キス
「ようやったで! 柏木さん!!」
「あ、ありがとうございます」
「ゆかなんに任せてたら、いつ告白できるか分からんかったからなぁ。2回も告白しようとして失敗してるし」
「露ちゃん!! 言わんでええやん!」
「もう付き合ってんねんから、ええやん〜」
露さんはクスクス笑っていた。
告白が成功してから一週間後、現在は第二回作戦会議の途中だ。場所は朝奈さんの家。話す内容は来週の生配信の作戦準備とか、その他もろもろ。露さんにとってのメインは、ついに付き合った俺と朝奈さんをからかうことらしいが(通話前のラインで本人がそう言った)。
「柏木さん、柏木さん……ゆかなんとHした?」
「ぐぇっほっ!!!」
「露ちゃん!?」
なんで露さんはそういうの平気で聞けるんだ。100歩譲って、俺か朝奈さんどちらか一人だけの時に聞いてくれよ。
「し、してへんから!」
「まだかー。まぁ、うぶそうな二人ならそんなもんか」
俺はいつの間にか露さんにうぶ判定されていた。残念ながら強く否定できそうにない。
「おっぱいぐらいは揉んだやろ?」
「「…………っ」」
朝奈さんも俺も、何も言えなかった。
ちなみにこれはビデオ通話。俺が目の端に捉えた朝奈さんの顔は、超真っ赤である。この顔は当然、露さんにも見えているわけで。
「分かりやすい二人やで、ほんま」
露さんはからかうように笑っていた。恥ずかしい。
告白の後、二人ともお酒で酔っていたことと良い雰囲気だったおかげで、マジで朝奈さんとHする寸前だった。ただ俺も朝奈さんも、全然そこまで進展するとは予想していなかったせいで、ゴムが無く断念した。
でも、なんかこう話の流れでというか、多分お互い欲求不満になっていて、朝奈さんが胸を揉んでもいいよと言い出して、俺もそれにあやかり朝奈さんのおっぱいを揉んだ。
俺の手は、今だにふわふわのHカップの感触を覚えている。
「ちなみに、ゆかなんは処じょ——」
「——だあ”ーっ!!」
朝奈さんは絶叫に近い声を上げて、いきなり通話を切った。衝撃の事実が露さんの口から発せられた気もするが、気のせいだろうか。
「さ、作戦会議終了!! 収録しよっ、柏木君!! ね!?」
汗を滲ませ、顔を真っ赤にしながら朝奈さんはそう提案してきた。圧がすごい。
ロールプレイの収録を始める。露さん曰く、演技がどんどん上手くなっているらしい。俺もそう思う。露さんは俺のおかげとも言っていた。嬉しい言葉だが、俺がやっていることは朝奈さんが喋るのに合わせて頷いたりしてるだけなので、過大評価されてる気分だ。
今日の台本は、幼馴染が起こしに来たっていうシュチュエーションだ。俺は朝奈さんのセリフに頷きながら、堪能させてもらった。
「楽しかったー! ありがと柏木君!」
「こちらこそ、聞かせてくれて本当にありがとう。神ボイスだった……」
俺は朝奈さんに向けて拝んだ。朝奈さんには引かれた。
朝奈さんは演技を楽しめるようになったみたいだ。収録の最中も、最初と比べて表情が柔らかい気がする。
「ご飯食べる?」
「食べます!」
大学で会う以外では、今日が付き合ってから初のデートみたいなものである。朝奈さんと一緒にお昼を食べれるのを楽しみにしていた。
「そう言えば、前のみかんのお酒残ってるよ。飲みたい?」
また昼間から飲むのはちょっと……。この後予定があるわけでは無いが、考えものだ。別にお酒が好きなわけでもないし。
「飲みたいよね? そうでしょ、柏木君」
「えっ、あっ、はい」
朝奈さんから謎の圧力を感じて、はいと言わされた。朝奈さんがみかんのお酒をコップに注いで持ってくる。
そのコップを机に置くかと思ったら、そのお酒を朝奈さんが口に含んだ。
「ん」
赤い顔で、じっと見つめてくる朝奈さん。……そういうことか。
俺は朝奈さんを抱きしめてキスをした。朝奈さんの舌と共に、じんわりとみかんの味が口の中に広がる。しばらくお互いキスを味わって、唇を離した。
「……キスしたいなら、そう言ってくれればするのに」
「は、恥ずかしいし」
お酒を口移しする方がよっぽど恥ずかしい行為に思うのだが、朝奈さんはそうでも無いらしい。
現在お互いに座ったまま抱き合っていて、朝奈さんの爆乳が俺に当たっている。当たっているというか、押し当てられて潰れているレベルだ。正直、俺はムラムラしている。
「……あの、朝奈さん。今日は持って来ました」
「え?」
「その、ゴムを」
「……っ」
朝奈さんはまた顔を真っ赤にする。ごくっと朝奈さんは生唾を飲み込んでから、俺の耳元で囁きだした。
「……ごめん柏木君。今日はレディースデイなの」
「……レディースデイ?」
「えっと……その、生理」
「あ、あー……なんかごめん、朝奈さん」
残念ながら、今日はお預けらしい。




