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『黄金の休日、千里眼の休息』

学園の迷宮探索が一時休止となった休日。シュウは、珍しく「秘密基地」を出て、学園城下町の活気ある雑踏の中にいた。その隣には、大きな帽子で狐耳を隠したリィネが、どこか落ち着かない様子で歩いている。

「……あらあら、シュウ様。私をこんな賑やかな場所に連れ出すなんて、一体何の風の吹き回しかしら?」

 リィネは扇で口元を隠し、いつものように余裕のある笑みを浮かべる。だが、帽子の下で狐耳が周囲の音に敏感に反応し、ドレスの裾からはみ出た豊かな狐尻尾が、期待に震えてゆらゆらと大きく揺れていた。

「……お前、最近根を詰めすぎだ。……リィネ、お前の千里眼は『未来』を見すぎて、今の『景色』を忘れてる」

 シュウはそう言うと、『黄金林檎の飴細工』をリィネに差し出した。

「な……っ。……子供扱いですのね。……ふふ、でも、毒見くらいはしてあげてもよろしくてよ?」

 リィネはツンと澄ましてみせるが、一口齧った瞬間、その瞳が驚きで見開かれた。

 それは、ただの甘い菓子ではない。シュウが事前にガストンに頼み、魔力を活性化させる特殊な木の実を練り込ませた「特製薬膳菓子」だった。

「……っ、熱い……。魔力が、私の瞳の奥へ……」

【リィネの成長:シュウの気遣いと特殊食材により、精神的なリミッターが解除】

【固有スキル:『千里眼』が『因果の編みデスティニー・ウィーバー』へ進化】

 リィネの視界が変わる。

 単に未来を「見る」のではなく、数多ある未来の糸の中から、自分たちにとって「最善の一本」を手繰り寄せる力。

「……シュウ様、あなたって人は……。……計算ずくではありませんわよね? ただ、私に笑ってほしかった……それだけなのですか?」

 リィネは扇を閉じ、初めて素の表情を見せた。

 その瞬間、彼女の狐尻尾が、これまでにないほど激しく、パタパタと喜びで左右に振られた。あまりの激しさに、隠していた帽子が少しズレてしまうほどだ。

「……お前が笑えば、パーティの未来も明るくなる。……それだけだ」

 シュウが淡々と答えると、リィネは顔を真っ赤に染め、思わずシュウの腕をぎゅっと抱きしめた。

「……ずるいですわ、シュウ様。……こんな未来、私の千里眼には映っていませんでしたもの。」

 彼女はシュウの腕に自分の尻尾をそっと巻き付け、独占欲を隠そうともせずに甘える。


【リィネのステータス:2,100 から 2,600 へ上昇。パーティの生存率が劇的に向上】


「……ふふ。……アスモデウス。……あなたが目覚める二十一層への道筋、私が完璧に『編んで』差し上げますわ」

 リィネの瞳には、シュウと共に歩む輝かしい勝利の未来が、くっきりと映し出されていた。

 デートの終わり、彼女の尻尾は夕焼けの中で、いつまでも幸せそうに揺れ続けていた。

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