エピローグ
今日は『ゆかなん』さんのクリスマス生配信がある。20時からだ。俺はしっかり自宅でいつでも配信が観れるよう待機していた。
「ゆかなんだよ〜。こんばんは」
『ゆかなん』さんはミニスカサンタの格好で配信をしていた。動画の画面には大きく開かれた胸元が映されている。う〜ん、最高。
『ゆかなん』さんは最近の近況をゆるゆる喋っている。最近食べて美味しかった物とか、勉強のこととか。「みかんのお酒が美味しかった」と『ゆかなん』さんが言った時は、朝奈さんとのキスを思い出して心臓がドキッとしたが。
スライムを触ったり、セリフを囁いたりしながら配信は続く。俺はいつものように、スパチャを投げることにした。今日は奮発して1万円を投げる。なんでお金をあげるのかって? 『ゆかなん』さんが最高だからだ!
「……えっ……か、柏木さん、スパチャどうもありがとう!」
少し動揺させてしまったかもしれないが、推しにお金を落としたくなるのは仕方がないのだ。配信は1時間で終了した。俺はとても楽しめた。
配信が終わってから10分ぐらいして、朝奈さんから電話がきた。
「もしもし? 朝奈さん、配信お疲れ様! 最高だった!!」
「ありがとう……じゃなくて柏木君! スパチャしなくていいのに! しかも1万円も!」
無駄遣いを怒る母親みたいなテンションで、朝奈さんに叱られた。
「だって『ゆかなん』さんの配信が良かったから……」
「もう私達付き合ってるんだから、しなくていいの! 自分のお金を大切にして!」
「なっ、なぜ! 推しにお金あげたくなるのは当然の事では!?」
「なっ、なんでそんなにあげたくなるの!? ていうか推しって私でしょうが! スパチャより、デートとかに使おうよ」
「いや、朝奈さんはもちろん大切だけど、『ゆかなん』さんを応援する意味でもスパチャしないと!!」
「その『ゆかなん』がいらへんって言ってるやん! あんまりわがまま言うと、明日のデート行ってあげへんよ!?」
「そっ、それは嫌だ……」
しばらくの話し合いで、スパチャは2千円までなら許された。明日のデートも無事に行われることとなった。
◇
デート当日。朝奈さんと一緒に外を適当にぶらぶらして、ご飯を食べ終わった。今日の目的はイルミネーションを見ること。今まで恋人とクリスマスを過ごすことなんてなかった俺は、寒い外でこんなにイルミネーションをしているところがあるなんて知らなかった。
「イルミネーション綺麗だね〜。私、こんなにじっくり見るのは初めてかも」
朝奈さんと手を繋ぎながら、ベンチに座ってイルミネーションを見ていた。俺はもうちょっと朝奈さんとくっつきたいなと思い、少し朝奈さんの方に腰をずらす。
俺の動きに気づいた朝奈さんは、俺にもたれかかってきた。朝奈さんの頭が、俺の肩の上に少し乗っている。触れ合っていると、寒さを忘れられる気がした。
「寒いね、今日」
「うん、寒い。朝奈さんは体冷えてない? 大丈夫?」
「うーん……」
朝奈さんは、はぁーっと白い息を吐いてから、俺の腕にしがみつくように腕を絡めてきた。俺の腕に胸が押し当てられる体勢だ。むにゅっと柔らかい感触が俺の腕を襲った。
朝奈さんは俺の耳元に、くすぐるような囁き声で喋りかけてくる。
「体が冷えちゃったから、あったかい所に行きたいな……」
「あ、あったかい所?」
「……私、昨日こたつ出したんだ」
「それは、その……」
自分の顔が赤くなっている気がする。と言うか赤くなってるし、湯気が出そうだ。朝奈さんの顔を、今はちょっと真っ直ぐ見れない。
俺は一つ大事な確認をすることにした。
「あの、つかぬことをお聞きしますが……朝奈さんは今日は、その、レディースデイ……ですか?」
ちょっぴり頬を染めていた朝奈さんは、いたずらっぽく微笑んだ。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!
書いていてとても楽しめました。どんどん作品を創って行きたいと思えています。読んで下さった皆様のおかげです。
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