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『聖剣の黄昏、暴食の真髄』

迷宮第三層の最深部、『星葬の間』。

 天井から降り注ぐ巨大な水晶の柱に囲まれた広間で、アルトリウスの叫びが木霊した。

「なぜだ……! なぜ傷一つつかん!!」

 目の前には、三層の守護者――『金剛晶の守護像ダイヤモンド・ゴーレム』。

 あらゆる物理攻撃を反射し、魔術を無効化する結晶の巨躯。ステータスは驚愕の『4,500』。学園側が想定していた難易度を遥かに超えた、迷宮の「バグ」とも呼べる存在だった。

 アルトリウスの放つ『聖剣の導き』。その光り輝く一撃は、ゴーレムの表面を掠めるだけで火花を散らし、逆にアルトリウスの腕に凄まじい反動を叩きつける。

「アルトリウス様、下がってください! 私の魔法で――」

「黙れエレイン! 私の聖剣が、このような石くれに負けるはずがない!!」

 焦燥に駆られたアルトリウスが、防御を捨てて突進する。しかし、ゴーレムの巨大な水晶の拳が、無慈悲に彼の鳩尾を捉えた。

 ドォォォン!!

「……が、はっ……!?」

 伝説の聖剣を授かった英雄候補が、ゴミのように地面を転がる。

 フィオナが悲鳴を上げ、リィネが冷徹に戦況を分析するが、導き出される答えは一つ。「全滅」だった。

「……ガストン。あいつの体、硬すぎて調理に時間がかかりそうだな」

 絶望が支配する広間に、場違いなほど平坦な声が響いた。

 最後尾にいたシュウが、漆黒の出刃包丁を抜き、ゆっくりと前に出る。

「ふん。お前の火加減次第だろ、シュウ。……ミーニャ、獲物の『急所』は見えるか?」

「……うん。……胸の奥。一番、キラキラしてるところ」

 ミーニャが銀色の瞳を凝らし、ゴーレムの核を指差す。

 シュウは一歩、また一歩と、死のゴーレムへと歩み寄った。

「どけ、シュウ! 貴様のようなゴミが近づいて――」

 アルトリウスが血を吐きながら叫ぶが、シュウは一瞥もくれない。

「……聖なる剣が通用しないなら、野蛮な包丁の出番だ」

 シュウの体内から、どす黒い魔力が溢れ出した。

 これまで喰らってきた数千の魔物の因子が、彼の筋肉を、神経を、骨格を、瞬時に「対ゴーレム用」へと再構築していく。

【固有能力:『物理透過無効』および『金剛貫通』発動】

 シュウの姿が、掻き消えた。

 アルトリウスの動体視力すら置き去りにする、文字通りの『神速』。

 ――ズ、シュゥゥゥ……ッ!!

 爆音はない。ただ、硬質な結晶が「バターのように切れる」異質な音だけが響いた。

 シュウの一振りが、ゴーレムの鉄壁の防御を無視し、その深部にある『金剛の核』を真っ二つに断ち割ったのだ。

 崩れ落ちる、巨大な水晶の塊。

 シュウはその中心から、輝く核の破片を拾い上げると、無造作に口へと運び、バリバリと噛み砕いた。

「…………っ!?」

 フィオナは、その光景を忘れることができなかった。

 伝説の英雄すら膝を突く絶望を、一人の少年が「ただの食事」として終わらせてしまった。

 彼女の心の中で、これまで信じてきた『身分』や『血筋』という価値観が、音を立てて崩壊していく。

(……ああ。私は、この方を……。この圧倒的な『力』を、ずっと探していたのかもしれない……)

 フィオナの頬が、無意識に赤く染まる。

 リィネもまた、扇で顔を隠しながら、濡れたような瞳でシュウを見つめていた。彼女の千里眼が見せた未来――シュウが世界の頂点に立つ姿が、現実味を帯びて彼女を酔わせていた。

「……シュウ。……すごい。……お腹、空いた」

 ミーニャがシュウの背中に抱きつき、満足そうに目を細める。

「……ああ。ガストン、こいつの破片、換金するより『鍋』の材料に使おう。結構いい出汁が出そうだ」

「ははっ! 贅沢な鍋になりそうだな、相棒!」

 勝利の咆哮を上げることも、アルトリウスを煽ることもない。

 ただ淡々と「生活」の一部として強敵を屠るシュウの姿に、エレインは自らの杖を握る力を失い、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 学園のヒロインたちの視線が、今、完全に一つに重なった。

 それは、伝説の聖剣への憧憬ではなく、目の前の「最強の捕食者」への、抗いようのない執着。

【条件達成:『金剛晶の守護像』を捕食】

【全ステータスが 1,500.00 上昇。合計値が 4,000 を突破しました】

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