまとめてくださっているのです。

 司教さまからの信頼も厚く、準司教の位に就かれています」


 なんとなくデコポンのことを語るシスターが熱い気がする。


「デコポンさまはちょっと近寄りがたい雰囲気もあるのですが、とても優しい方で、一部の修道女からプリンスさまと呼ばれ人気があるんですよ。」


 そんな熱弁を聞いていると、シスターがもうひとりやってきた。


「ネルネ!もう、遅いと思ったらこんなところで油売ってる。なにしてるのよ。」


「えっ、メコ、ごめん!プリンスさまのこと聞かれたから答えてた。」


 プリンスさまというキーワードに反応してメコと呼ばれたシスターも話に加わる。


「えっ、デコポンさまのこと?でも、私はカイトさまの方が好きだなぁ〜。」


 この後はこの2人がカノンたちが食事している間、デコポンさまとカイトさまについて語っていたので省略する。要約すると、


 デコポンは成績優秀で、修道士たちのまとめ役を務めている。事情はわからないが、特例で準司教に任命されている。

 少し近寄りがたい雰囲気があるが、時折見える優しさが人気らしい。

 いつも修道士の黒いローブを着こなしているため、修道女たちからは黒衣のプリンスと呼ばれている。

 なぜプリンスなのかはネルネも知らないらしい。


 カイトはデコポンの親友のようで彼も中央教会の修道士。デコポンとは違い、話しやすい雰囲気を持ち、誰とでも仲良くなれる人物のようだ。実は金持ちのボンボンであるという噂も。

 こちらも修道女たちから人気があり、ついたあだ名は銀星のナイト。

 剣技と馬術が得意で、いつも白い服を着ているそうだ。ナイトになったのはカイトと音が近いからでもあるらしい。


 ネルネはデコポン派、メコはカイト派ということで30分ずつ、それぞれの良さを語り合っていた。

カイトはオリジナルキャラです(^_^;)

もう増やさないと思っていたのに、結局また増えました…。

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